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第1話
「吉津ぅ」
「うん?」
「んっ」
「ああ」
よく晴れた昼の屋上。吉津我聞(きつ-がもん)は手を伸ばしてきた楚々拓海(そそ-たくみ)の希望に応え、彼を抱き締めていた。
時期は初夏。そろそろ雨の季節が迫ってきている、ちょっとジメッとした毎日が続いていている時だった。
二人の仲は付き合ってはいるけれど、まだ体の関係はない。
いつ次の段階に行こうかとお互いに様子見の状態。でも何かのきっかけがないと次には進めそうもない、と言った感じだった。
吉津と呼ばれたのは、現在高校二年になったばかりの女の子にモテモテになりそうなのに実際はそうじゃない気弱な長髪の美青年でもあった。そして彼を甘い声で呼んできた相手は楚々拓海。同じくクラスメイトの栗色の髪を持つ甘えた男子だった。もちろん見た目は女子受け抜群の爽やか男子二人。でもお互いに惹かれ合っていたので、女子の影はどちらにも見受けられなかった。
「今日は寒いよね」
「ああ。こうも毎日温度が違うと何着てくるか、ホント迷うよな」
「うん。俺なんて吉津に触れない時用に使い捨てカイロ常時してるからね」
「ぇ」
それホント? と言うびっくりした顔をされて深く頷く。
「だって寒いじゃん」
「でも俺はカイロじゃないよ?」
「分かってるけど」
「……参るな」
「参らなくてもいいじゃん」
「うーん」
「……しゃぶろうか?」
「唐突」
「別にいいじゃん」
「……ここじゃ嫌だよ」
こんなところでされるのは嫌だと取った楚々の目が細まる。
「だったら」と、そんな彼によってひとつ下の階のトイレに二人して入り込む。せっせと相手のズボンと下着を下ろそうと躍起になっているのに対し、吉津はそれを制すと自ら股間を晒したのだった。それにかぶりつくような勢いでモノを口に含むと舌で味わいだす。
「んっ……んんっ……ん」
「ぅ……ぅぅっ……ぅ」
静かな男子トイレで二人の小さな声が響く。
「お……前、がっつき過ぎっ……」
「ふふふっ……ぅ……ぅぅ……ぅ」
好きだけど、体で受け止めるには抵抗がある。つまりお互い尻込みしているのが事実だった。
「んっ……んっ……ん」
「ぅっ……ぅぅ……ぅ……んっ」
舌先で先端を突かれたり吸われたりしながら袋を揉まれる。そして時に喉奥まで入れられて我慢出来なくなって相手の頭を自分に押し付けてしまうのもお互い様だった。
「も……出るっ……ぅ……ぅぅ」
「ぐっ……ぅぅっ……んんんっ……ん」
股間の刺激でもう限界を迎えてしまう。こんなに単純な行為でも吉津には十分で、楚々にも十分だった。吉津が放ち終えると立場を変えて楚々がされる。
「んっ……んっ……んんっ……ん」
「もっと……もっとだよ。吸って……噛んで……。もっと虐めてっ……」
「んっ」
言われた通り、ちょっとキツくしゃぶったモノに歯を立てると、それだけで大きさが増す。
「あああっ……んっ」
頭を押さえつけられて深さが増すとえづいてしまうが、相手を満足させている充実感も得る。
「ぐっ……ぅぅっ」
「ぅっ……! ぅっ……」
ドクドクッと口の中で射精されると、そのまま喉の奥に流れ込んでくる。それをしっかりと受け止めて飲み干すと口を離す。
「ごめん、吉津。ちょっと量多かった?」
「いいよ」
口を拭いながら向き合うと自然と唇を合わせる。抱き合って舌を絡ませると裸の下半身を擦らせて二人してお互いのモノをしごき合いキスを重ねる。
「んっ……ん……んっ」
何度も顔の傾きを変えてお互いを確認し合うように髪や項を触り合い、もう片方の指がワイシャツの裾から入り込みお互いの肌の上を滑った。自然と腰が揺れてどちらもその気になってしまい、また何度か同じことを繰り返す。
三十分以上トイレでゴソゴソやっていたせいで授業には出られず午後一は休んだ。
「はぁ……」
「不毛だな」
「でもどっちもこれで満足してんだからいいんじゃない?」
「まあそうだけど」
「六時限目は出ないとね」
「帰ったと思われるよな、きっと」
「そうだね。こうもサボってばかりじゃ」
「単位の心配しないとな」
「うん」
「片方だけまた同じ学年なんてヤだからな」
「そんな、両方だったらいいみたいな言い方」
「どっちも良くないか」
「うん。良くない」
「そろそろこの時間こんなことするのも止めないとな」
「うん。考えないとね」
「でも行為自体は止める気全然ない?」
「当たり前。止める理由がないよ」
「だな」
「うん」
「次は何の授業だっけ……」
「移動教室じゃないといいけど」
「移動だったら泣けるよな。また歩かなきゃいけない」
「特に音楽教室はね」
「別棟最上階の端っこって泣けるっ」
「ぁ、でも……昨日なんか音楽の授業、曜日時間前倒しの変更とか聞いたような」
「次? てか今日?」
「そこまでは分かんない」
「……」
「……」
「走るか」
「そだね」
階段を駆け下りて勢いよく自分たちの教室に駆ける。
季節はもうほとんど夏なのに制服は冬のまま、ちょっと汗ばんだ体を気にしながらも教室に戻る。やんわりとした昼下がりの話。
終わり
20240527
タイトル「乳繰り合うのも正統派」
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