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タイムスリップして嫌なヤツを助けて現在に戻ったら態度が180℃変わってた
『大地』
この国の学園にはヒエラルキーが存在していた。
最上位は龍族、神族といった魔力や神力等、力が強く生まれが尊い者達。
その次に獣人族、魔族など人間より強い者達。
そして最下層は人数こそ多いものの力の無い俺達人間だった。
「…なんだよ」
『ハッ、人間の癖に粋がるなよ』
俺はヒエラルキー最上位に位置する龍輝(りゅうき)という龍族の行け好かないイケメンクソ野郎に目を付けられていた。
体中に傷があり、更にその美形な顔には左目から頬に掛けての大きな傷がマイナスポイント…かと思いきや、それもワイルドで素敵!と人外共に人気なんだと。こんな性格クズが人気とか…ホント終わってるな。
『お前肩を壊して野球辞めたんだろう?野球の為だけに身体を鍛えていたのにな…で、残ったのは何だ?』
コイツは暴力も好きだが人の古傷を抉って精神を痛め付けるのも好きなようで、人間が嫌いなのかこうして良く虐めているが…一番頻度が高いのは何故か俺だった。
「うるさい」
『ははっ!何も残らなかった、そうだろう?だがそのお陰でこの学園に入れたんだ…良かったな?』
この学園はヒエラルキー最上位の者達の優越感を増す・満たす為だけに最下層の中の更に下…傷物の人間達だけが集められた学級があった。
俺もその内の一人。
本当は別の学校に行くつもりだった。小学生の頃から野球に打ち込んで来た俺は推薦で入学を果たす予定だった。
けど、入学目前にして肩が壊れ、推薦入学が出来なくなり、必死に勉強の方で入学しようと頑張ったのだが落ちてしまい…この学園から招待状が届いてしまった。
この学園から招待状の届いた人間は傷物として見せしめにされる。
他の学校に行きたくともこの学園から睨まれればその学校に圧力が掛かる。
この学園は龍族と神族によって多大な恩恵を得ている。
そんな学園に逆らえる学校は一つとして存在しなかった。
そして行き場の無い俺達傷物はこの学園に来るしか無くなり…心を病んでも尚勝手に死なないように徹底管理された寮で常に監視される最低最悪な日々を送っていた。
『何か言ったらどうだ?卒業すれば傷物でも良い仕事に付けるんだ。俺達の下で働くという、な。
普通の者共より高給取りだ。泣いて喜び、土下座して一生感謝し続けるんだ。
なぁ?そんな未来が楽しみで仕方ないよな?嬉しいよなぁ?』
そう。
強制的に就職先が固定されるのもこの学園の最悪な所なのだ。
高給に釣られてわざと体を壊して傷物になるような馬鹿な人間もいるが…この学園を甘く見たヤツらはもうすでに廃人寸前になって泣き笑いを浮かべながらブツブツとコイツらに感謝と謝罪をうわ言のように呟く毎日を送っている。
「誰が感謝するか…、ッ!!」
『良く言った』
龍輝が魔法を使う。
どろどろとした黒いもやが俺の周囲に漂い、一度でも吸い込めば━…
「がぁッ…!!ぐぁああああッッ!!!」
痛みと苦しみが襲う。
拷問の魔法は禁忌なはずなのに、最上位の奴らは平気でぽんぽんと使う。学園も最上位の奴らの金と権力に怯え、現場ですれ違っても注意すらしない。
『良い様だ。もっともがけ。苦しめ。それが俺達の娯楽となる』
『ふふ…龍輝様はいつも素敵な催しを思い付かれますね』
『ふん。こんなのはただの遊びだ。催しならこの間の傷物同士で戦わせ、負けた側を勝った側の手で一方的に嬲らせる方が面白かっただろう』
『あれも龍輝様がお考えになったものでは?』
『まぁな』
