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嫌な連絡

 今の叶真ではバリタチを名乗れないかもしれない。もし仮にキョウスケが抱かれたいとやって来たとしても、抱くことは無理だろう。もっともキョウスケが相手ではたとえ叶真がこの状態でなくても勃たなかっただろうが。  ともかく叶真は自分がバチタチであると言い張った。今は勃起障害に陥っていたとしてもキョウスケに知られなければ何の問題もない。  だが叶真は電話の奥から不気味に笑うキョウスケの声を聞いた。 『お前、あれから何人抱いた?』 「は、はぁ? なんでそんなこと言わなきゃいけねぇんだよ! プライベートなことだろうがっ」 『抱こうとしたけど抱けなかったんじゃないのか?』  キョウスケの言葉に叶真は凍りついた。言い返さねばならないのに、喉が引きつり何も言葉が出てこない。  なぜキョウスケはそのことを知っているのだろうか。叶真の沈黙を肯定と受け取ったキョウスケは喉鳴らして笑った。 『男同士のセックスじゃネコのほうがイイってのはよく聞くだろう。はまるとタチに戻れなくなるやつがほとんどだ』 「勝手なこと言ってんじゃねぇよ……」 『お前、最後は後ろだけでおっ勃ててたしな。ネコの才能がある』 「うるさいっ、黙れってのっ!」  叶真が怒鳴るとキョウスケの声はピタリと止まった。しばし沈黙が二人を流れるが、沈黙の先でキョウスケが笑っているのが目に見えて分かる。  どんなに取り繕ったところでキョウスケは分かってしまっている。犯されたあの日も思ったことだったが、キョウスケという男は叶真の何倍も狡猾で喰えない、大人の男だった。酷い奴に目を付けられたな、と叶真は己の運のなさを呪う。  気持ちを落ち着かせようと一度深く息を吐いた叶真は冷静に話を始めた。 「……仮に俺がお前の言った通りになっていたとしても、俺はお前と寝る気はない」  平静を取り戻した叶真の声に、キョウスケも先程のような叶真をわざと揶揄するようなことはなかった。 『俺と寝ない、か。……あえて聞くがお前は他の男に足を開くことが出来るのか?』 「他の男……?」  考えていなかった質問に叶真は戸惑う。そもそも己の身体が変化していると気が付いたのはついさっきのことだ。これからどうするのか考えたこともない。秘所を刺激しなければ達せられないということは、これからの性生活において重要な変化だった。女性が行う風俗で前立腺マッサージというものがあるのを知ってはいたが、一般的な女性にそれを求めることは出来ないだろう。そうなれば答えはおのずと一つしかない。当たり前のように秘所を使う男同士のセックスで、抱かれるしか方法はなかった。

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