22 / 27

煌めくルビーに魅せられて番外編 吸血鬼の執愛14

***  数分後SAKURAパークに到着し、一般客に混じって来場した。そして瑞稀を入場口にあるベンチに待たせて、俺は支配人がいる事務所に顔を出す。 「これは桜小路課長! 本日はなにかありましたか?」  俺が中に入った瞬間、目の合った支配人が椅子から勢いよく立ち上がり、深くお辞儀をする。SAKURAパークの管理会社の社員がここに来た時点で、なにかあるのではないかと心配になるのは、支配人として当然だろう。 「柏木さん、頭をあげてください。今日はプライベートで、こちらに参った次第です」 「プライベート……って、もしやデートですかぁ?」  頭の先から足先まで素早く俺をチェックした結果、そんな答えが導き出されてしまった。 (――実際のところデートだが、それを肯定する気はさらさらないけどな) 「残念ながら仕事が忙しくて、恋人を作ってる暇なんてありませんよ。今日は知り合いと遊びに来ただけです」  言いながら窓から見える景色の中にいる、瑞稀に指を差した。ベンチに腰かけている彼は、遠くにあるアトラクションに、ぼんやりと視線を飛ばしていた。 「桜小路課長が恋人と一緒に来場したら、隠れファンのキャストたちは、そろって嘆き悲しむところでした」 「そのキャストたちに連絡してほしいのです。プライベートで遊びに来ているので、気を遣わないでくれって」 「わかりました。無線で伝えておきますね。存分にお楽しみください」  含み笑いで返答されてしまったが、致し方ない。親会社に勤める俺がさりげなくチェックするかもしれないと、支配人として勘繰るのは彼の立場ゆえ。そして俺自身もチェックする気はなくても、気づけばやらかしてしまうかもしれない。  少しでもここをよくしたいと思うのは、お互い様なのだから――。 「瑞稀、待たせたね。さっそく、どのアトラクションにのる?」  座っているベンチに駆け寄った俺を見た瑞稀は、わくわくを隠し切れない表情を浮かべて指を差す。 「マサさんにメリーゴーラウンドにのってほしいです!」 「ぶっ!」  なぜか一番空いているそれを指名するのは、なぜだろうか? 「瑞稀、理由を聞いてもいいかい?」 「カッコイイ人が乗ったら、白馬の王子様になれるのか見てみたくって」 「え? 白馬のオウジサマ?」 「マサさんならきっと、格好よく乗りこなすだろうなと思ったんです。そこを写真撮りたいんですけど、ダメですか?」  ちょっとだけ潤んだ上目遣いで頼まれて(しかも色っぽい)断れる男がいるなら、見てみたいかもしれない! 「し、しょうがないな。いい年した俺が乗っても王子になんてなれないのに、そんなことを言うなんて。幻滅しないでくれよ」  そして並んでメリーゴーラウンド乗り場に赴き、女性キャストにひとりで乗ることを告げると、「頑張ってくださいね♡」なんて言われてしまった。 「マサさん、絶対にいい写真を撮りますから、笑顔でお願いします!」  瑞稀が外でスタンバイしながら、大きな声で俺に手を振る。 「青年グッジョブだわ、桜小路課長の写真ほすぃ……っていうか、ここのポスターにしたらどうかしら?」  女性キャストの小さなひとりごとを耳にしつつ、仕方なく白馬に跨ったのだった。  

ともだちにシェアしよう!