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10 歌の指導?デート?

『僕たち、一般人にバレちゃうと騒ぎになるじゃないですか、だから、人気がないところで食事がしたいんですよ』  その言葉に変に納得してしまっている春。  だけど、危うく勘違いしそうになっていたようだ。 『なら、いつも僕が行ってる店を紹介するから……マネージャーか誰かに頼んで、僕がいるスタジオまで来てくれないかな?』  そう送ると、 『はい……分かりました。あそこのスタジオですよね? 後三十分くらいで向かいます』  という返事があった。ということは、今春がいる場所をゴーは知っているということだろう。  なぜだか、春が思ったようにことが進んでいるような気がする。こんなにうまく進んでいいのだろうかと、少し心配している。  本当にゴーは春のことを好きなのではないかと、勘違いしてしまうくらいだ。  それから三十分後。春がスタジオ内の一階にある喫茶店で待っていると、本当にゴーが来てくれたようで、スタジオの玄関前にあるオープンテラスで一休みしている春を見つけると、ゴーは春に手を振ってくる。 「春さん! ここにいたんですかー」 「ああ」 「お待たせしてスイマセン。行きましょう」  そう言ってゴーは春の手を取って歩き始めるのだが、 「え? あ……ちょっと待ってよ……僕、食器を片付けてないから……」  そう慌てながら春は、テーブルの上に置いていたコーヒーカップを手にしてカウンターへ戻し、ゴーの元に急ぐのだった。 「お待たせ……」  そう春は笑顔で言う。 「あ……え……はい! 行きましょう!」

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