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Prologue こんなの知らなかった ※
「あ……っ」
彼の愛撫を受けて、ミチルの体はどんどんと熱を帯びていった。
「やっ、う……」
胸を丁寧に舐め上げられ、ちゅっと吸い上げる音がミチルの脳を蕩けさせていく。
「っは……ぁ」
彼の指が下腹部を弄り、局部を握りこむとミチルは一際高い声で快感に溺れていく。
「ああっ!あ……っ」
思わず果てそうになるが、彼はそれを許さずに指を後ろに這わせた。
「ひぁっ!あ、ああ……っ!」
初めての感覚に、ミチルは更に嬌声を上げた。彼の指はミチルの未知なる部分をほぐしながら広げていく。
「あぁ……ん、だめ、も……ぅっ」
ミチルは知らなかった。こんなにも、全てが彼で染まるほどの、幸せがあるなんて。
「あ────ッ!」
ついに彼のモノがミチルの中に入ってきた。熱くて熱くて、そこから溶けていきそうだった。
「あ──!ああっ……!」
彼を全身で感じる。ひとつになった感覚に震える。幸せ過ぎて……
「……しんじゃう、ぅあっ、はぁ──っん!」
こんなことになるなんて、この世界に来た時は想像もしてなかった。
「ああ────ッ!」
ミチルは彼とともに絶頂を迎えた。
時は遡る……彼と出会った頃へ
今日は高校生活最後の日だ。
ミチルの心は晴れ晴れとしていた。
長い長いモブ生活にサヨナラ!短い春休みの間に絶対変わってやるんだとミチルは意気込んでいた。
それを宣言できる友達もいないのに。卒業式の帰り、ぼっちで帰宅しているのに。
家に帰ったらまず美容院に行こう。卒業祝いに親から美容院代をもらっている。都心に出てカリスマ美容師がいるサロンに予約済みだ。
そうして見た目を変えてもらったら、いよいよ自分の人生も花開くとミチルは信じていた。
待ってろよ、華やかなキャンパスライフ!オレのことなんか誰も知らない新天地でやってやんぜ。
──ミチルの心は晴れ晴れとしていた。
「ふおおぉ!」
制服を脱ぎ捨てて、着古したパーカーでミチルは駅へと向かった。
さすがにオシャレな洋服はまだ買えない。
まず今日髪型を変えて、大学生になったらオシャレなカフェでバイトして、お金が入ったらオシャレな古着屋で一点物を買う!
計画はカンペキだ。あまりのカンペキさに興奮が止まらない。
なので変な叫び声が出てしまった。
おっといけない冷静になれ。これでは不審者になってしまう。
カリスマ美容師に会ったら、わざと田舎者っぽく純朴な少年を演じよう。
そういう少年がお小遣いを握りしめて行けば、向こうのカリスマ心がくすぐられるはず。
そうすればカリスマ美容師の百パーセントの技術を出してもらい、同情を引けばすこしおまけしてくれるかもしれない。
なんてカンペキな計画!オレってば天才じゃない!?
さあ、駅までもう少し。あの改札を通れば薔薇色の人生の始まりだ!
「──!!」
急に突風が吹いた。ミチルは驚いて立ち止まる。
「雪……?」
空から白いものが降ってきた。
ふわふわと舞い踊るそれは季節外れの風花かと思った。
「羽……?」
よく見るとそれは鳥の羽だった。
さては上空で大きな鳥が喧嘩したんだなと思った。
「!」
しかし、その羽はミチルの周りをふわふわと取り囲み、次第に数が増えていく。
「え、な、なに!?」
無数の白い羽は、ミチルの鼻先をくすぐる。
元々花粉症のミチルはむず痒さをすぐに感じた。
「ハ、ハックション!」
思わずくしゃみをしてしまった後、周りの羽に異変が起きた。
真っ白だった羽が、ひとつ残らず青く染まっていく。ミチルの視界も青く染まった。
「──!」
まばゆく青い光とともに、ミチルの体はそこから消えた。
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