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6 初めての……

 さっきのメールの返事は、解散した後も返ってこない。多分、ゴーも忙しいのだろう。もしかしたら、これ以上のメールはできないかもしれない。それは仕方がないことだと思う。それぞれには生活があるのだから……。  春が帰宅して夜十一時。リビングのテーブルの上に置いておいた携帯が震え始める。  明らかにランプの点滅の仕方が、メールが来ていることを知らせていた。  春は携帯を手に取ると画面を開き、今来たメールを確認する。  今来たメールは、先ほどメール交換をしたゴーからだった。  春はイスに座ると、メールを読み始める。 『メール返信ありがとうございます。春さんから来た質問ですが……。春さんのグループは僕たちが活躍する前に活躍されていて、歌が上手くて、歌詞も自分たちで作っていて、僕にとってすごく憧れの方で……ずっと、僕も聴いてました。これで答えになってますか?』 「そっか……そうだったんだー。そういや、僕たちはずっとメンバーでやってきたもんなぁ。同業者であっても憧れってあるんだな」  そう部屋の中で独り言を漏らす春。 『うん、ありがとう。ゴーからのメールの返事が来るとは思ってなかったから嬉しかったよ。今、仕事が終わったの?』  そう春が返信すると、今回は早くもメールが返ってくる。 『はい! 今、仕事が終わったんですよ。春さん、本日はお疲れ様でした』  絵文字が多用されているわりには、きちんとした文章に驚く春。 『お疲れ様でした。って先に僕が言うべきだったかな? 明日も仕事ですか?』

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