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第1話 先輩
高校2年生の夏、人生初めてのバイト。場所は無難に近くのコンビニ。動機って言ったらやっぱり遊ぶためのお金としか言い様はない。
ひとしきり、店内の説明を終えられ練習に出るのは明日からと言うことになった。まあ、以上でも以下でもない。それだけのことだ。時計を見れば午後の2時半を過ぎた辺り。今日はとりあえず帰ってゲームでもするかな何て思っているとバックルームに1人の人影が。
「あ、新人さん?」
入ってきたのは見た目同年代の男の子。だが…小さい。パッと見た感じ160センチほどの身長。夏に似合わないオーバーサイズの黒のパーカー。そして何より目付きが悪い…正直ちょっとあれで見上げられるのは恐い。だけど多分歳は俺のほうが上だろうな。
「はい、明日から練習に入ることになりました。七瀬 改 です。」
「あぁ、東 翔琉 です。よろしく。」
あ、あれぇ、もしかして若干不良な感じだったりするかな…?言葉遣いとか…。
と、そんなことを思っていた時、先程まで店内を案内してくれていたオーナーがやってきた。
「あれ?東くん、いつもより早くない?」
「まあ、今日は忙しいでしょうからちょっと早めに来ましたね。」
「いつもありがとね。」
会話からなかなかの信頼が伺える。ちょっと情報が整理しきれてないのが本音だ。
「あ、七瀬くん。こちら東くんって言ってうちのエース。今年21歳でうちに来て5年になるベテランだから解らないことあったらどんどん聞いてもらって。」
「あ~そうなんですね。」
…ん?待って。21歳って言った?
「ベテランは言いすぎですよ。ある程度なら解る位です。」
何てそんな注釈が入るが、そんなことはどうでもいい。まじで年齢知らなかったらタメ口でいくとこだった…。
「まあ、これからよろしく。七瀬くん。」
「は、はい。」
お、追い付けねぇ…てか、いよいよ怖くなった…あの東さんって人、真面目そうだしサボりとか許されないやつだよな…。
「バイト先…完全にミスった。」
何て、誰も居なくなってからそう呟いた。
ともかく、練習は明日から…入ってしまったもんはしょうがない。もう割りきるしかない…仲良くできる気はしないな、何て思いながらバックルームを後にする。
この時間帯のコンビニ、そんなには忙しくないけど人通りはそれなりにあるみたいだ。東さんは人が変わったみたいに朗らかな声で挨拶している。おそらくあれがプロだ。
「無理そ~。」
何て呟いてチラッと東さんのほうを見る。すごい、あの声であんな目が死んでる人居るんだ。
ともかく………波乱の夏休みになりそうである。
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