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堅物教師の受難の一日

「――メェーンッ」  竹刀を振るう剣道部員たちの声が、高らかに響き渡る。朝の剣道場は防具を着けた凜々しい少女たちの熱気とともに、心地良い緊張感に満ちていた。  その張り詰めた空気の中心で、近藤大智は地稽古中の部員たちを見回っていた。剣道着を186センチの長躯に纏い、背筋をピンと伸ばした大智は、部員たちの太刀筋を凜とした目で見据える。 「いいぞ、宮田」  稽古を終えて息を整えている部員のひとりに、大智は声をかけた。 「今のメンは良かった。去年に比べて、格段に強くなったな」  宮田は今年の二年生の中では一番剣道歴が浅い。けれど、人一倍努力して実力をつけてきた宮田の成長を見込んで、大智はインターハイ団体予選会の次鋒に指名していた。 「インハイもこの調子で行こう。お前なら大丈夫だ」  そう言って大智が肩を叩くと、宮田は「はいっ!」と力強く頷いた。面の奥で上気した宮田の顔は、自信に満ちて輝いている。  成長したい、強くなりたい――そう願う生徒の顔が見られる瞬間が、教師という仕事の醍醐味だ。大智はこの女子校に勤務して今年で九年目に入るが、この瞬間を味わうために自分は教職に就いたようなものだと、つい頬が緩みそうになる。  朝稽古が終わると、間もなくホームルームが始まる。部員たちはきびきびと稽古終わりの挨拶を交わし、慌ただしく道場を出て行った。  大智は部員全員の後ろ姿を見送った後、道場に向かって静かに一礼し、気持ちを切り替えるようにして足早に立ち去った。  時間がないのは生徒だけじゃない。大智も道着からスーツに着替えて、ホームルームと授業の準備をしなければならない。運動場に移動し、水飲み場で顔を洗いながら、大智は頭の中で今日の段取りを組み立てる。  インターハイ等の大会前は、とにかく忙しい。部活動の指導時間が増えても、通常業務が減るわけじゃない。小テストの作成と採点、校外学習の下見、職員会議に教科会議……いや、それよりまず連日欠席している生徒の家に連絡しないと――。 「……はあ、」  大智はタオルで顔を拭い、溜息をこぼした。 「近藤先生、おはようございます」  ふいに呼びかけられ、大智ははっとして顔を上げた。 「あ、……おはようございます、星川先生」  大智が振り返って会釈すると、年下の青年講師はにこりと微笑んだ。 「剣道部のお稽古ですか? お疲れ様です」 「ええ……星川先生がこんな時間にいらっしゃるなんて、珍しいですね」 「昨日、嶋先生から体調不良で休むと連絡がありまして。一限目の授業を僕が代わることになったんです」 「ああ、そうでしたか」  星川七生はこの春採用された英語科の非常勤講師だ。常勤の教諭である大智とは違い、星川は担当授業がある時のみ出勤する。そのため、大智が星川とこうやって朝一番に顔を合わせるのはこれが初めてだ。  星川は顔つきが柔らかく、体型も男性にしては細身でしなやかだ。多くの女子生徒が行き交う運動場の風景に、星川の姿は違和感なく溶け込んでいる。  担当する学科は違うが、星川とは職員室の席が隣同士で、大智は休み時間などによく顔を合わせている。授業の進め方や生徒との接し方について、星川から相談を受けることもあり、大智はその熱心な姿勢を常々好ましく感じていた。 「あ、ななちゃんだ!」 「ななちゃん先生、おはよー!」  朝練を終えたばかりなのか、肩にテニスラケットをかけた生徒が二人、渡り廊下から星川に向かって駆け寄ってきた。 「あ、おはよ――」 「こら、先生に向かってその呼び方は何だ。ちゃんと『星川先生』とお呼びしなさい」  星川が挨拶を返すより先に、大智は生徒二人を叱った。 「挨拶は敬意をこめてするものだ。