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第16話

「陽斗さんこんばんは。」そう楓が挨拶する声が聞こえる 「楓くん来てたんだね、こんばんは。」はるにぃの声も聞こえて心臓は2人に聞こえるんじゃないかと思う程音を立てていた 「それじゃあ俺はもう帰るので、、、」 「そうなの?」 「はい、じゃあ尚也またな。」 そう言って家を出る前に小さく「頑張れよ」と言葉を残して、、、 2人になった玄関で何も言わない俺にはるにぃが「なおや?大丈夫か?」と心配そうに声をかけてくる 「うん、大丈夫だよ、、、話俺の部屋でしたいから部屋先に行ってて、飲み物取ってくる」 「分かった、ありがとう」 そう言ってはるにぃが2階へ上がる後ろ姿を眺めて深く深呼吸をする 飲み物を用意して部屋の前に立つ もう一度深呼吸をして扉を開ければはるにぃが少しリラックスした状態で待っていた その前にコップを置けば「ありがとう」と笑顔を見せてくれる その笑顔に少しの不安が襲う "すべてを話した時またこうやって俺に笑顔を見せてくれるだろうか、、、" はるにぃの向かいに座ってどうやって切り出そうか悩んでいる俺にはるにぃは何も言わずただ静かに待ってくれる "よし、話そう。" そう決めて顔を上げれば俺をまっすぐに見つめるはるにぃと目が合い覚悟を決めた心が揺れ動く "だけどこのままじゃいけない、、、" 「はるにぃに言わなきゃいけない事があります。」 「うん。」 「受験の前に勉強教えてくれたよね、、、」 「そうだね。」 「その時に1回はるにぃが慌てて家を出た時があったよね。あれって恋人にヒートがきたからだよね?」 「知ってたの?」 「、、、メッセージ見えちゃって、、、、」 「メッセージ、、、」 「はるにぃあの時気付くの遅かったって、恋人に言ってたけど、、、あれ俺のせいなんだ」 「どういう事?」 「はるにぃが席を外してる時に、、通知が見えて、、、ヒートってあったから、、これ見たらはるにぃが行っちゃうって思って、、、、せっかく2人でいる時間がとられるって思ったら、、、、手が勝手に動いてた、、、、」 何も言わないはるにぃの反応がこわかったけど俺は言葉を続けた 「通知を消して、、、何か連絡がきても直ぐに分からないようにマナーモードにした、、それだけじゃなくてカバンの奥の方にしまって完全に気付かないようにもした、、、、」 言い終わった後は顔が見れなくて下を向く 沈黙がこわい、、、 顔を上げることが出来ない、、、 「なんで、、、そんな事したの?」 「それは、、、、」 「尚也はさ、オメガの人がヒートになったらどんな風になるか知らない?」 その言葉に首を横にふる 「そうだよね、知ってるよね。学校で教えてもらうもんね。じゃあもう1回聞くね、何でやったの?何か理由があるんだよね?」 「ごめんなさい、、、」 「理由は言えない?」 いつも優しいはるにぃとは違う少し低めの怒りを含んだ声で出される言葉に心が冷えていく 理由を言ってしまえば、はるにぃを好きだと言っているようなものだ 直接的に好きとは言わなくてもはるにぃの事だから勘づくだろう ただでさえ "嫌われた" そう思ったのに、その事でさらに距離を置かれる事になったら辛いと思ってしまった こんな時でも俺は自分の事しか考えていなかった、、、 謝りながらもヒートが与える苦痛を俺は何ひとつちゃんと分かってなんかいなかった、、、

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