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第2.5話 ポメ飼さん、反省中につき

 初めてのプレイからしばらく経った、ある晩のこと。  犬飼から連絡を受け、羽柴は再びその住まいを訪れた。  すでに犬飼はポメラニアンの姿になっており、リビングの床にお座りをしては、しょんぼりと項垂(うなだ)れている。 「ありゃ。蓮也、おしっこ失敗しちゃった?」  視線の先にあったのは、まごうことなき用を足した跡だった。  つい先日、滑り止めとしてペット用マットを敷いたのだが、どうやらさっそく役に立ってくれたらしい。こんなこともあろうかと、ちょうど防水加工がされているものを選んだのだ。  ……が、当の本人は相当ショックを受けているらしく、今度はバツが悪そうな顔でこちらを見上げてくる。 (か、可愛いっ!)  あまりの愛くるしさに、羽柴は胸をキュンキュンとさせた。同情しつつも、思わず変にニヤけてしまいそうになる。 「大丈夫。気にしなくていいよ? ほら、拭いちゃえばもう綺麗でしょ」  目の前で後処理してみせるも、犬飼はやはり浮かない顔だ。仕舞いには抱っこをせがんでくるものだから、余計に羽柴はたまらなくなった。  ソファーに座ると、その小さな体を膝の上に乗せて、「よしよし」と優しく撫でてやる。  ようやく安心したのか、ややあって元の姿へと戻ってくれたのだが――、 「あの、犬飼さん?」 「大の大人だというのに……」 「いやいや! 犬飼さんは犬飼さんですし、ポメちゃんはポメちゃんですからっ!」  犬飼はさぞ気にしている様子で、こちらの肩口に顔を埋めたまま。Yシャツを肩にかけてやると、それに包まりながら身を寄せてくる。 (なんにせよ、可愛い……っ!)  今の状況もどうなのかと思うが、羽柴は黙っておくことにしたのだった。

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