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2 挑発とグルゴーファ2
どうせ政略結婚に愛など存在しないのだ。互いに外に愛人を作り、子供は試験管ベイビー。公式の場だけ仲の良い夫婦のフリをするだけだと。
だがそれもすべてリセットだ。
世間一般的なお見合いのように、交際期間を設け彼が自分を好きになってくれるのを間近で見たいという欲求に駆られた。あの幼さを残した可愛らしい存在がどんな風に変わっていくのか興味があるが、それ以上に自分の手で変えてみたくなった。
政略結婚という割り切った関係ではいたくないと本能が訴えかける。
好奇心が一輝を突き動かす。
儀礼で置かれた仲人に、一輝は別れる直前、この話を進めて欲しいと伝えた。それと同時に、先方に来週のデートの了承が欲しいとも。
どんな返事が来るかは分かりきっていたが、それでも楽しみでしょうがない。
「絵画が好きって言ってたな……初めてのデートは無難に美術館にするか」
今、都内の美術館がどんな展示をしているのかを検索してめぼしい物を頭に入れていく。それと同時に目玉となっている絵の蘊蓄も頭に叩き込んでいった。
数日後、菅原家からの返事が仲人経由で一輝の仕事メールに入ってきた。
返事は予想通りだったが、それに付随する項目の多さに愕然とした。
移動方法から門限まで20を越す注意事項がぎっちりと書かれたメールには、「清い交際」の文字が幾度となく出てくる。
そして決してバースの話をしないことまで書かれていた。
しかもこれらが守れないもしくは1度でも違反したなら、見合いをなかったことにする旨まで記載されている。
「結婚まで絶対味見禁止……キスもダメってことだよな。手くらいは繋いでもいいのか?」
あまりの内容に頭がついていかない。
一輝はパソコンの前で頭を抱えた。
いやいや、相手は高校生だ。
性的なことをしてはならないなんて当たり前だ。まだ成人前、都の条例に反してしまう。
当たり前、当たり前……。
「耐えるしかないのか」
性に奔放だった自分が果たしてそれを全うできるかが不安になってきた。
だが、従わざるを得ない。でなければあの子が他の人間と見合いすることになる。
それだけは絶対に避けたい!
なにがなんでも避けなければならない!
「私は紳士だ、紳士だ……清い交際だ……できる、絶対できる」
あまりの内容に一輝は頭を抱えたまま自分に呪文をかけ始めた。
「部長、どうしたんだ?」
「ばかっ近づくな!」
普段は鬼部長と恐れられている一輝の恐ろしいマインドコントロールに部下一同が戦いているのも気づかず、ただひたすら週末の初デートに向けて呟き続けていた。
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