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第36話

翌日、両親と一緒に警察に向かう 案内された部屋で言われた言葉は耳を覆いたくなることばかりだった 席に着いた瞬間、目の前に袋に入った物が並べられると「尚也さん、これに見覚えはあるかな?」そう聞かれた 袋に入った物をじっくり見れば、無くしたと思っていた物達だった 「これ、、、無くしたと思ってた、、」 「全てあの男の部屋から出てきました。」 「えっ、、、」 そう言われ袋をよく見れば一緒に何か入っていて、近くに寄せ見てみれば、それを持っている俺の写真と日付だった 「な·····にこれ、、、」 「非常勤講師として尚也さんの学校に行った時に盗んだのだと、、、それと、、、」 そう言いながら新たな物が出てきた 同じように袋に入っていたそれはタオルや歯ブラシ、下着等だった それを見た俺は「えっ·····」と小さく声を漏らす事しか出来なかった 「尚也さん、一度、鍵を無くしたことはありませんでしたか?」 そう問われ記憶を思い出す 「1か月前ぐらいに、カバンのどこにも見当たらなくて、だけど、ダメ元で学校で聞いたら、届いてて、、、」 「あの男が隙を見てカバンから盗み合鍵を作った後に届けていました。」 「うそ、、、」 そう言うので精一杯だった 「その合鍵を使い、何度か尚也さんのお宅に侵入し盗んでいたそうです。」 今まで安全だと思っていた 家について戸締りをちゃんとしていれば大丈夫だろうって でも何も安全なんかじゃなくて タイミングが悪ければ鉢合わせしていだろう そうなったらどうなっていたのか それだけじゃなくて、いつも部屋の前まで送ってくれていた楓や亮介、湊まで危険な目にあっていたかもしれない そう思ったらとても冷静じゃいられなくて ガタガタと震え出す体を自分の腕でギュッと抱きしめるけど治まる気はしなくて その様子に気付いた父親が俺の体を支えながらゆっくり立たせると「すいません、今日はこれ以上はちょっと。」そう声をかけた 「そうですね。ただ侵入したとの事なので尚也さんのお部屋を調べたいのですが、、、」 「それなら私だけ行きましょう」 「分かりました。」 「お母さん、今日は尚也と一緒にもうホテルに戻ってなさい。」 「分かった。尚也、行こうか。」 母親にそう言われゆっくりと背中を押される形で俺はホテルへと戻った それから何時間か経った頃、鍵を解除する音が聞こえ父親が部屋に入ってきた 俺と目が合えば「大丈夫か?」と優しく声をかける 「うん、平気。お父さん、、、どうだった?」 「お前の部屋には盗聴器等の怪しい物は幸いなかったそうだ。」 「そっか、よかった。」 「そのまま管理会社にも連絡したから明日にも鍵は交換される事になった。明日また行ってくる。」 「俺も行くよ。」 「大丈夫なのか?」 「大丈夫だよ。それに大学から連絡きてさ、冬休みまでの1ヶ月ちょっと自宅で過ごしてもいいって。その間の出席は課題提出で大丈夫だからって。だから必要な物だけでも取りに行きたい。」 非常勤とはいえ、講師が生徒の私物を盗みおまけに自宅に侵入なんて大問題だ 出来る限りの事はします。の言葉もあり、俺は実家にしばらく帰り心を落ち着かせることにした 父親は「わかった。」とそう一言だけ応えた 翌日、マンションへ向かい部屋につき、扉の前で一度深呼吸をする すると隣の扉が開いた 「かえで、、、」 「おはよう、尚也。」 「おはよう。」 「大丈夫なのか?」 「あの日よりはね、、、」 「そっか、、、おじさんとおばさんは?」 「下で話してる。⋯⋯かえで、俺しばらく実家に帰ることにした。その間の出席も課題出せば問題ないって学校も言ってくれたから。」 「そうなんだ、それなら、安心だな、、」 「ごめんね。こんな事になって、、、楓はあの時からずっと心配して言ってくれてたのに俺が軽く考えてたばかりに、、、」 「言っただろ、お前は悪くないよ。」 「⋯⋯うん、、、」 「じゃあ俺は行くな。帰る時気を付けて。」 「ありがとう。」 「冬休みには俺もそっち帰るから!またな!」 そう言って手を振りながら学校へ向かう楓の後ろ姿を見送っていれば、業者の人と話をしていた両親がやってきた 鍵の交換を見届け、必要な物をカバンに詰め込んだ その日の夜、俺は両親と共に実家へ帰った はるにぃへの気持ちを断ち切るまでは帰らないつもりだったから、夏休みも帰らずにいたのにな、、、 そんな事を思いながら自分の部屋の窓から隣の家を眺める "はるにぃに連絡した方がいいよな⋯⋯あの時助けてもらったわけだし、、、" そう思いながら携帯を見れば時刻は21時半 迷いながらも1回だけ、、、そう思いながら俺は、はるにぃへと電話をかけた

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