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 いやいや、いやいや! 最近の俺、少し浮かれすぎじゃないかな!  翌朝。カワイに起こされるよりも先にガバリと上体を起こした俺は、すぐに天井──ゼロ太郎に視線を向けた。 「おはようゼロ太郎!」 [おはようございます、主様。本日はお早い起床ですね、素晴らしいです] 「えっ、ゼロ太郎が褒めてくれたっ。嬉しい、明日も早起き頑張るね!」 [『早起き』と呼べるほどの起床時間ではありませんが、良い心掛けだと思います]  やったぁ~っ。朝からゼロ太郎に褒められちゃったぞぉ~っ。これはとても珍しくて嬉しい出来事で──。 「──って違ぁーうッ!」 [──なんなのですか。朝から騒々しいですね]  違う! 危ない、今のは危なかったぞ! ゼロ太郎がいつも通りの辛辣モードに戻っちゃったけど、それは惜しいと思うけど! だけど今はそういう話がしたいんじゃない!  俺は頭をガシガシッと乱暴に掻いた後で再度、ゼロ太郎を見上げた。 「褒めてくれたのはありがとう! だけど今日はそういう話がしたいんじゃないんだよ!」 [つまり、私に褒められるのはどうでも良いと?] 「違うよ! すっごく嬉しかった! もう今日はこのまま一日を終えちゃいたいくらい嬉しかったよ!」 [褒めるタイミングは考えないといけないみたいですね]  いやだからそういう話がしたいんじゃなくて! 俺はベッドの上で意味の無い悶絶をしながら、ゼロ太郎に問いかけた。 「これから真面目な話をするから、ちゃんと聴いてほしい!」 [なんですかその子供じみた発言は]  しかし、聴いてくれる。普段の冷徹さで忘れられがちかもしれないけど、ゼロ太郎は優しい奴なのだ。  と言うわけで、カワイが俺を起こしに来るよりも前に話を終わらせなくては。俺はゼロ太郎を見上げたまま、会話を切り出す。 「──俺って最近、銀河一の幸せ者だと思うんだけどさ」 [──もう少しこちらの関心と興味を引けるような話題の切り出し方はなかったのですか?]  えぇ~っ? そんな駄目出しあるぅ~っ? 寝起きで冴えていない頭でもハッキリとビックリだよ!  しかしどうやら、お気に召さなかったらしい。かと言ってこの形で切り出し始めた話題なので、続けるしかない。 「カワイから尊い言葉を貰って、それよりもずっと前から態度とか言動とかを貰ってさ? 俺は【銀河一の幸せ者】って肩書きを堂々と掲げていい男だとは分かっているんだけどさ?」 [はぁ] 「カワイと両想いとか、考えるだけで翼が生えちゃいそうなくらい嬉しいことだよ? でもほら、俺の方からカワイにまだなにも言えていないって言うか、だけど俺はなにを言うべきなのか未だに悩んでいると言うかっ」 [そーですねー] 「えっ、ゼロ太郎らしからぬ気の抜けた言葉遣い。いやだから、つまり、えっとね……?」 [……] 「──ハッ! ちなみに【両想い】の部分はまだ冗談だよ! まだ!」 [──別になにも問い質していないではありませんか。必死になりすぎて怪しいです]  だっ、駄目だ! 全然ちっとも言葉がまとまらない!  そもそも俺は、なににここまでビビッているんだ? いったい俺には、なにが足りていないんだろうか? と言うか俺は、なにを探しているんだ?  カワイに好意を告げられたあの日からずっとずっと考えているのに、俺は【どうしたいのか】が分かっていない。そう気付き、だけどそれを見つける方法すら分かっていないのだ。  どうしよう。このままだと、カワイのことを傷付けて──。 [ですが正直、主様が同じところでグルグルしているのを眺め続けるのには飽きてきたところです] 「えっ、辛辣」 [──なので、サッサと覚悟を決めてください] 「──えっ?」  ……『覚悟』? ゼロ太郎は今、そう言ったのか?  いや、なにをそんな漫画のような……。……えっ?  俺に、足りなかったもの。俺がずっと、同じところをグルグルしていた理由って、なんなんだろう。考えて、ゼロ太郎の言葉を呑み込んで……。  ……さすが、ゼロ太郎だなぁ。ゼロ太郎はそれを、俺よりも早く見抜いていたんだ。  俺に足りなかったもの、それは。……それは【覚悟】だ。

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