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32. 両親への挨拶 ①
ある晴れた日の朝。
おれは蒼人 と一緒に自分の家に戻ってきていた。
目の前には、おれの両親と蒼人の両親。
おれは蒼人の両親の方へ身体を向けると、ペコリと頭を下げる。
「朝早くから足を運んでいただき……」
両親からは、挨拶は大切だと強く言われ育ってきた。
身内同然の蒼人の両親だからといって、おろそかにして良いことではなく、おれはちゃんと挨拶から……と思い口を開いたのに、それを紅音 さんが遮ってきた。
「麻琴 くん、おはよう。迷惑をかけてごめんなさいとか、そういうのは無しだよ?」
「え……でも」
二回も入院してしまったから、迷惑をかけてしまったことは間違いない。紅音さんには、蒼人の私物の件やこの前のレストランでの食事をしたあの日もそうだ。迷惑や心配をたくさんかけていると思う。
紅音さんは、おれの気持ちを察してくれたのか、にっこり笑って言った。
「麻琴くんは俺達にとっても家族で息子だと思っている。そんな大切な息子が大変な思いをしたんだ、心配しないわけがない。……でも、謝ってほしいんじゃないんだ。それなら、心配してくれてありがとうって言ってほしいな」
紅音さんの隣で虹汰 さんが、大きく頷いた。うちの両親もそれに続くようにニコニコしながら頷き合う。
「心配をかけちゃって、ごめんなさい。そして、ありがとうございます」
おれはそう言いながら、深々と頭を下げた。蒼人も一緒に頭を下げる。
「ハイハイ、挨拶はそこまでねー」
パンパンっと、一区切りをつけるように手を叩くと、何度か頷きながら、おれ達二人をしっかりと見つめた。
「さて……。今日は大事な話があるんだろう?」
おれは話してはいなかったけど、蒼人はご両親にそう説明してあったのだろう。
それに、紅音さんは何かと察しが良い人で、先回りして話をしてくれることが多いように思う。
かと言って、強制するとか強引に急かせるとかそういうのがあるわけではなく、ちゃんと配慮をしたうえで何かと気にかけてくれる。
母親のような存在であり、オメガの先輩でもあり、おれの尊敬する人だ。
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