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4.軽音部ライブスタート -2-
ーーー…
ノンストップで激しいロック、バラード、ポップソングと…何曲も歌い、演奏を続ける軽音部たちの体力の凄さは、高校生さながらといったところだった。
演奏も終盤に差し掛かり、体育館に差し込む西陽が日暮れを知らせていた。
ーーーシャーーーッ!!
突然、全ての遮光カーテンが閉められ館内は真っ暗になり、
ライブステージの照明だけが明々と軽音部のメンバーを照らす。
『ではここで!メンバー紹介と…スペシャルサンクスのお知らせでーす!』
軽音部部長がノリノリで、メンバー全員の紹介から始まり、顧問の名前、協力してくれた教師や機材の業者の名前など、ドラム音に合わせて次々と説明していく。
『そしてー!このファブリックパネルを作ってくれた、美術部ー!ありがとうーー‼︎マジ宝物です!
美術部部長!愛してるぜぇーーー‼︎』
「えっ…ええぇーーー⁉︎⁉︎」
スポットライトが観客席にいた美術部部長に照らされ、突然の事態に驚き周りをあたふた見渡す美術部部長。
観客たちから「きゃー!」「サイコー!」と黄色い歓声が湧き起こる。
ーーーうわ、なんだか、嫌な予感……。
そう思った夕人は、誰にも気づかれないよう、暗闇の中を静かに、そろりそろりと、体育館の隅の方へと移動する。
速生にも、何も言わないまま。
『ではここでぇっ!チークダンスターイム!
みんな、誰でもいいから、好きな人と、俺の歌に合わせてチークダンス!
好きな子がいるやつは、大チャンスだぜ!さあすぐに見つけて手を取れー!!男同士でも女同士でも!何でもありー!先生同士もOK!
ではみんな、相手を探してーーー!」
突然始まったゲリライベントに、観客たちは驚きつつもーー……
急いで自分の好きな子を探す生徒,友人同士踊ろうぜ!と手を繋ぐノリノリの男子たち、
頬を染めて校長先生の手を取り“Shall we dance?”と声をかける教頭先生ーー…。
そして一部の女子の間で暴動が起きる。
「ちょっとぉ!相模王子はっ⁉︎」
「高校最後の思い出にーっ!私が踊る!」
「相模くんっどこーーっ⁉︎」
「王子先輩っ!どこですかぁーー⁉︎」
「ゆ、夕人ーーー…なんか、凄いことになったぞ、逃げた方が……」
そう言って速生が横を見ると、夕人は忽然と姿を消している。
「えっ??あ、あれ⁉︎夕人⁉︎
どこ行ったぁぁーーーっ⁉︎」
『みんなーっ!相手見つけたかぁ!?
ではいきまーす!Let's dance!
“Maurice White ・アイニードユー”』
スローテンポな演奏が始まった。
暗がりの中、美しい音色に合わせた軽音部長ボーカルの歌声に、体育館内はまるで80年代のダンススタジオのような雰囲気に。
生徒たちは各々で手を繋いだり、腕を組み音楽に合わせてゆったりと身体を揺らせる。
その中でも特に、来賓や年配の教師たちはその雰囲気にはるか昔の青春を思い出したかのように、うっとりと、音楽に浸りながら優しいステップを踏んでいた。
「とても、いい文化祭ですねぇーー…」
「ええ、たまにはこういうのも…悪くない。」
「まるで、若い頃に戻ったような気分だねーー…」
その場にいたすべての人たちが、校内で行われている行事だということも忘れてーー…
艶やかで、少し刺激的な雰囲気に浸り,酔いしれていたーーー…。
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