ほら」 「……はあい。星川先生、おはようございます」  渋々といった様子でお辞儀をする生徒たちを和ませようとしてか、星川は笑顔を深めて「おはようございます」とお辞儀を返した。 「あ、そのリストバンドお揃いなんだ? 可愛いね」  星川がそう言うと、不満そうに頬を膨らませていた生徒たちの顔が、パッと明るくなった。「いいでしょー」「部のみんなでおそろにしたんだ」と口々に言いながら、生徒たちはそれぞれの手首にはめられたリストバンドを、星川に向かって自慢げにかざして見せている。  生徒たちと朗らかに笑いあう星川の姿に、しかめ面をしていた大智の表情が、少しだけ和らぐ。  星川は生徒を笑顔にするのが上手だ。授業も分かりやすくて面白いという評判をよく耳にするし、入職してすぐに生徒たちから受け入れられているようだった。  生徒と星川が和気あいあいとしている様は、見ていて微笑ましい。けれど、ホームルームの時間が迫っていることを考えると、生徒たちにはあまりのんびりと話をしている時間はない。 「二人とも、そろそろ教室に戻ったほうがいいんじゃないか? もうすぐホームルームが始まるぞ」  大智はそう言って、生徒たちに校舎の時計を見るよう促した。 「えー、まだ大丈夫ですよ。ダッシュすれば間に合うし」  おどけるように返す生徒の一人に、大智は「廊下を走ったら駄目だろ」と呆れ顔になる。 「今は教室で授業の準備をするための時間だ。さあ、行きなさい」 「……はーい」 「わかりましたー」  生徒たちは「近藤先生っていっつも口うるさいよね」「しーっ」と小声で言い合いながら、校舎へと足早に戻っていった。二人を見送り、大智はやれやれと溜息をつく。 「近藤先生、ちょっと生徒に厳しすぎませんか? まだ少し時間はあると思いますけど……」  星川はそう言って、怪訝そうに校舎の時計を見た。 「そうですが、生徒に時間を大切にしてほしくて、ああいうふうに言いました。高校生の内は目の前のことに夢中になって、時間の管理を疎かにしがちですから」 「ああ、なるほど……近藤先生は、生徒のことをよく考えてますね」 「ええ、教師ですから」  大智が平然と答えると、星川は「ふふっ」とおかしそうに笑った。俺は何かおかしなことを言っただろうか? と大智は首を傾げそうになった。 「それにしても、朝の運動場ってこんなに賑やかなんですね」  周囲を見回しながら、星川は言った。今も体育館と校舎を繋ぐ渡り廊下を、生徒たちがせわしなく行き交っている。 「インターハイの予選前ですからね。どこも練習時間を増やしてますよ」 「あ、なるほど。じゃあ、顧問の先生も大変ですね。お疲れじゃないですか?」  星川にそう訊かれ、大智はとっさに背筋を伸ばし、「いえ。これくらい、どうということはありません」と笑って見せた。 「俺は子どもの頃から剣道を習っていましたし、今も部員たちと一緒に稽古をしてますから、体力には自信があります。生徒たちが頑張っているのだから、教師もそれに応えないと」 「ふうん、そうですか……」  星川はそうつぶやき、大智を見上げた。くりっとした大きな瞳が、何か考え込むように見つめてくる。 「ど、どうしました?」 「近藤先生、ちょっとだけ目をつぶってもらえません?」 「え?」と目を見開く大智に、星川は「いいからいいから」と笑顔で促してくる。 「はあ、それじゃあ……」  大智が怪訝に思いながら目を閉じると、ガサッと薄いビニールが擦れる音がした。そして次の瞬間、突如唇にヒヤッとした何かが押し当てられる。 「んぐっ!」  大智が目を見開き声を上げた隙に、星川は冷えたそれを口にポンと放り込んできた。ひんやりとした心地の良い冷たさと同時に、柑橘系の爽やかな甘みが大智の口に広がる。 「びっくりしました?」 「そりゃ……しますよ。