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第22話

何だか少し気まずい空気が流れるけど楓の「もう大丈夫そうだな!」と明るく言うその言葉が空気を変える 感情のままに泣いたことによって、さっきよりも、今までよりもすっきりとした気持ちになっていた俺は思った事を口に出す 「俺さ、もうほんとにはるにぃの事諦めるよ。」 「そっか、、、」 「時間はかかると思うし、こんな風にまた楓に慰めてもらう日がもしかしたらあるかもしれないけど、、、でも、、、前よりも気持ちはすっきりしてるから、、、大丈夫な気がする。」 そう話す俺に「また泣きそうな時には俺の胸貸してやるよ!」そう言って笑顔を見せる楓に俺はもう一度お礼を言った あれから数週間、、、楓と一緒に学校の図書館で勉強したり、寄り道して帰ったりして徹底的にはるにぃ達を避けるようした いくら諦められそうと言っても、姿を見てしまったらまだダメな気がして、、、だから何とか会わないように気を付けているのに、それに比例してはるにぃからの連絡が増えた [最近あまり見かけないけど元気?] [親戚からりんごが届いたから尚也の家に持っていったんだけど、、、まだ帰ってなかったんだね、、、顔見たかったのに、、、] [最近、楓くんとばかりだね、、、] [尚也の姿が見れなくて少し寂しいな、、、] なんでこんな事言うんだろう.....もう期待なんてしたくないのに.....諦められると思ったのに....どうしてこんなにも俺の心を乱してくるんだろう..... 会わなければ自然と気持ちも落ち着くだろうって....だから楓に協力してもらいながら頑張ってるのに..... 優秀だったはるにぃは高校時代生徒会長もしていた、、、だから学校では、はるにぃを知ってる先生から話を聞かされる事もあった その度に "あぁやっぱりはるにぃはカッコイイな..." なんて思ったりして、、、 だからせめて、学校の外では はるにぃの存在を感じないようにって連絡もしていなかったのが間違いだった、、、 連絡を返さなくなって何日目だっただろうか その日は楓の家に寄り道して家に着いたのは20時過ぎだった するとまるで俺の帰りを待ち構えていたかのように携帯に一通の通知が届いた [今から行くから] 絵文字も何も無いその短い文に焦るより先に玄関のチャイムが鳴る パタパタと玄関に向かう足音 ガチャっと玄関が開く音がしたと同時に聞こえる母親の「晴人くんどうしたの?」と問いかける声 「尚也に用があって、、、」 「あら、そうだったの。さっき帰ってきたばっかりでね、部屋にいるから上がって。」 「ありがとうございます。」 そんな会話が聞こえたと思ったら階段を上ってくる足音 会いたくない.....今、会っちゃいけない......どうしよう..... そんな焦りに反して足音は部屋の前で止まりノックの音が聞こえる とりあえず顔を見ないように、、、そう思ってまだ制服から着替えてもいない状態にも関わらずベッドに潜り込んだ ゆっくりと扉が開いた後にベッドへと近づいてくる気配 「なおや?寝てるのか?」 その問いに答えられずにいれば布団に手がかかったのが分かり思わず目をつぶる 静かに捲られた事によって直に感じるはるにぃの視線 俺は寝ている、、、だから、、、早く帰ってよ、、、お願い、、、 そんな俺の願いは叶うこと無く、はるにぃはベッドの側に腰を下ろした 「制服も着替えずに寝てんの?」 「、、、、」 「なんで最近楓くんばっかなんだ?あんなにはるにぃって言いながら俺の事追いかけてくれてたのに、、、」 そう言いながら俺の髪にそっと触れる手に俺の心臓はめちゃくちゃで その手が頬に触れれば、再び髪に触れ離れた瞬間、はるにぃが立ち上がったのが分かった 布団をかけ直した後に気配が遠くなり扉がゆっくりと閉まった その後トントントンと階段をおりる音、「おじゃましました。」の声が聞こえ玄関の扉が閉まる音が聞こえた所で俺はゆっくりと起き上がった なんであんなに優しく俺に触れながら「寂しいよ」なんて悲しい声で言うの.... なんでそんなに愛おしそうな声で俺の名前を呼んだの.....

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