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第4話 闇のオークション ④

「さてここからがメインイベントです」  男がそう言うと、ガラスが少しずつ上に上がり、二人と客を隔てていたものがなくなる。 「では130万から」  スピーカーから男の声がすると、 「150万!」 「200万!」 「250万!」 「300万!」  次々に番号のついた札と声が上がる。 「300万。300万ですね。他にはいらっしゃいませんか?」 「380万!」  後ろの方から声が上がり、どよめきが起きる。 「380万!他にはいらっしゃいませんか?」 「420万!」  別の男の声がした。 「う〜……430万!」  380万を提示した番号札の男の声がする。 「450万!」  今度は420万を提示した男の声。 「460万!」  さらに別の声。 「490万!」  450万を提示した男の声。  すると、 「1500万以上はおらんのか?」  白髪の老人が言う。  先ほどまで活気付いていた会場が、一気にしんと静まり返る。 「おらんのやったら、今日はもうお終いや」  老人が右手を軽く上げると、後ろに待機していた男が車椅子を押し始めた。  会場がざわめき始めると、 「1600万!」  最後まで競っていた男の裏返った声が響いた。 「よう言えたな。たっぷり堪能しなさい」  老人がステージの上にいる拓馬に目配せすると、拓馬は雅成の手首を縛っていたネクタイを解く。   そして雅成の両脇に腕を通し、ぐったりした身体を引き上げた。 「見学したい者は、1000万でさせたる。指を咥えて女神の蜜を堪能できる幸運な男の姿でも拝んどき。これが勝者と負け組の差や」  それだけ言うと、老人は会場を後にした。  先ほど1600万で男が手にしたもの。  それは雅成の蜜。  最強の幸運をもたらせると言われる、雅成の蜜。  それを手にするため、男達は金と名誉を集め、老人が主催する闇のオークションに参加できる権利を取得し、大金をかけて雅成に群がる。  男達が求めているのは最強の幸運?  それとも一度でも雅成の姿を見てしまうと、他のものが目に映らなくなってしまうからなのか?  それともどちらもなのか?  わかっていることはただ一つ。  今から雅成は見知らぬ男に楔を咥え込まれながら、拓海に甘く激しく、愛の言葉を耳元で囁かれながら攻められ続け、何度も達すること。  雅成は拓海へ気持ちを伝えることが決して許されないまま、拓海が与える砂糖菓子のような快楽の中に落ちていく。

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