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第80話 闇のオークション

 闇のオークションから女神が突如として姿を消してから半年後。  長者番付に名を連ねるような人のみが招待されたオークションが、開催された。  真っ暗な客席の中からVIPのためだけに用意された特別ステージ上に、マイクを持ち、黒いスーツを着た司会の銀髪の男がスポットライトに照らされる。 「お集まりの皆さま。お待たせいたしました。今からオークションを開催させていただきます」  銀髪の男が言うと、ステージ中央にあるベッドの上で銀髪の女神が艶かしく横座りしている姿が現れた。 「お〜」  会場に響めきが走る。 「はじめはのプレイは……」  司会の男が進めていく。  女神は思った。  一度はオークションを辞めようかと。  でも女神は思い止まった。  まだ自分の知らない闇に、巻き込まれてしまう人がいるかもしれないからと。  助けを求める人がいるかもしれないからと。  不治の病で苦しむ人がいるかもしれないと。  女神一人では、多くの人を守れない。  みんなが誰かのために、愛する人のために力を合わせて、はじめて成し遂げられる結果もある。  だから女神は伴侶に言った。 「僕、もう少し僕の知らない誰かのために、女神をしてみるよ」  と。  すると伴侶は、 「雅成ならそう言うと思ってた」  と笑った。  

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