『素晴らしいです!』
『さすがは龍輝様』
『くく…俺を褒めるより苦しむ傷物を見ていた方が面白いだろうに』
どいつもコイツも上位に位置する人外はクソ野郎ばっかりだ。
俺は激しい痛みに堪えながら龍輝達を睨み付ける。
龍輝は俺の苦痛に満ちた顔を見て愉しそうに笑った。
パチンと龍輝が指を慣らすと拷問の魔法が解かれ、俺はゲホゲホと噎せ込んだ。
『大地。俺はお前を買っているぞ…何故なら簡単に壊れないからだ。
これからも俺を楽しませろ。学園卒業した後も。俺の尊い龍血を与えてやる。金持ちがこぞって欲しがる血だぞ?喜べ。そして長い長い人生を俺様に捧げ続けろ』
龍血を授かった者は長く生きるようになる。
人間の中でも裕福な者達が喉から手が出る程に欲しがっているそれを俺を虐め抜く為だけに与えるという。
龍輝達は思う存分に俺を魔法で痛め付けて愉しんだ後、この場を後にした。
まだ足りなさそうにしていたから次のターゲットを探しに行ったんだろう。
「… …くっそ、野郎…ッ!!!」
たった数か月。それでも毎日のように嬲られ続ければおかしくもなるだろうに、俺はずっと正気のまま。それに、肩以外は鍛えたせいか妙に頑丈で、しばらく寝転がって休んでいると動けるようになる程。
もし動けなかったとしてもあいつらにつけられた身体の傷はこの学園の強みである神族から派遣された天使族の治療師のせいで治され(傷物の原因だけは頑なに治して貰えない所にも悪意を感じる)、再び奴らに嬲られて傷をつくって…の地獄のループ。
こんな事ならいっそ狂ってしまえたら良かったのに。
俺は地面をダンッ!!と強い力で叩いた。
「っえ?」
突然下に穴が開いた。
体がひゅうっと音もなく落ち、俺は声を出す事も叶わず地面に激突した。
…え?地面?
落ちたと思ったら地面だった。
いや、草むら?
俺は立ち上がって辺りを見回した。
おかしい。
さっきまでいた場所じゃない。
何故なら周りが木々に囲まれていたからだ。
「な、なんだ…?一体どうなってんだ…!?」
空もどんよりとしている。
遠くの方では犬の遠吠えが聞こえる。
明らかにここは学園ではなかった。
『ぅわぁあああああああッッ!!!』
少し離れた場所からだろうか。
子供の叫び声が聞こえ、俺は咄嗟に駆け出した。
『だ、誰か…ッ!!誰かぁ…!お母さんっ…!!』
龍みたいな角が生えた子供がいた。
という事は…あの子は龍族なのか。
龍族の子供は、今まさにデカくて凶悪そうな顔をした犬に襲われそうになって悲鳴をあげている。
…あいつ、なんか龍輝に似てる。
行け好かない顔だが、このままむざむざ襲われそうになっている所を放っておく訳にはいかない。
「オラァアアア!!!」
俺は犬に向かって大声を張り上げながら駆け出した。
犬は子供に牙を掛けそうになっていたが、すぐに俺を脅威と認識したのか、こちらへ向き直った。
その隙に地面に落ちていた太い木の枝を拾い、犬に向かって投げる。
犬は避けたが、俺はもう次の石を拾い、犬の逃げる方向を予測して投げていた。
伊達に野球やってた訳じゃねぇ!
肩を壊しても少しの間なら我慢して投げられんだよ!!
石は見事に命中し、キャン!と声をあげた犬はグルル…と唸りながらも後退りしていた。
「もう一発食らいたいか?!石ならそこら中にあんぞ!」
俺は石をお手玉にした後、投げる素振りをした。
犬はそれを見て戦意喪失したのだろう、名残惜しそうに子供を見、踵を返して森の中へ去っていった。
「大丈夫か?」
俺は子供に声を掛けた。
子供は尻餅をついたまま頬を赤らめ、キラキラとした目で俺を見ていた。
『お兄ちゃん、格好良い…』
お兄ちゃん!?
