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星空の下での決意①
大学も四年目を迎えた四月中旬。西の方へと沈んでいく夕陽を横目に大学構内の桜並木道を自転車で軽快に走ると大学の門を抜けて大きい道路へと出た。
アルバイト先までの道のり、駅前通りに到着したところで早坂渉太 は自転車を停める。駅前に建ち並ぶセンタービルの広告で一際目を惹くアイドル兼アーティストでもある浅倉律 の姿に深く息を吐く。溜息が漏れるほど格好良くて見惚れてしまう憧れの存在。
化粧品の広告看板なのだろう、きめ細かい肌にブラウン系のアイシャドウ。くっきりとラインの引かれた瞳が此方を見ている。化粧による効果もあるのか中性的でどこか妖艶な姿は心もろとも射抜かれてしまいそうになる。
ちゃんと雄雄しさも感じるのは彼のそのものの魅力のせいなのだろうか。眺めているだけで失神してしまいそうになる。
渉太は恥ずかしさを忍んで肩さげ鞄のポケットからスマホを取り出すとビルの広告を被写体にレンズを向けた。自分にとってどんな時でも支えになってくれる推しの存在。
ごく一般人の自分が恐れ多い話ではあるが、こんな誰からも羨まれるような格好いい人が自分の恋人だなんて、夢を見ているようだった。
「見て見て‼あれ律だよね?化粧してるー。めっちゃ格好いいんだけど」
写真を撮り終えたところで背後から女性の声が聞こえてきて、思わず肩を窄めて振り返ると女性三人組がビル広告を指差しながら話していた。三人ともビジネスカジュアルな服装に薄化粧。渉太と同様にスマホのカメラを天に向けてはしゃいでいる。この付近のOLさんだろうか……。
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