4 / 79
第4話 闇のオークション ④
「さてここからがメインイベントです」
男がそう言うと、ガラスが少しずつ上に上がり、二人と客を隔てていたものがなくなる。
「では130万から」
スピーカーから男の声がすると、
「150万!」
「200万!」
「250万!」
「300万!」
次々に番号のついた札と声が上がる。
「300万。300万ですね。他にはいらっしゃいませんか?」
「380万!」
後ろの方から声が上がり、どよめきが起きる。
「380万!他にはいらっしゃいませんか?」
「420万!」
別の男の声がした。
「う〜……430万!」
380万を提示した番号札の男の声がする。
「450万!」
今度は420万を提示した男の声。
「460万!」
さらに別の声。
「490万!」
450万を提示した男の声。
すると、
「1500万以上はおらんのか?」
白髪の老人が言う。
先ほどまで活気付いていた会場が、一気にしんと静まり返る。
「おらんのやったら、今日はもうお終いや」
老人が右手を軽く上げると、後ろに待機していた男が車椅子を押し始めた。
会場がざわめき始めると、
「1600万!」
最後まで競っていた男の裏返った声が響いた。
「よう言えたな。たっぷり堪能しなさい」
老人がステージの上にいる拓馬に目配せすると、拓馬は雅成の手首を縛っていたネクタイを解く。
そして雅成の両脇に腕を通し、ぐったりした身体を引き上げた。
「見学したい者は、1000万でさせたる。指を咥えて女神の蜜を堪能できる幸運な男の姿でも拝んどき。これが勝者と負け組の差や」
それだけ言うと、老人は会場を後にした。
先ほど1600万で男が手にしたもの。
それは雅成の蜜。
最強の幸運をもたらせると言われる、雅成の蜜。
それを手にするため、男達は金と名誉を集め、老人が主催する闇のオークションに参加できる権利を取得し、大金をかけて雅成に群がる。
男達が求めているのは最強の幸運?
それとも一度でも雅成の姿を見てしまうと、他のものが目に映らなくなってしまうからなのか?
それともどちらもなのか?
わかっていることはただ一つ。
今から雅成は見知らぬ男に楔を咥え込まれながら、拓海に甘く激しく、愛の言葉を耳元で囁かれながら攻められ続け、何度も達すること。
雅成は拓海へ気持ちを伝えることが決して許されないまま、拓海が与える砂糖菓子のような快楽の中に落ちていく。
ともだちにシェアしよう!