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13.視線

 響いてきた低い唸り声は、聞き慣れた狼型の魔物のものとは少し違っていた。  振り返った先には緑がかった肌を持つ小鬼が数体。それぞれの手には採掘用の道具から冒険者が持つような武器まで、様々な得物を手にしていた。しかし深く刻まれたシワに埋もれた赤い目は、一様に爛々と光ってダンジョンへの侵入者を見据えている。 「ゴブリンのお出ましか。先遣部隊のようだが」  ダンジョンに潜む小鬼(ゴブリン)は洞窟や鉱山の奥に集団で出現する事が多い。  こういった類のものが出てくる時は、森や洞窟といった魔物の発生する自然地形の奥、本格的なダンジョンに足を踏み入れた時だ。 「依頼はアイツらの牙だ。一個」 「なら、大将が出る前に集めてしまおう」  組織的に動くゴブリンは数が集まると厄介だ。上手く牙を回収できるかは運次第だが、目的物は早々に回収してしまうに限る。  仲間に知らせる警戒音を上げようとした小鬼との距離を一気に詰めて蹴り飛ばし、沈黙させる。そこへ放たれたリレイの魔術が倒れ込んだ相手を引き裂いて戦闘は終了した。 「んー……あんまり牙が無い奴らだな」  事切れた小鬼の口の中をまさぐってみるが、特異的に発達しているはずの牙が小さすぎて他の歯と大して変わらなかった。あっても欠けていたりと納品出来そうなものは見当たらない。アイテムドロップ頼りの採集依頼はこういう所が厄介である。 「もう少し発達の良い個体のものが必要そうだな」  リレイの言葉に頷いて、もう少し奥へ進む事にした。  ゴブリンの集団は、人間の軍隊に近い階級社会を形成している。  見回りと索敵の先遣部隊、防衛や侵入者排除の戦闘部隊、戦闘部隊の援護をする後方部隊。それらを統率するのがひときわ大きな体と比較的高い知能を持つ大将。大きな群れでは大将を補佐する中将クラスが居る事もある。  大将はダンジョンの奥深くに留まる事が多いが、そいつが出てくると一気に攻略難易度が上がる。二人パーティのハーファ達からすれば、可能な限り遭遇を避けたい相手だ。 「思ったより大きな群れだったみたいだな」  目の前に立ち塞がるゴブリンの群れを率いる個体は、今まで遭遇したものよりも少し体格が大きい。おまけにじゃらじゃらと装飾品をつけていて、明らかに下っ端ではなさそうな雰囲気をさせている。 「大将か?」 「いや、中将……というよりは軍師のような雰囲気だな」  言われてみれば手に持っているのは武器じゃなく

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