急に口に物を入れられたら」 「そのアイス、コンビニ限定なんですよ」  星川はそう言って、手に提げていたレジ袋からアイスのパッケージを取り出して見せた。そこから一口サイズのアイスをつまみ出し、自身の口にも放り込む。 「朝のアイスって、美味しいでしょう? 目が覚めて、しゃきっとするし」 「確かに、気分が良くなりますね。……ありがとうございます」 「どういたしまして」と満足げに微笑む星川の頬が、まだ溶けきらないアイスでリスのように膨らんでいる。その愛らしい表情につられて、大智も頬を緩めた。 「インハイの予選、頑張ってください。応援してます」  星川は大智に向かって頭を下げ、校舎の方へと歩いて行った。  応援してます、か――星川の背中を見送りながら、大智は星川の言葉を噛みしめた。  生徒ならともかく、教師の自分が大会前に励ましの言葉をかけられるのは、初めてかもしれない。なんとも言えない甘酸っぱい気持ちが、大智を満たしていく。  だがそれも束の間、予鈴が鳴り出し、大智ははっと顔を上げた。 「まずい、俺も着替えないと!」  生徒に時間について指導したばかりなのに、教師が遅刻をしたら示しがつかない。  大智は表情を引き締め直し、校舎へと足早に向かった。  その日の夜、大智は職員室に残って仕事をしていた。部員たちの希望で部活動の時間を延長したために、仕事に取りかかったのは夜の八時を過ぎてからだった。 「……この子は、あまり授業に集中できてないのかなぁ」  大智は溜息交じりにつぶやき、生徒から提出されたノートを閉じた。  この学校では、教師が定期的に生徒たちの授業ノートを回収し、生徒それぞれの授業への理解度や意欲をチェックしている。大智の机には数クラス分の授業ノートが積み上げられ、大智はそれに一冊ずつ目を通していた。 「近藤先生、お先に失礼します」  同じく残業をしていた教師に声をかけられ、大智は「お疲れ様です」と頭を下げた。 「星川先生も大変そうですよね。塾講師と掛け持ちされてるんですから」  去り際、教師は労るような目を大智の隣の席――星川の席に向けて帰って行った。  以前雑談を交わした際、星川は学習塾でも講師をしていると大智に話していた。ダブルワークをしている事情までは明かさなかったが、星川は「もし教諭になったら、自分のクラスを持ってみたいです」とも話していたし、もしかしたら教員採用試験に向けて勉強をしているのかもしれない。  星川は非常勤講師ではあるが、生徒とのコミュニケーションに意欲的だ。星川が休み時間に廊下で生徒と雑談したり、人付き合いが苦手で孤立している生徒にも、積極的に話しかける姿を大智は目にしたことがある。生徒一人一人と向き合おうとしている星川なら、良い教師になれそうだと思う。 「……いかん、仕事に集中しないと」  大智は無意識に緩んでいた口元を引き締め、また授業ノートを丁寧に読んでいった。  職員室から教員の姿がほとんどなくなった頃、大智は「ううん」と大きく伸びをした。壁の時計に目をやると、夜九時を少し過ぎている。  そろそろ帰れそうだな――大智はそう思い、授業ノートの最後の一冊を手に取って表紙をめくった。だがそこに書かれていたのは、授業のメモ書きではなかった。 「……なんだこれ、小説か?」  大智は思わずつぶやき、ノートに目をこらす。そこには強めの筆圧で、文章がびっしりと綴られていた。  ――ふう、ようやく今日の授業が全部終わった。ほっとした気分で廊下を歩いていると、向こうからスラリと背の高い教師が歩いてくる。  斉藤先生だ――――! 彼の姿を見ただけで、僕の心臓はドキッと跳ね上がってしまう。  そのことを隠して「お疲れ様です」と素通りしようとすると、いきなり腕を掴まれ、空き教室に引っ張り込まれる。 