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第14話

よく来ていた広い公園のベンチに2人でゆっくり座る 本当はどこかお店に入ろうと思ってたのに、何故か足はここに向かっていた 「ここ、よく一緒に来たな…」 どこか懐かしむ彼の表情に胸が締め付けられる 「すみません。オレ、よく覚えてなくて…」 家からも職場からも近いんだから、よく来ていてもおかしくないのに、自分だけが憶えていない場所のことを言われるとモヤモヤする 「櫻井(さくらい)さん、何か飲みます?そこの自販機ですけど、奢りますよ?」 少し離れた場所で煌々と光る自販機を指差し、少しだけ1人になりたくて提案する 「ありがとう、いいよ。一緒に行こう?」 当たり前のように手を握って引かれる あまりにもスマートな行動に手を振り払うことも、文句を言うことも出来ない ただ、握った手が熱かった 「あ、コンポタある。……ラーメンスープとおでんって…いつ見てもここのラインナップどうなってんだろ…」 変わり種の多い自販機の内容を見てつい笑ってしまい、ポケットから小銭を取り出して入れる 「櫻井(さくらい)さん、お好きなのどーぞ。」 ニッコリ笑って見せつつ、ラーメンスープを指差す 「竹内くん、こういうの好きだよな。豚骨ラーメンのスープってww 俺がこれにしたら、お前はコッチにしろよ?」 悪戯っぽく微笑んで押されたのは『和だし』と書かれた缶だった 「ちょっ、それ美味いの?出汁ってwww」 つい笑いが出てしまい、仕返しのようにラーメンスープを選んで彼に渡す 「奢ったんだからちゃんと飲んで、感想まで言ってくださいよ!これで不味かったら、明日のお昼奢ってください」 クスクス笑いながら、それぞれスープ缶を開け口を付けた瞬間 「うまっ!?」 「え、すごっ!」 予想以上の美味しさに2人揃って驚きの声を上げてしまい、顔を見て笑ってしまう 「これ、麺と焼豚欲しい。あと、ビールと餃子」 「この出汁でお茶漬けやるのもいいかも。ってか、これだけでも結構イケる」 それぞれの感想に更に笑ってしまい、今までの緊張が解れといく 「はぁぁ…、さっきまで緊張してたのがバカみたい。 櫻井(さくらい)さん、オレの話し聞いてくれる?」 彼にしっかり向き直り、話し始める 「オレ、今年いっぱいで退職することにしたんだ。 まぁ、有給残ってるから、在籍は1月いっぱいまでだけど、働くのは今年の最後の営業まで。あと、ココじゃない何処かに引っ越そうと思う。 場所はまだ決めてないし、次の仕事も決まってないけど… 心機一転、頑張ってみようかな。って!」 話していて、泣きそうになるのをニッカリ笑って誤魔化す 彼の悲痛な顔に、つい口元が震えてしまうも、バレないように顔を背け 「12月入ったら、店も忙しいし、こうやって会うのは今月いっぱいで終わりにしてください。 次の休日の約束は、ちゃんと行くから…だから、お願い、します…」 声が震えてしまう 嫌いなわけじゃないけど、好きなりたくない 「そうか…。朝陽が、そう決めたなら… 俺のことを忘れる原因を作ったのも、俺だから…、仕方ないよな…」 彼の声が震えているのがわかる 泣いてるのかもしれない でも、今顔を見たら、折角決心したのに揺らいでしまいそうで、振り返ることが出来なかった 「朝陽、ごめんな。でも、俺が諦めきれない。だから、今月いっぱいは俺にチャンスをくれないか? また好きになって貰えるように、口説かせて欲しい」 振り返ると、頭を下げて頼み込む彼がいた 知らないはずなのに、なぜか懐かしさを感じてしまう 前にもこんなやり取りをしたことがあったような気がした 「今月、だけですよ…。今月、だけ…貴方に口説かれてみます」

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