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第4話 悪役に転生してました
「リュドリカ…?」
そこに映ったのは、このゲームにおいてのラスボス、史上最恐の魔王!…の側近だか手下だかのリュドリカ・ユニソンじゃないか!?
見た目は小柄で丸々としたヘーゼルの瞳に銀髪のマッシュヘアで色白、初登場の時にはその可愛い見た目にファンも多く出来たが最も多くファンを作った理由が、割と序盤で魔王に殺される不遇キャラだったから!!
「なんで!?コイツ!?」
絶望に顔を染める
間違いであってほしい
もっと他にキャラいたじゃん!勇者の親友のフータスとか!弟のタリスとか!いたじゃん!?
最初の村だよ!?何でコイツがここに……いたわ!歴代勇者の子孫であるラシエル・アーマイトの敵情視察だかなんだかで出てたわ!
「なんでなんだ~!」
あからさまにガックシと肩を落として、己の不幸を呪う
せっかくこうして生まれ変わったのに、また呆気なく死ぬ運命が待っているだなんて!
「あっ!?」
てかそもそも、チュートリアルではラシエルとリュドリカは出会わないんじゃなかったか!?
影でコソコソ覗き見る意味深なメインストーリーのワンシーンだけだったのに、ガッツリ出会っちゃってるけど俺マズくないか!?
また勇者ラシエルの方に目を向ける
するといつの間にか俺が手を放していたせいで、だいぶ辛そうな体勢でラシエルは停止してしまっていた
「ああっ…なんか……ごめん…」
また腕を掴もうと手を伸ばすが、寸前でその手を止め一度考える
魔王の配下なのに、こんなに御近付きなってしまって良いものなのだろうか
原作では勇者にこそ殺されはしなかったが、手下と気付いた瞬間勇者に倒される可能性もあるんじゃないか
「でも俺が触れていないと…ラシエルは動くことが出来ないし…」
今そんなことを考えてもしょうがないし、もっと動いてるラシエルの勇姿が見たい!ということで、俺は勇者の手助けをすることに決めた
「……っわわ、急に手を放さないで下さい…」
俺がラシエルの腕を掴むと、一瞬倒れかけながらも体勢を整える勇者
「……ご、ごめん…」
俺は小声で謝りながらとりあえず正体を明かさないようにと身に纏っていたローブのフードを目深に被る。今更とても遅いと思うが
「どうして急にフードなんか…」
勇者が心配そうに覗き込んでくる
うわ、顔がいい…じゃなくてっ…ど、どうしよう
「え、えーと…預言者は…あまり人に顔を見られてはいけないのです…」
なんかとりあえずそれっぽい理由を言ってみる
ラシエルはなるほど~っと納得して覗き込むのを諦めてくれた
俺はひとまずホッとして胸を撫で下ろす
「でも、キミの印象的な顔、俺はもう忘れることはないよ」
勇者が目深に被っていたフードを鷲掴み強引に取り外す
目が合って、日に照らされた翠緑の瞳は、まるで森に迷い込んでしまったかのように惹きつけられた
「……ッ…」
俺は顔を真っ赤にして咄嗟に顔を両手で覆う
「ちょぉ…っ…今の反則だろぉ…」
ドキドキして恥ずかしさをはぐらかすようにヘラヘラと笑いながら勇者をちらりと見る。あ、止まってる。すいません
「な、なんかごめんね?さっきから、つい手を放しちゃって」
いつの間にか俺は勇者の腕を掴むのが妙に恥ずかしくなり裾を掴んでいる
付き合いたてのカップルか!付き合ったことないけど!
「ううん、平気ですよ。じゃあ俺が手を握っててもいいですか?」
「へぇっ!?そ…それはぁ…」
照れながら満更でも無さそうにモジモジしているところに、ラシエルは何も躊躇いもなく俺の腕を掴み返し、そのまま手を握られる
な、なんてスマートな動き!見習いたい!でもそれはこの顔ありきだから成せる業だけど!
「なっ!なっなっなっ!?」
語彙力どっか飛んでった
「…うん、これで大丈夫。何でこうなっちゃったのか分からないけど、暫くこのままでも良いですか?」
「…う、うん!ゼンゼンヘイキ!」
心臓は飛び出そうだけど!!手汗ヤバくないか俺!?
そんな事を気にしてても、勇者は早速歩き出す
背たっけぇのに、チビのリュドリカになった俺に歩幅合わせてくれてる…!好き!
あ、じゃなくてストーリー!
「そういえば…」
「あ、あのさ!」
二人が同時に喋りだす
勇者がニコリと笑い、先にどうぞと俺に先手を渡される
「あ、えーと、ここさ、この辺…アレが…あの~」
言葉纏めてから喋れ俺!
チュートリアルではこの湖の中に聖剣が眠っていて、勇者はなんとなく湖の中に手を突っ込む
するとこのゲームの世界カロリアの危機を察知した聖剣が主を見つけ、引き寄せられて行くのだ!勇者の手に!そこからご都合展開で急に魔物が現れて次々と倒していくとかそんな感じ!
その説明をどうやって伝えたら良いんだ!?
多分俺がコントローラー的な役割を持っているのなら、何とかして勇者を操作?導いて?やらないとダメだよなぁ…
何となく視線を湖に移してみる
するとちょうど聖剣が眠る位置に立っていたようで、俺は馬鹿みたいにあー!と叫んだ
「ど、どうしたんですか?」
「ラシエルさ…あの、俺、えっと…湖の中に…剣…落としちゃって…」
しどろもどろになりながら言う。ちょっと無理があったか
しかしラシエルは疑う事無く湖に顔を移し、聖剣に目を向ける
「……あの剣、預言者様のなんですか?さっき俺も見つけてて、少し気になってたんですよ」
「え!?そうなの!?」
うわー!やっちゃったよ俺!余計な事言っちゃった!
俺の介入なんてなくてもちゃんとストーリー進めてくれるんだ!
「どうしましょうか、潜って取りに行っても良いんですけど…手放すと俺動けなくなっちゃうしなぁ」
うーん、と悩むラシエル。きっと俺が余計な事言わなきゃ多分何となく湖に手突っ込んでたんだろうけど…
「ラシエル…何も聞かずに俺の言う事を聞いて欲しい」
一か八か、俺は口を開いた
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