行け好かないクソ野郎の顔でそれを言われるとぞわぞわ来るものがあるが俺はなんとか平静を装った。
「お?おお、有難うな。怪我は?」
『大丈夫…ちょっと足引っ掻かれただけ』
足を見ると、ちょっととはいえない位に血が出ていた。
「大丈夫じゃねぇだろ!動くなよ」
俺は着ていたシャツを引きちぎり、出血していた足に巻いてやった。
…多少犬と対峙した時に汗かいたけど…まぁ、うん…大丈夫だろ…。
『ありがと…お兄ちゃん。どこから来たの?ここ、危ない森だよ?』
「ああ、俺か…うん、多分…異世界転移したかもしくはタイムスリップしたんじゃねぇかな…?」
『いせかいてんい?タイムスリップ!?って、何?』
ああ、そっか…この歳だと英語はまだ知らないよなと俺は言い直した。
「異世界転移は自分のいた世界とは違う世界に突然行ってしまう事。
タイムスリップは時間を遡って過去に来てしまう事だ。
ここ森ばっかだし…どっちなんだろうな」
『そうなの?』
「このままここにいても住むところも食うものもねぇし…なんとか帰る方法を知りたいんだが…お前知ってるか?」
正直帰りたい所じゃない。
だが、このままアイツに負けたままでいるのも嫌だった。
これはもはや負けず嫌いのただの意地。俺が壊れるかアイツが飽きるか…どっちが早いかの勝負。
勝負だと口にすればアイツは一生俺を縛り付けるだろうから絶対に言わないけれど。
『…ごめんねぇ…僕…村で嫌われてるから…』
なんだか深い事情がありそうだった。
突っ込んでいいものか迷ったが、聞かないのもそれはそれで後味が悪い。
「なんで?」
『僕は、拾われた子なの…。それに、人間じゃないから…。
角があって、鱗があって、尻尾があるから…人間じゃない、気持ち悪いって…。』
ああ…。
俺は納得してしまった。
あるよな、そういうの。
人間だけの学校でもちょっと変なヤツがいると弄って笑ったり、悪い時には除け者にしたりな。
目の前の子供は明らかに人間と違う龍族。
普通、龍族は供物と引き換えに人間には到底不可能な出来事に立ち向かえる力を貸して厄を退けたり、一時的に魔力を込めた玉を貸して人間をパワーアップさせたりと人から敬まわれる存在なのだが…この子のいる村の者達は知らなかったのだろう。
「とにかく、村まで行くしかないよな…応急手当てだから傷が化膿すると歩けなくなっちまう」
『…うん…』
「さ、おぶってやるから背中に乗りな」
『!…良いの…?』
「おう」
『ぼ、僕…鱗でざらざらしてるよ…?』
「まぁもし擦れて俺の皮膚が傷付いたらそれを口実に手当て道具貸して貰えるから別に良いよ」
『…お兄ちゃん…』
龍輝に似た子供はぐすぐすと泣き出してしまった。
『お、おいどうし』
俺が狼狽えていると、グルルルル…と重低音がした。
木々を薙ぎ倒しながら濃紺色の大きな龍が空から目の前に舞い降りた。
『その子から離れろ』
視界一杯を塞ぐ程に大きな龍は俺を金色の眼孔で射抜くように睨み付けた。
俺は動く事が出来ず、固まってしまった。
目の前で龍を見たことは一度もない。足が震えだすのが止められない。
本物の怒りに染まった龍は暗雲を呼び、嵐を呼び、少しでも動けば殺されると思わせる恐ろしさがあった。
『お母さん…?もしかして、お母さんなの…?!』
『ごめんなさい我が子。長い間貴方がいなくなった事に気が付かなくて。ようやく貴方の声が聞こえたわ…!』
『お母さん…っ!!』
親子の感動の対面なのだろう。
だがその片目はしっかり俺を睨み据えて目を離さなかった。
『人間。この世の別れは済んだか』
龍が魔力を溜める気配を感じる。
勘違いとはいえ泣かせてしまった事に変わりはないが、弁明をする時間さえ無さそうだった。
『待って!!この人に助けて貰ったんだ!だから攻撃しないで!』
『…?いじめられていたんじゃなく…助けて貰った…?』
『そう。この人がいなかったら今頃僕は化け狼に食べられちゃってたかもしれないんだ』
『まぁ…!そんな怖い思いをさせてしまっていたなんて…!
