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08. 友達とのお出かけ ③
何にしようかなーと機械の前で考え込んでいると、すぐ後ろで何やら人の気配がした。気になって振り返ると、知らない男二人がニヤニヤしてこちらを見ていた。
「ねぇ、キミひとり?」
ナンパの口説き文句そのままのセリフを口にした男は、品定めをしているのか、全身を舐め回すように見てきた。
明らかに怪しいし、表情も声も嫌悪感しかない。気持ち悪い。
眉をひそめて男を見ると、にたぁっと笑い、こちらへと一歩ずつ近づいてきた。
「えっ……」
ある程度離れていたし、相手も動かなかったから大丈夫だと思っていたのに、突然動き出したからビックリして、身体が硬直してしまった。慌てて首だけ動かして店員を探すけど、見える範囲には誰もいない。
どうしよう……。ここから逃げなきゃ……。
ぎこちないながらも身体を少しずつ動かし、じわりじわりと近付いてくる男達から距離を取ろうとした。
一気に走り出したいのに、恐怖で身体が思うように動かない。
「おっと、逃げないでくれよ。ちょっと君とお話したいだけじゃん」
逃げようとしているのがバレたのか、一人が逃げ道を塞ぐように立つと、もう一人はおれの目の前まで迫ってきて、腕を掴んできた。
「嫌、だっ……! 離せっ」
出来る限りの力で抵抗するけど、おれの腕を掴んだ手はびくともしない。
同じ男でも、オメガは一般男性よりも力が劣ってしまうことが多い。
普段はあまり意識してこなかったのに、こんなピンチになって初めて、嫌でも第二の性を意識せざるを得なかった。
肩を抱かれ腰まで手を回されると、身体がゾクッと大きく震えた。
気持ち悪い……。おれが欲しいぬくもりはこれじゃない。
どんどん気持ち悪さが増していく。身体中を駆け巡る嫌悪感と、心の中を埋め尽くすぐちゃぐちゃな感情。
おそらくおれの肩を抱く男は、アルファなんだと思う。さっきから不快な匂いが纏わりついてきている。
嫌だ、気持ち悪い。……助けて、蒼人──!
パニックになったおれの脳裏に浮かんだのは、兄弟のように育った幼馴染の姿だった。
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