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煌めくルビーに魅せられて番外編 吸血鬼の執愛14
***
数分後SAKURAパークに到着し、一般客に混じって来場した。そして瑞稀を入場口にあるベンチに待たせて、俺は支配人がいる事務所に顔を出す。
「これは桜小路課長! 本日はなにかありましたか?」
俺が中に入った瞬間、目の合った支配人が椅子から勢いよく立ち上がり、深くお辞儀をする。SAKURAパークの管理会社の社員がここに来た時点で、なにかあるのではないかと心配になるのは、支配人として当然だろう。
「柏木さん、頭をあげてください。今日はプライベートで、こちらに参った次第です」
「プライベート……って、もしやデートですかぁ?」
頭の先から足先まで素早く俺をチェックした結果、そんな答えが導き出されてしまった。
(――実際のところデートだが、それを肯定する気はさらさらないけどな)
「残念ながら仕事が忙しくて、恋人を作ってる暇なんてありませんよ。今日は知り合いと遊びに来ただけです」
言いながら窓から見える景色の中にいる、瑞稀に指を差した。ベンチに腰かけている彼は、遠くにあるアトラクションに、ぼんやりと視線を飛ばしていた。
「桜小路課長が恋人と一緒に来場したら、隠れファンのキャストたちは、そろって嘆き悲しむところでした」
「そのキャストたちに連絡してほしいのです。プライベートで遊びに来ているので、気を遣わないでくれって」
「わかりました。無線で伝えておきますね。存分にお楽しみください」
含み笑いで返答されてしまったが、致し方ない。親会社に勤める俺がさりげなくチェックするかもしれないと、支配人として勘繰るのは彼の立場ゆえ。そして俺自身もチェックする気はなくても、気づけばやらかしてしまうかもしれない。
少しでもここをよくしたいと思うのは、お互い様なのだから――。
「瑞稀、待たせたね。さっそく、どのアトラクションにのる?」
座っているベンチに駆け寄った俺を見た瑞稀は、わくわくを隠し切れない表情を浮かべて指を差す。
「マサさんにメリーゴーラウンドにのってほしいです!」
「ぶっ!」
なぜか一番空いているそれを指名するのは、なぜだろうか?
「瑞稀、理由を聞いてもいいかい?」
「カッコイイ人が乗ったら、白馬の王子様になれるのか見てみたくって」
「え? 白馬のオウジサマ?」
「マサさんならきっと、格好よく乗りこなすだろうなと思ったんです。そこを写真撮りたいんですけど、ダメですか?」
ちょっとだけ潤んだ上目遣いで頼まれて(しかも色っぽい)断れる男がいるなら、見てみたいかもしれない!
「し、しょうがないな。いい年した俺が乗っても王子になんてなれないのに、そんなことを言うなんて。幻滅しないでくれよ」
そして並んでメリーゴーラウンド乗り場に赴き、女性キャストにひとりで乗ることを告げると、「頑張ってくださいね♡」なんて言われてしまった。
「マサさん、絶対にいい写真を撮りますから、笑顔でお願いします!」
瑞稀が外でスタンバイしながら、大きな声で俺に手を振る。
「青年グッジョブだわ、桜小路課長の写真ほすぃ……っていうか、ここのポスターにしたらどうかしら?」
女性キャストの小さなひとりごとを耳にしつつ、仕方なく白馬に跨ったのだった。
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