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第52話 恋と愛と欲望と(2)
6ー2 告白
それから俺は、王太子殿下が泣きながら話すことを聞いていた。
俺とクルーゼが魔法学園に入学したとき、クルーゼより3つ年上の王太子殿下は、最上級生で生徒会の会長をされていた。王太子殿下の話では、次第にクルーゼと一緒に行動をすることが多くなっていた俺のことが目に止まるようになっていたのだという。
「・・最初は、愚弟の学友としか思っていなかった。だが、私の卒業の日、あなたは、私に花を贈ってくれた。あの時のあなたの微笑みが忘れられないのです」
王太子殿下は、鼻水をすすりながら俺に話続けた。その間も握った俺の手を離そうとはしない。
「あなたが愚弟のパーティの魔法使いになったとき、私は、本当は、反対していた。邪神と戦うなんて危険をあなたに犯させたくはなかった」
王太子殿下は、握った手に力を込めると俺を見つめた。
「美しいあなたが邪神に殺されるのではないか、と心配で。私は、愚弟に会う度にあなたのことを訊ねていたのです」
本当ですか?
俺は、ふと、クルーゼの嫌そうな顔を思い浮かべてしまった。クルーゼは、この3つ年上の実の兄のことが苦手だと言っていた。彼は、優秀な兄と比べられることに辟易していたのだ。
まあ、だからといってクルーゼが俺を追放したとは思えないが。
「それが、こんなことになって・・私がどんなに心を痛めていたかわかってくれるだろうか?」
「それは・・申し訳なかったです」
俺が言うと王太子殿下は、ぶんぶんと頭を振った。
「私は、自分の無力さを許せない。私が無力である故にあなたに男娼のようなことをさせてしまった。どうか、私に償いをさせて欲しい、エルターク殿」
王太子殿下が俺にぐっと顔を近づけた。美しい顔がアップになり俺は、怯んでいた。王太子殿下は、俺に向かって言い放った。
「どうか、私の側室になってもらえないだろうか?」
はいぃっ?
突然のことに俺は、頭がぐるぐるしていた。
俺が王太子殿下の側室だって?
驚いて瞬きをしている俺にかかわらず王太子殿下は、俺を見つめて真剣に告白した。
「側室が嫌なら側近として仕えていただいても構わない。どうか、一生、私の側にいて欲しい、エルターク殿・・いや、ルシウス」
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