そういう事であれば殺すのはやめておきましょう…。
この子を傷付ける者でないのなら早くこの場を去りなさい』
龍は強い生き物である。
だから弱くて小さな人間にわざわざ感謝の言葉を送ることも謝る事もしない。
『お母さん、それがね、お兄ちゃんいせかい、てんい?か、たいむ…えーっと、時間を遡って来ちゃったかもしれないんだって…帰してあげられないかなぁ?』
『時間を…?』
龍は少しの間宙を睨み、やがてこくりと頷いた。
『時空の歪みが残っているようですね。今開きます』
俺は来た時と同じようにぱかりと突然足元に空いた穴へ落ちていった。
『お兄ちゃ━…!!』
子供が何か言っていたようだが、すでに遠くにいた俺には聞こえなかった。
『これでもうあの者は無事に帰った事でしょう。さぁ、私達も龍の国に…あら?その足のボロきれは…?』
『…お兄ちゃんに…手当てして貰ったの…』
『まぁ…。もう少し丁寧に帰してやれば良かったわね』
『また、会えるかな…?』
『そんなに気に入ったの?』
『…うん』
『帰さなければ良かったかしらね…でも時空の歪みからして未来から過去に来ていたみたいだからどこかで会えるかも知れないわ』
『また、会える…!未来で待っててね、お兄ちゃん…!』
俺は地面に尻餅をつき、目をぱちぱちと瞬いた。
「…びっくりしたなぁ…。」
無事に現代こと地獄に戻って来れてしまったらしい。
「さて、帰るか…」
空を見るに夕方位か。
そろそろ寮に帰らないと罰則を食らう。
立ち上がって土埃をはたいていると、運悪く龍輝のクソ野郎が歩いて戻って来る所だった。
隠れる場所もなく、珍しく取り巻き連れてねぇなとじろりと睨んでいたらぱちりと目があった。
『!!お、お兄ちゃん…?』
ゾワッとした。
『お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん…!!!』
突然目にも止まらぬスピードで飛び込んで来たかと思うと、ぎゅうぎゅうと抱き締めてぐりぐりぐりと頬ずりされ、俺は全身鳥肌がぶわわわわっと立ってしまった。
「ひい!やめろ!お前なんだ、病気か!?!?」
『お兄ちゃん、僕を覚えてないの…?僕、お兄ちゃんの事忘れたことなかったよ』
龍輝の顔を見る。
今の龍輝は不思議とあの時の子供に重なった。
「え?いや、え?」
『やっと会えた…!お兄ちゃんに、お兄ちゃん…!』
また頬をぐりぐりされた。
あの時からどれくらい経っているのだろう。
俺には一瞬だったが、コイツには10年位…か?
「… …てか、あの時の傷は?」
『お兄ちゃんのお陰で良くなったよ!』
「いや、そっちもだけど…顔の傷が、無い」
俺は龍輝の顔に手を伸ばし、その左目と頬に触れた。
龍輝は顔を赤らめ、目をつぶって手にすり寄って来た所で。
『龍輝様!』
取り巻き連中が現れ、龍輝は素早く振り返った。
『龍輝様、柊大地と二人で何してるんです?』
『もしかして決闘の途中ですか?』
『お前達、少し二人きりにしろ』
『っ、わ、分かりました』
龍輝が俺の手を掴み、ぐいぐいと庭園の奥のヒエラルキー最上位しか立ち入る事の許されない場所まで引っ張って来た。
「いやちょっと待て、龍輝…お前…?」
『あの…ね、お兄ちゃん。
タイムスリップ前の僕…お兄ちゃんを虐めてた…?』
「お?お…」
頷き掛けて止まる。
マジでコイツがあの子供ならそれは残酷な答えなのではと思ったからだ。
『やっぱり…!お兄ちゃん…ごめんなさい…ごめんなさいお兄ちゃん…!
