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𝐷𝐴𝑌 𝟘
この地球上の海は全てつながっているなんて
嘘だと思う。此処へ来る度そう思わされる。
つま先が砂の中に埋まる肌の温度で夏を訪れを知った。夏至 を数日前に迎えた瀬戸内海。いつも見ている高い波飛沫や激しい満ち引きをここで見る事は無い。
『つまんね、、』
これからの盛夏に向けて徐々に高まる高揚感は残念ながらここでは感じない。浜辺を歩きながらにわかに夕波の音がする浜辺を歩いた。
「あのーすいません。この写真が撮れるポイントわかりますか?」
手を繋いだカップルと思わしき二人組に声をかけられる。手にしたスマホの画面に写し出された景色の写真はSNSに投稿されているこの海岸での写真が並んでいた。
『ごめんなさい。地元の者じゃないので』
サンダルに短パン姿でのらりくらりと1人で歩いていれば地元人だと間違われても仕方ない。本当は写真の場所を知っていたけど教えなかった。地元ではない事は嘘ではないが、幸せなそうな人間に僕はどう映っているのかと思うと素直に教えたくなかった。まさに器の小さい人間だと思う。
ひねくれた性格は今に始まったことではないけれど急加速させた事件があった。
6年前この場所で。まさに今この時期に一つの命がこの海に散った。
田舎の昔ながらの家屋の引き戸をガラガラと音を立てて入ると、奥から話し声が玄関まで聴こえて砂がついたサンダルを適当にパッパッと払って脱ぐ足を一旦止めた。
「もう6年も経つんねぇ。生きとったら30歳くらいになっとんかね」
「うん、そうね」
讃岐 弁の強い訛 りをこの6年間、毎年聞いていると勝手に理解できるようにもなりどうでもいい特技ができた。"あの話か"と輪に入りたくなかったけどいい香りつられて居間の畳の上に座った。
「あら麻比呂 戻ったの?今ごはん作ってるからまだ待ってて」
『うどんならいらない』
「さすがに3日連続うどんはないわよ」
『じゃ食うよ』
「全く文句ばっかりな子なんだから」
県外に嫁いで30年の母親からは完全に訛りが消えこの家には高齢の祖母一人で住んでいた。
香川県の静かな木造平屋の家は時間の感覚を失うほど静かに穏やかだが、確かに時を刻んでいた。
"僕もお兄ちゃんみたいにサーフィン上手くなりたい"
"そうだな。一緒に波、制覇しようぜ"
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