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煌めくルビーに魅せられて番外編 吸血鬼の執愛17

***  キッチンで宣言したとおりに、タヌキ色の唐揚げに舌鼓を打つ。 「マサさん無理して、焦げ茶色の唐揚げばかり取らなくてもいいですよ。キツネ色の唐揚げも食べてみてください」 「普通に美味いよ、これ。瑞稀は料理の天才だな」 「褒めすぎです。マサさんが作ってくれた卵焼きだって、すごく美味しいのに」  並んでベンチに腰かけ、互いに作った料理について、感想を言い合う。ただそれだけなのに、楽しいし美味しいしで、しあわせいっぱいだった。  ひとりきりの食事では、絶対に味わうことのできない幸福感に、口角があがりっぱなし。普段の俺は真顔を決め込むことが多いゆえに、連続の笑顔のせいで、顔面筋肉痛になってしまうかもしれないな。 「じゃあお言葉に甘えて、キツネ色の唐揚げをいただこう」  ひょいと箸でつまみ上げ、口に頬張った。タヌキ色の唐揚げも美味かったが、キツネ色のは肉のジューシーさが口内に溢れ、また違った美味しさを堪能できる。 「瑞稀、これも美味い。まるで専門店で売ってる唐揚げみたいだよ」 「なに言ってるんですか。さっきから褒めすぎですって」 「俺は事実しか言ってない。本当に美味しかったから、率直な感想を言ってるだけなんだよ」  嬉しさのあまりに、取り皿にタヌキ色の唐揚げとキツネ色の唐揚げを乗せ、交互に食べて美味しさを噛みしめる。 「マサさん、イケメンが台無しになってます」 「ん?」  ジト目で俺を見上げる瑞稀に、首を傾げてみせた。 「そんなふうに唐揚げを頬張って。まるで子どもみたいですよ」 「ハハッ!」  きちんと口の中のものを咀嚼してから、声をたてて笑ってしまった。 「なに笑って……?」 「瑞稀には、頭があがらないなと思ったんだ。惚れた弱みかな」  俺としては事実を言っただけなのに、瑞稀はぽっと頬を赤く染める。 「マサさん、直球すぎです。俺、そういうのに免疫が全然ないから、対処に困る」 「瑞稀のかわいい顔が見られるのなら、たくさん言ってしまうかもしれないな」 「困るって言ってるのに!」 「怒った顔もまたいいね」 「あ~もう!」  こんなふうに、好きな人と他愛のないことを言い合って休日を過ごせるなんて、思ってもみなかった。  責任のある仕事に毎日追われ、休日はひとりきりで過ごしたり、ときには吸血鬼に変貌した際は、吸血する相手を血眼になって探すことしかしなかった俺が、有意義な休みをとれるなんて。 「瑞稀、どうもありがとう」  真っ赤な顔でむくれる瑞稀に、お礼を述べてしまった。 「マサさん?」 「君とこうして穏やかな休みを満喫することができて、しあわせを感じているよ」 「これが穏やかと思うマサさんに、俺は失望しているところですよ」  なんていうお互い食い違うセリフに、笑いが止まらなかったのだった。

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