僕、僕、村で人間に虐められて来たから人間が嫌いで嫌いで仕方なくて嫌悪感しかなくて……でも!お兄ちゃんだけは別でっ…!』
龍輝はまるで泣きそうな子供のような表情を浮かべた。
『お兄ちゃん…もう、僕の事、嫌い…だよね…』
俺の顔を見れず俯く龍輝に俺はポツリと呟いた。
「正直、大嫌いだったよ」
びくん、と龍輝は体を震わせた。
大柄の男なのに今だけはあの頃のように小さく見えた。
「でもな、あの子とそれを覚えてるお前の事はなんでか嫌いになれねぇよ…あんなに暴力振るわれて来たのに、な」
複雑な気分だったが、今の龍輝は俺を虐めたあの龍輝とは全く別の存在に見え、今までの理不尽に対する怒りをぶつける先が無くなってしまったように感じた。
『あの、ね。
今でも…お兄ちゃんの服の切れ端持ってる…。ほら』
俺の破れた服に切れ端を広げた。
血が滲んで黒く変色している汚れた布を大事そうに懐にしまっていた龍輝を俺はもう憎めなかった。
いや、むしろこれで良かったのかもしれない。
不毛で一方的に心に秘めた勝負をして壊れるのを待つよりも圧倒的に。
この煮え切らない思いはいつか今の龍輝が消してくれる予感がした。
『僕は龍族。龍族の習性を知ってる?』
俺は黙って首を振った。
『一度惚れた相手には一生惚れたまま』
龍輝は頬を染めて俺を潤んだ目で熱く見つめた。
『僕の初恋、そして最後の恋はお兄ちゃん…』
龍輝が俺に近付く。
目と鼻の先に龍輝の体が寄った。
『お兄ちゃん、大好き』
龍輝は俺にキスをした。
俺は拒む事も出来たが、拒まなかった。
何故なら断った瞬間、命を絶ちそうな危うさを今の龍輝に感じたからだ。
『お兄ちゃん………僕を受け入れて、くれる…?』
こんな真剣な目で見詰められたら、もう俺に断る選択肢はなかった。
そのまま目を閉じれば、
「ん、っふ…」
再度、龍輝のキスが降ってきた。
「ん、ん…ッ」
唇を繋げるだけでなく、舌まで入ってくる深いキス。
初恋というからにはこういう経験も無いはずだと思うのは俺の勝手な思い込みだろうか?
その割に上手いキスでだんだん気持ち良くなってきて意識がとろんとしてしまう。
気持ち良いキスを堪能しているとひょいっとズボンの中に手を入れられ、俺は急激に意識が覚醒した。
「え、ちょ、龍輝ッ…?」
『なぁに?お兄ちゃんッ…♡』
あ。これもうスイッチ入っちゃってる。
目が完全に発情した雄のそれだった。
俺はこのまま最後まで流される事を覚悟した。
「っあ!」
『はぁっ、お兄ちゃん…♡大地お兄ちゃん…♡』
下着の中のそれを弄られながらペロペロと首筋や耳を舐められ、擽ったさの中に性的な快感を感じ、ゾクゾクと肌が粟立つ。
「っぁ、ん、りゅう、き…ッ♡」
『お兄ちゃん感じやすい…?もう勃起してる…♡』
「いや、常に監視されて、ん、扱く隙無かった」
『ごめんね…たっぷり出させてあげるから…!』
龍輝が扱くスピードをあげた。
「あ、あ、りゅーき…ッ!!♡♡♡」
数か月溜まっていたからか、思ったよりも大量に龍輝の手の中に吐き出してしまう。
龍輝はそれを躊躇いもせず口にした。
『お兄ちゃんの、せいえき…♡』
「お、美味しくないから…!ぺってして…」
『濃くて美味しいよ』
恍惚な顔で龍輝は俺の出した精液を全て平らげてしまった。
『はふぅ…♡』
「龍輝、本当に俺の事好きなんだな…」
まさか精液を飲み込むなんて嫌いな相手のものであれば絶対にしない。
前の龍輝であれば俺の顔面にぐりぐりと強い力で塗りたくって舐めろとでも言っているだろう。
『凄く好き。愛してる…♡』
ここまで来てようやく俺は完全に過去の龍輝と今の龍輝を切り離す事が出来た。
「そっ、か。じゃあ俺も、龍輝の事…好きになってやらなきゃ…」
俺がそう決意していると、龍輝はふるふると首を振った。
『無理やりじゃなくて良い。お兄ちゃんは前の僕に嫌な事されたんだもの。
それなのに今、体を許してくれてるのが僕にとって奇跡。だから、好きになってくれるのは後からでも僕は嬉しい』
「龍輝…」
龍輝は俺の体をベンチに横たえまたキスをした。
そして下着の中に手を入れ━…。
「っん!りゅ、龍輝…!そこはっ…!」
『痛くないように、魔法使うから』
「え、いや、でも…!」
龍輝は俺の尻穴の周りを指でくるくる弄りながらピンクのもやを俺の周りに漂わせた。
それをすうっと吸い込んでしまえば━。
「ッあッ!♡♡」
『あ、濡れるの早い…♡』
「待っ、りゅーきぃ…!♡♡」
龍輝が尻に指を入れた。
それは易々と中に入って来てしまい、俺は敏感になった体をびくりと跳ねさせた。
…勿論この性的方面の魔法も禁忌である。
それを何故龍輝が覚えているのか…。
「りゅ、き…この、まほう…!♡」
『あ、ぅん…ご、ごめんね…。その、お兄ちゃんと…ぇ、えへ…♡』
誤魔化した!