「んんっ……!」  壁に押しつけられ、激しく唇を貪られる。熱い舌にすっかり溶かされて、僕はその場に崩れ落ちそうになってしまった。 「……っ、斉藤先生、学校じゃ駄目だって」 「仕方ないだろう。目が合ったら、星野先生に触れたくなったんだから」  耳もとで囁かれて、ぞくぞくっと震えが走る。そんな低くて甘い声で言われたら、逆らえないよ……! 「仕事が終わるまでと思っていたが……お前が可愛すぎて、我慢できない」  斉藤先生はそう言って、僕の服に手をかけた――  小説に一通り目を通した大智は、その内容に言葉を失った。  ノートに綴られていた小説は、およそ小説と呼べるレベルに達していなかった。本来小説にあるべきテーマや構成は放棄され、表現は稚拙そのものだ。  けれど、この小説からは素人ならではの熱意というか、ただひたすら「教師二人の愛の営みを表現したい」という筆者の熱い想いが、マグマのようにほとばしっている。大智はその熱気に引き込まれ、一気に読んでしまった。  ――というか、この斉藤と星野という教師、俺と星川先生のことじゃないか?  知らぬ間にノートを持ち上げ、夢中で読みふけっていた大智はふと我に返った。  よくよく小説の内容を確かめると、登場人物の名前、担当教科に加え、体格や髪型などの特徴が明らかに酷似している。このノートの持ち主は、大智と星川をモデルにしてこの小説を書いたに違いない。  小説の中の大智はやけに強引な男として描かれ、星川に惚れ込んでいるのか、所構わず星川の身体を求めているようだ。一方、星川は初心な青年で、恥じらいながらも大智の求めに懸命に応じていた。  フィクションとはいえ、自分がキザな台詞を言いながら星川に迫っているなんて――リアルな想像が大智の頭を駆け巡り、かーっと顔が熱くなっていく。  ノートの表紙を見てみると、そこには〈二年三組 中村恵美〉と書かれていた。恐らく中村は小説を授業ノートにカムフラージュし、授業そっちのけで執筆していたのだろう。そして本物のノートと間違えて、小説を提出してしまったのだ。 「ふーっ……」  大智はひくつくこめかみを押さえ、天井を仰いだ。  教師は生徒を叱っても、怒ってはいけないとよく言われる。この小説を書いた生徒にどう対処するか、理性的に考えなければ。  大智としては、未成年である高校生には、もう少し健全な恋愛小説を書いて欲しい。けれど、生徒が誰にも見せずに執筆しているポルノ小説に、教師の自分が「書くな」などと言ったら、逆にセクハラになってしまう。今回は誤って大智の目に触れてしまったが、見なかったことにするしかないだろう。  けれど――もし、星川がこのノートを見つけてしまったら、どう思うだろう?  中村恵美は小説のノートを誤って教師に提出してしまうそそっかしい生徒のようだし、今後も誰かの目に触れないとも限らない。星川がこれを読んでしまう可能性は、ゼロではないだろう。  星川は生徒たちをいつも気にかけ、大切にしている。それなのに、生徒の一人に自身が性的な小説のモデルにされていると知ったら、星川は傷つくかもしれない。生徒を傷つけたくはないが、星川にも傷ついてほしくない。  大智は再びノートを開き、ペンを取った。 〈こういった小説を書くときは、モデルが誰か分からないよう配慮しましょう。それから、今後このノートは学校には持ち込まないように〉  大智は小説の末尾にそう書き込み、ついでに〈もっと現文を勉強して、文章力を磨きましょう〉と書き添えた。小説を書くのなら、中村にはもっと質の高い作品が書けるようになってほしい。  これで、星川先生が傷つくことがなければいいが――大智は不安を感じつつも、ノートを閉じようとした。  けれども、ふと、小説の中の一文が大智の頭をよぎった。  ――僕は夢中になって斉藤先生にしがみつき、彼の唇に口づけた。