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6 放っておけない
コッパーブラウンの被毛も豊かな、王様みたいに堂々とした大きな猫。飼い主である卯乃には素直に甘えてくれて、逆に卯乃が元気がない時はさりげなく寄り添い、ふっさりとした尻尾で合図を送るように慰めてくれた。
(この目、この髪色……。猫獣人の数は少なくないけど、ここまでニャニャモに似てる人は初めて見た……。ああ、またニャニャモに会えたみたい。嬉しいよお)
剣呑な光を宿してはいたが、透き通るように綺麗なマスカットグリーンの瞳、前々から気になっていた光沢ある赤銅色の被毛に覆われたもふもふの耳とそこから出る長いふわふわの毛。ブラウンにところどころ黒い毛がメッシュになった髪色さえも似ている。
ずっと眺めていたかったが、いくら呑気な質の卯乃でも、体調の悪い人の横でずっとにやによして居られるほど人が悪くはなかった。
(ニャニャモに似た人が苦しんでるの見ると、すごく、胸が痛くなる)
色々な感情が呼び起こされて、卯乃は目に涙が滲んできた。
幼い頃からずっと一緒にいて傍に寄り添っていてくれたおじいちゃん猫。卯乃の大学受験が終わるまではと待っていてくれたように静かに息を引き取った、そんな愛猫に余りにもそっくりで、卯乃は一瞬で深森にきゅんっと心を奪われてしまった。
「ほっとけないよ」
そういって傍に寄ったが、深森はぐったりうなだれるばかりで無視を決め込んでいるようだ。こんな校舎の裏にいたのは、きっと日頃タフなプレーをする自分の、弱りきった姿を周りに見られたくないからだろう。なんとなく分かってはいたが、彼が身動きを取れないほどなのはどう考えてもただ事でなく、なおさら離れがたかった。
(苦しそう。暑いよねえ。サイベリアンは被毛が三層に分かれたスーパーもふもふキャット。猫獣人もこの時期は換毛するよね。俺もこないだサロンいってきたもん。今年は異常に暑くなるのが早いのに、深森、サマーカットにしにいけてないみたいだ。後ろ毛の量、かなりもふったままだもん)
もともとこちらの地方で育った卯乃は最近は春の終わりには結構暑い日が来ると知っていたが、涼しい地域から進学した獣人にはありがちなミスなのかもと思った。
「ちょっと待ってて、人呼んでくるから」
「いらんこと、するな」
「っ!」
細い手首を痛いほど掴まれて、卯乃は顔を顰めたが、土で白いパンツが汚れることも構わずにベンチの下に跪いた。
「無理しないで。暑さに弱いのは種族の弱点であって、君が悪いわけじゃないでしょ? 飲み物持ってくるから、それ飲んで。そしたら動けるようになるまで傍にいてあげるね」
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