前の龍輝であれば人間同士でヤり合わせてゲラゲラ笑う為に覚えたんだと分かる。
だが今の龍輝は俺といつかヤる為に覚えたらしい。
…これ、俺が龍輝を受け入れず流されなかったら問答無用で使ってた可能性もあったな…。
「あ、あッ…!♡♡」
龍輝の指がすでに三本中に入って来ていた。
俺の尻穴は面白いくらい簡単に龍輝の指を飲み込み、まだまだ余裕があるというようにひくりと収縮した。
『もう、良い…かな?』
「ふぁ、りゅーき…この、ピンクの…消して…っ♡」
『消したら少しずつ戻っちゃうから』
「だって…どんどん、からだ、あつくなって…!♡♡」
ピンクのもやを吸い込む度に体がゾクゾクと疼く。
早く中に入れて欲しくて仕方ないと尻の穴も中もピクピクする…♡♡♡
『んっ…♡』
龍輝が自分のモノを取り出す。
人外らしく、そのペニスは太さと大きさが人間のモノとは段違いで、そして何より裏筋から根元の辺りにごつごつとした濃紺色の鱗がポツポツと間隔をあけて生えているのが見える。
思わずゴクリとつばを飲み込むと、龍輝が嬉しそうに目を細め、ピクン♡とペニスを揺らした。
『挿入れるね』
龍輝は俺のズボンを下着ごと降ろすと、俺の腰を引き寄せ━…ぐぷり、と大きく熱いソレを尻穴に挿入した。
「あぁああああッ…!!♡♡♡」
思っていた以上に熱い。
龍輝のペニスからもたらされる熱くて強い快感が中を支配しているかのよう。
『ん、お兄ちゃんの、中ぁ…♡♡』
龍輝は俺に何度もキスをしながら夢中になって腰を振った。
龍輝のモノが中で動く度、ごつごつとした鱗が俺のイイトコロを的確に擦っていく…!
「あぁッ♡♡♡あぁあッ!♡♡♡りゅッ♡♡♡ぁはぁッ!♡♡♡」
ビリビリと快感が走り抜ける。
「ひんッ!♡♡♡待っ…♡♡♡強ッ♡♡♡♡」
龍輝のソレは俺の中を押し広げ、ぐぽぐぽと容赦なく責め立てる。
ピンク色のもやも快楽に拍車をかけるように濃さを増していく…。
『お兄ちゃん…はぁっ♡♡♡お兄ちゃんッ…♡♡♡』
龍輝は俺を抱き締め、がつがつと盛って止まらない。
なるほど、これはハジメテなのも頷ける…じゃないが!?激しすぎるっ!!!
「あ、あっ…!♡♡♡♡りゅーきぃぃ…っ!!♡♡♡♡」
『大地お兄ちゃ…!♡♡♡』
勢いが良すぎたのだろう。
龍輝のがぐぽんッ!♡と上手い具合に最奥に入り込む。
その瞬間、体がガクガクしてイくのが止まらなくなった。
「あひっ♡♡♡♡♡ああ♡♡♡♡♡あぁあ♡♡♡♡♡ひぁあああ…!!♡♡♡♡♡」
『あ♡♡♡お兄ちゃん♡♡♡そんな締め付けられたら…♡♡♡いっぱい出ちゃ…♡♡♡』
龍輝は熱いのがびゅるびゅる最奥に叩きつけながら何度も境目をぐぽん♡ぐぽん♡と行き来する。
そこを擦られる快感の強さに耐えきれる訳も無く、俺は龍輝の体にすがり付き、イき狂った。
口からははくはくと息しか漏れず、気持ち良くて目の前がチカチカして…。
俺は龍輝に抱き着いたままに気絶した。
『ごめんね、お兄ちゃん…!!』
起きたら龍輝に泣きながら謝られていた。
『気絶させちゃった…!』
「ん、いーよ。…めちゃくちゃ気持ち良かったし…」
龍輝はパァアアアッ!と一気に笑顔になって俺の体を抱き締め頬擦りをした。
それから急にしおらしくなってチラチラと俺の顔色を伺い始めた。
なんだなんだ、顔は美形で性格も丸くなったらお前、そんなもん最強のイケメンの誕生だぞ?