それこそアイスキャンディーにむしゃぶりつく、子どもみたいに。 「ん、んん、……斉藤先生、好き――!」 「アイスキャンディー」という単語に、大智の心臓がドキリと跳ねた。  今朝、星川が口に含ませてくれたアイスの爽やかな香りが、鼻孔の奥でよみがえる。口の中で溶けるアイスの甘さと、唇に触れた星川の指の感触――それらが記憶の中で、急にセクシャルな色を帯びはじめた。  星川の、あの小さな唇で触れられたら、どんな感じがするだろう――。 「……っ、」  大智は、慌ててノートを閉じた。  ……自分の心音が、やけに大きく聞こえる。焦りなのか、罪悪感なのか、よく分からない感情が、胸の奥でぐるぐると渦を巻いていた。  ――何考えてるんだ、俺は。  大智は、バシバシッと両頬を叩いた。  けれども、一度生まれた後ろめたい妄想は、すぐには消えてくれなかった。 「あーあ、この小説を読めるのも今日で最後か……」  ノートを片手にタオルで髪を拭きながら、七生はつぶやいた。しっとりとした素肌はまだ桜色に色づいて、腰の奥にけだるさが残っている。  このところ、星川七生はとあるBL小説を読むことを密かな楽しみにしてた。  その小説は、七生が勤務している女子校の生徒が、授業の合間にせっせとしたためたモノだ。その生徒、中村恵美と雑談を交わした際、ひょんなことからお互いがBLを愛好する同士だとわかった。  二人でBL談議に花を咲かせているうちに、中村は七生をモデルにBL小説を書かせてほしい、と言いだした。七生はそれを許可する代わりに、BL作家を志す彼女の作品を読ませてもらっていたのだ。  許可を出す際、七生は小説を他の人には絶対に見せないように、と中村に念押ししていた。だが運命のこの日、「小説を近藤先生に見られた!」と中村は七生に泣きついてきたのだ。  しかも相手は、あの近藤大智だ。よりによって、許可も得ていないもう一人のモデルに小説を読まれたことが、中村にはよほどショックだったのだろう。もう七生たちをモデルにしたシリーズの小説を書くのは止め、七生に読ませるのはこれが最後だと言われてしまった。 「残念だけど、仕方がないか……」  七生は溜息をこぼしつつ、小説の続きを読み始めた。  ――でも中村さん、もし本当の俺を知ったら、びっくりするだろうな。  七生はそう思いながら、くしゃくしゃに乱れたシーツの上に寝転ぶ。  七生の部屋にはさっきまでセフレの男がいて、このベッドの上で小説よりも過激なことを繰り広げていた。そんなこと、いくら妄想力の逞しい中村にだって、想像つかないはずだ。  七生は、いわゆる「ビッチ」だ。  中村恵美が書いた小説――その中で七生がモデルとなった男、星野は初心な青年として描かれている。だが、実際の七生は複数のセフレと関係を持ち、ただれた性生活を送っているのだ。  物語とは違い、現実の七生のセフレはやる事をやるとさっさと帰ってしまった。別に付き合っている訳ではないから、まだ居て欲しい、なんて言う権利は七生にはないのだけれど。  中村恵美の妄想の中の近藤――斉藤は、強引ではあるが情熱的だ。激しく星野を抱きながら、「好きだ」「愛してる」と繰り返し囁いてくれる。本物の近藤は学校で行為に及ぶような非常識な男ではないが、好きになった相手にはきっととことん愛情を注ぐだろう。生徒の成長を一番に考え、慈しむ近藤を見ていると、そう思う。 「……俺もこんなこと言われたいな」  小説に綴られた愛の言葉を指でなぞり、七生はつぶやいた。  ビッチに言ってくれる男なんて、いないだろうけど。  七生はノートを閉じ、ベッドで一人目を瞑った。 《了》     

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