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番外編 内緒のバイトとやきもちと4 side卯乃

可愛い系美男の店長にはファンが多くて、兎ではなく彼目当てのお客様も多いのだ。卯乃は「ウサ男君」と変なあだ名をつけられていているが、二人が仲睦まじくしているのを喜ぶ客もいるとかで、店長が度々スキンシップを図ってくる。困ったものだ。 「なんだお前たち。こんなところでさぼってないで、卯乃は早く戻ってあっちのテーブルにオーダーとりにいけ」 「はあーい」 「はい」    店長から耳がぺろんとめくれるほど頭をわしゃわしゃされてからやっと解放された。ふと深森の方を見たら、彼は卯乃によく似たオレンジ系の被毛のロップイヤーのミップちゃんを抱っこして撫ぜなぜしていた。  卯乃はオーダーを取るため移動するをするが、どうしても深森の方をちらちらとみてしまう。 (深森のやつ、ここでわざわざミップちゃん抱っこするより、うちでオレの事抱っこすればいいのに)  罪のない兎にまで変な嫉妬心がメラメラと沸いてしまう。そうしている間に今度はさっきの白兎の女の子が深森の方に近づいていったから、ますます胸がざわついてしまった。  サービスのドリンクを運んで行ったのは確かに業務内なので何も言えないが、そのあと二言三言言葉を交わして深森も珍しく笑顔で応えている。  いつもの深森なら、もっとそっけない態度を取るはずだ。  オレ以外にあんな顔で笑うなんて……。ちょっぴりでなく、大分落ち込んでしまう。 (深森って多分、そもそも兎獣人が好きなんだよね、きっと)    ここの店員は可愛いものが大好きな店長のお眼鏡に叶った美形ばかりだ。だからかそれぞれの店員目当てのお客さんも数多くいるほどだ。 (白ウサちゃん、性格はあれだけど、見た目はめちゃめちゃ可愛いよな)  私設のファンクラブも有しているぐらいなのできっと深森だって話しかけられたら悪い気はしないだろう。 (同じ兎獣人だったらきっと……。男のオレより、可愛い女の子の方がいいに決まってる)  じりっと胸の奥で今まで知らなかった炙られるような痛みが湧き上がる。  ガラスの向こうで何を話しているのかは分からないが、彼女が渡しているコースターを見て卯乃は思わず目を吊り上げた。  あれは店の女の子たちの常とう手段で、お店のオリジナルコースターとは別に、各自自分だけのコースターを隠し持っていて、気に入ったお客さんにこっそりSNSの連絡先を渡しているのだ。  普段なら「またお客さんにちょっかいだしてるよ」ぐらいで気にも留めない卯乃だけど、相手が自分の恋人だと話が別だ。 (深森、お願い。コースター持って帰ったりしないで。そんなことしたら俺、やきもちでどうにかなっちゃいそう)

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