やめろよまだお前に惚れたくねーよ、まだ若干慣れなくて動揺してんだぞこっちは。
『あ、あのねお兄ちゃん…』
もじもじと指を絡め出す。
一体何を言おうとしているのやら…。
『あのね、その…』
顔を赤くして指の回転を早めた。
龍輝の尻尾がぶんぶん振られている。風圧が凄い。当たったら骨が折れそうだ。
『僕の…お、お、お嫁さんになって下さい!』
俺はポカンと間抜けな顔をしてしまった。
「へっ?え?」
『だめ?結婚、して欲しい…』
龍輝が俺を抱く前に確か言っていた。
“龍族は一度惚れた相手には惚れたまま”だと。
てことは、つまり?
「え、あ、ええっ!?」
なんも後先考えずに龍輝を受け入れてたけど、つまりそういう事で…!!!
俺、龍輝に体を許したし、もうこれは結婚決定なのでは…!?
『だ、だ、ダメだったら…うぅっ…ぼ、僕…!』
「ちょ、ちょっと待て…!心の、整理を、させてくれ…」
『う、うん』
いくらなんでも展開が早すぎる。
抱いた次の日には結婚しようとか龍輝、あまりにも急ぎすぎ…!!いや、ある意味責任を取る気があるって事で…うーんと、えーっと…!!?
「龍輝、その…いきなり結婚って言われると、困る」
『ひぅっ!!』
「あ、あー…いや、まぁ、流されちゃった俺にも原因はあるが…」
『だ、だ、だ、だめ……?』
「あのな?急には無理だろ」
龍輝は泣きそうになりながら(めちゃくちゃ涙もろいなこの龍輝…なんでだ)俺の言葉を待っていた。
「…つまり、俺達には色々…色々、足りない」
『え、えと…』
「まず俺はお前の事をちゃんと知らない。お前も俺をちゃんと知らない。それに準備とか…いるだろ」
『!!!』
龍輝は俺の言葉にキラキラと期待の表情を浮かべた。
「多分さ、お前…俺が断っても囲う気満々だろ?」
龍輝は盛大に目を泳がせた。
『ア、ア、ナンのことか、ワカンナイ』
「はぁ━…。やっぱりな。複雑だけど…昨日抱かれる覚悟を決めた時になんとなくこうなるんじゃないかって気はしてたよ」
龍輝はしゅんと落ち込んだ。
「だから、良いよ。結婚。もう決まってるようなもんだし」
『あ、あぅ、でも、本当に嫌だったら…ぅう…!!』
「無理だろ?俺と結婚しないなんて」
『無理ぃ…!』
「はい決まり。だけど時間くれな?」
龍輝は俺の言葉に泣き笑い、嬉しそうにしながら首をかしげた。
「お互いちゃんと知ってから。つまり、学園卒業したら結婚。それと保護者?にもちゃんと言っておけな?後から断られるのは…」
『大丈夫!!!』
食い気味で言われた。
『あの頃からずっとあの人と結婚するって言ってたから!♡皆良いよって言ってくれて、探すの手伝ってくれたし大地をこの学園にも入れてくれたの…!』
「え、あ、そ、そう…」
一族で囲う気満々だった…ていうか知らずに助けてしまったとはいえ過去改変でこんな裏話聞かされるとは思わなかったよ!
いや、改変前はこんな裏無かったと思うけど!
『でもどうしてか大地お兄ちゃんに会えなくて…やっと昨日会えたから、嬉しくて…その、沢山盛っちゃってごめんなさい』
「あー、こっちの龍輝からはそうなんのか。
ん、もう大分吹っ切れたから良いよ。それより綺麗にしてくれて有難うな」
龍輝はにぱっと笑った。
あー、なんだこのくるくる表情変わる龍族…。なんか可愛く見えて来るだろーが…!!乱すな、俺を!!
