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5-6.※
オメガは神と交わる存在。そのための何かが自分の中にあるのではと、そんな予感がロキの中に唐突に沸いた。ヴァクに飲まされたあの薬が、ロキの中の何かを誘発して目覚めさせたのかもしれない。
「フェン、悪いけど、少し休みたい。そっちの空いてる部屋に連れて行ってくれない?」
ロキが言うと、フェンはこくりと頷いた。
ここは入り口に面したメインの部屋を中心として、四方にそれぞれ寝室を設けた作りになっているようだ。そのうち二つは、ヴァクの取り巻きの黒髪の巨人族がそれぞれ娼婦と使っていて、もう一つはヴァクが酔い潰れて眠っている。そして残りのもう一つに、ロキは運び入れてもらった。
「しばらく一人にしてくれ、夜が明けるまでには何か方法を考える」
サイドテーブルに置かれた水差しになんとか手を伸ばしながらロキは言った。グラスに水を注ぎ一気に飲み干すが、体の火照りは治らない。
視界の隅に、窓から入る街の明かりに照らされた雄々しいフェンの体躯が映る。思わず目を閉じるが、瞼の裏に映った残像がロキの胸をざわつかせた。
「ロキ、苦しい?」
低く甘いのに、無垢で純真な声だ。
ロキは必死に首を振り、ベッドの毛布をめくって中に潜り込んだ。
「大丈夫だから、外で待ってろ」
ロキは恐る恐る履いていたスカートを捲り下着の上から自分の股間に触れてみた。なんの刺激も与えていないと言うのに、性器が熱く膨らんでいる。締め付けられて苦しいとさえ思った。
そして何より受け入れ難いことに、疼いた腹の熱を集めて、臀部がじくりと湿気を孕んでいる。
オメガが何なのか、ロキははっきりと理解していない。しかし子を産むことに特化した存在だと言うのなら、この湿り気はおそらく男性器を受け入れるためのものだ。
とにかく前を沈めれば、この腹の疼きもおさまるだろうかと、ロキが下着の腰部に手を入れようとした時だった。
ベッドのスプリングが軋む音がして、毛布の中にもそもそと入り込む気配がある。ロキが驚く隙もなく、フェンの体がロキに擦り寄った。獣の体毛ではない。少し汗を纏った人の皮膚だ。ロキの心臓は跳ね上がり、同時にじわりと臀部が濡れた。
「ば、ばかっ! 入ってくんな!」
ロキは両手でフェンの胸元を押すが、フェンは首を振りそのロキの手首を掴んだ。
「ロキ、いい匂い」
「んぁっ!」
フェンがロキの首筋に鼻先を擦り付ける。さっきヴァクに暴かれたままの胸元に、フェンが唇を押し当てた。
「や、やめてくれ、フェン!」
ロキは必死に理性を取り戻し、フェンの頬を両手で掴んだ。
フェンはロキの胸元に甘えるように張り付いたまま顔を上げる。その顔にまだ化粧が残っていて、こんな状況だというのに、ロキはおかしくてついつい笑ってしまった。頬を掴んだまま口元を親指で拭ってやると、フェンは潰れた頬で嬉しそうに笑みを作った。
それを見たロキの胸が再び騒つく。
布越しのフェンの手のひらの体温が、抱き寄せるように背中に滑った。
「まずい」と思ったが、ロキの本能は大した抵抗を許さなかった。
フェンの舌先が、ロキの口の端を舐める。薄く開くとすぐに中に入ってきた。ロキは体裁だけ抵抗するかのように、フェンの肩に手を置いた。
口内で舌が絡み合う。まるでじゃれ合うみたいだったその動きは、唾液を含んだ音を鳴らし、やがて熱い昂りを深めるような仕草に変わる。
フェンがロキの舌を絡め取りながら、吸い付くような音を立てると、ロキは背筋を震わせた。首の後ろが痺れるような心地よさを感じているが、下腹部はまだ足りないと疼いている。
ロキは自ら毛布の中で、スカートを腰まで捲り上げた。フェンの昂りが、ロキの太腿に艶かしく擦れた。途端にロキの心臓は感じたことのない期待感で跳ね上がる。抗い難い衝動に、ロキは目を瞑り「くそっ」と小さく毒づいた。
「ロキ?」
ロキが体を起こすと、フェンが青い瞳でロキの姿を見上げた。ロキはそのフェンを見つめ返す。
瞳の色、肌の質感、美しい造形の筋肉は触れると熱い。そのフェンの姿を見て自分は興奮しているのだと、ロキははっきりと自覚した。
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