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お出かけしよう①
目を覚ますと屋敷の中にいて、身体も綺麗になっていた。確かあのあと、気を失うまで抱き潰されてからの記憶がない。普通ならだるいはずの身体はスッキリしているし、調子も悪くないから、ダリウスが回復魔法でも使ってくれたのかもしれない。
どのくらい寝てたのかはわからないけど、とりあえずダリウスに一言物申さないと気が済まない。
「起きたんだね」
「おい、お前ふざけっ……」
文句を言おうと口を開いたけど、言葉が途中で止まる。ダリウスがすごく甘い笑みを向けてきていたからだ。そんな表情を向けられると文句も言えなくなる。
「起きたのならこれを飲んで」
「なにこれ」
「避妊薬だよ。我慢できずに中に出してしまったから、飲んでおかないと」
「っ、お、おう」
そうだった。この世界では男もΩなら妊娠できるんだった。行為を思い出して急に恥ずかしさが溢れてくる。顔が赤くなってる気がして俯くと、頭を撫でられた。ますます羞恥心が増す。
薬を受け取って水で喉に流し込む。飲み終わったコップをダリウスが受け取ってサイドテーブルに置いてくれた。
「俺ってどのくらい寝てたんだ?」
「半日くらいかな。もう朝になってしまったね」
「依頼は?」
「ちゃんと魔素石はギルドに納品しておいたから、今頃はリアムが受け取っているはずだよ」
「そっか……」
依頼が達成出来ていたことに安堵した。まさかあのタイミングで発情期に入るなんて思っていなかったし、初めてのことで歯止めがまったく効かなかった。
それに、流れでダリウスと番になってしまったし。
「ツバサ」
名前を呼ばれて肩を揺らす。じんわりと胸が温かくなる。名前呼ばれるのってこんなに嬉しいことなんだな。
手が伸びてきたから、俺も片手を差し出すと両手で握りこまれた。甲を指で撫でられる。その後、唇が寄せられてリップ音が聞こえてくる。
「……ツバサ」
「そんなに呼ばなくてもここに居るだろ」
「そうだね……。でも、とてもいい名前だからつい呼びたくなってしまうんだよ」
艶のある低音ボイスが名前を口ずさんでくれる度に、心の底から喜びが溢れてくるんだ。なんかムカつくから、ダリウスの頬を空いている手で軽くつねってやった。
「ふっ、可愛い」
ダリウスが覆いかぶさってきて、ベッドに押し倒される。顔が近づいてきて、思わず目を閉じる。絶対キスされる!
そう思ったのに、なぜか中途半端な体勢で止まったままダリウスが動かない。不審に思って目を開けると、ダリウスが窓の外を見ているのに気がついた。
「どうしたんだよ」
「残念だけど誰か来たみたいだ」
俺の上から退いたダリウスが立ち上がると、部屋の外へ向かっていく。慌ててベッドから飛び出ると、ダリウスの後を追いかける。
屋敷の入口に行くと、ジェイデンが手紙のようなものを持って立っていた。
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