「それじゃそろそろ戻んないと。真っ暗だし…怒られるから龍輝も一緒に行ってくれると…」
『どうして?今日から僕の所に住むでしょ?』
「え?」
『だって将来結婚するのにどうしてわざわざ別れる必要があるの?』
「いやだって俺傷物だし…」
その言葉に龍輝はぶわわっと髪の毛を逆立てた。
『い、いつ傷物になったの!?』
「え?ほら、野球で…あれ?」
肩が全く痛く無かった。
そういえば龍輝にあんな激しくされたのにどこも痛く無かったな…。
『お兄ちゃんもしかして怪我してたのにあの時僕を助けてくれたの…?』
「え?あ、あぁ、野球で肩をやられて…でも今痛くない。なんでだ?」
『小さな頃からお兄ちゃんをずっと見守っていたもの…怪我したって聞いたらすぐ良いお医者さん手配したよ?』
過去改変で自分の体にも異変があったとは…!
「じゃ、じゃあ俺、傷物じゃ…?」
『ないよ』
俺は不覚にも泣きそうになってしまった。
「そ、そっかぁ…。俺、もう龍輝に助けられてたんだな」
『どうしたのお兄ちゃん…?』
「ううん…有難う…っ!」
俺は龍輝に抱き着いた。
龍輝は何がなんだか分からないま俺をぎゅっと抱き締め返してくれた。
俺が龍輝の全身の怪我から守ったように龍輝も俺を一生残るはずの肩の故障から救ってくれていた。
それを聞かされて俺が龍輝に落ちないはずがなく。
急に縮まった距離に龍輝はハテナを浮かべながらも嬉しそうにしていた。
『龍輝様!?あれほど嫌っていた人間を伴侶に選んだのは本当なんですか!?!?』
『俺が大地を選んだのがまだ信じられねぇのか』
『いや、その…昨日までは…ん?昨日…まで、は………?あれ、記憶が曖昧…』
『それに関しては自分ではない自分がやった事とはいえ死ぬまで後悔し続けるし、死ぬまで自分を責めるだろう。その分愛を注ぐつもりだが』
『ベタ惚れじゃないですか…え?という事は人間は』
『嫌いだが?』
『えっ!?』
『嫌いに決まってるだろうが。自分達が大多数だからと少数を除け者にするような種族など滅んでしまえば良い……』
ゴゴゴゴと大きな地鳴りが聞こえる。
龍輝の怒りは地面を揺るがす程に大きい。
『龍輝様!お気をお鎮めになられてください!!』
『龍輝様!?ああ、目が暗くなって…このままではまずい…!』
『龍輝様のダークサイドスイッチが入った!気の済むまで殺戮を始めるぞ!誰か止めろ!!!』
もうすぐ龍輝の暴走が始まろうかという時、一人の男が声を掛けた。
「龍輝」
ひょこりと姿を現し、龍輝に近付いていくのは大地だった。
「一緒にご飯食べよう。…ほら、俺達まだお互いの事そんなに分かってないし…」
一斉にぽかんとした顔で注目されてか、恥ずかしそうに顔をぽりぽりと掻く大地の側へ龍輝は瞬間移動の魔法を使って移動し、その肩を抱いた。
『大地お兄ちゃん特別テラスがあるよ。あそこ見晴らしが良いんだ…♡あそこで食べよう!』
「そうなのか、連れてってくれるか?」
『うんっ!僕に掴まって』
龍輝はご機嫌に尻尾を振り、学園に作られたヒエラルキー最上位の者の住む龍の間を後にした。
『お兄…ちゃん?』
『誰だあれ…?』
『きゅ、救世主…』
地鳴りは何事も無かったかのように収まり、やがて龍族の間では絶対に手を出してはならない龍輝様の手中の珠として大地の存在は密かに語り継がれていくのであった。
【その後のお話や補足】
心の拠り所を見つけた為に龍輝が人間を虐める事は無くなるので多少はましになる。
ただ人間を見下す層はいくつもあるので、龍輝が何故特に虐めていた人間を伴侶に選んだのかとか、人間の上更に男なら子供を産みにくいだろうから人外の女を伴侶に選べだとかひと悶着起こる。
龍輝が子供の頃何故森にいたのかは村の人間達に森で食物集めて来いと言われたから。
森に化け狼という危険な魔物がいる事を分かっていて村の者は行かせていた。
叫んでいた所は『お兄ちゃん大好きだよ』です。
今生の別れかと思いきや大地が未来人だったので初恋を募らせたまま大地の行方を探し当て、自分も勉学に励みながら見守っていました。
でも謎の力が働いて学園では数か月会えずにダークサイド力を溜め込んでいたという裏話。
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