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海外ロケとスキャンダル(10)
三間が。好きな人が。僕の性器を口に含んでいる。
ありえない光景に頭が沸騰し、意識が遠のくようだった。
ずり上がろうとする体を、両側からがっしりと腰を抑えこまれ、動きを封じられる。
ゆっくりと頭が上下し始めたら、逃げることは到底困難だと悟った。
こんなの無理だ。気持ちよすぎて……。逃げられっこない……。
観念すると同時に、卑猥な光景をそれ以上見ていられなくなり、首をのけ反らせ、シーツを握りしめて、強すぎる快感に耐える。
熱く、濡れた口内に包まれ、唇で扱かれるのは、骨盤まで溶かされるような気持ちよさだった。根元近くまで吞み込まれると、先端が奥の狭いところで締め付けられる。苦しいだろうと思うのに、やめてほしいとは思えない。彼の頭を掴み、彼の口に向かって夢中で腰を振る自分さえ想像してしまう。
「ぁ、ぁっ、ヤぁッ、ぁ、ぁあっ、ぁんっ!」
唇が上下するのに合わせて、じゅぷ、ぬちゅ、と濡れた音が立ち、喘ぎがスタッカートを刻む。
快感に震える内腿で三間の体を挟み、熱が暴発しそうになるのを必死に堪える。
三間が唇を離し、裏筋を舐め上げた。膨らんだ亀頭の根元を、指でくにくにと擦られる。
イク寸前で放り出され、イケなかった切なさで目尻から涙がこぼれる。
「シーツを噛むかなんかして、声を我慢できるか? 諒真にはどうせバレてるだろうが、他のスタッフにまで勘付かれるのはマズい」
稲垣だけなら、事務所の後輩だし口止めできるはずだ。他のスタッフに知られたくないのは、佑美さんの耳に入るのを避けるためだと思う。
僕とこんなことをしていても彼女のことを忘れない男が憎らしかったけど、それを不満に思う立場にないことはわかっている。
僕は手探りで枕を引き寄せ、それを両手に抱き込み、顔を押し付けた。涙も隠せるから、これはこれでよかったかもしれない。
「できれば声も聞きたかったけどな」
さも残念そうに聞こえた声を、さすが人気役者だと思った。
男の喘ぎ声なんか聞きたいはずないから、リップサービスってやつだろう。
これ以上好きになりたくないのに、何でそういうこと言うんだよと恨みがましい気持ちになる。
先走りを塗り込むように、竿の根元からくびれへと優しく撫でられ、掌で亀頭を撫で回される。イカせるためではない、ゆるい愛撫に、甘苦しい熱が下腹で淀む。
気持ちよさからきゅっと上がりっぱなしの陰嚢を、両手で揉まれた。それすらも気持ちいいけど。イクためにはもっと直接的な刺激がほしい。
「前だけでイクのと後ろも弄られるの、どっちがいい?」
言葉責め、とかではなく。どうやら本気で知りたくて、訊いているらしい。
フェロモンに煽られて獣のように繋がった一度目のときとは、随分と勝手が違う。
いちいち訊かれるのは困るけど。
一度目のときより意思疎通が取れるのは、これまで築き上げた関係性によるものだと思うと、嬉しくもあった。
「前だけで……」
枕に顔を押し付け、聞こえるか聞こえないかのくぐもった声で答えた。
いま後ろを弄られたら、たぶん指一本挿れただけで出してしまいそうな気がする。
ふたたびあたたかな粘膜に性器が包まれ、身体の芯がぞくりと波打つ。
元々限界に近かったから、達するまでにほとんど時間はかからなかった。
すぼめた唇で竿を扱かれ、股間でいやらしい音が立ちはじめる。僕は喘ぎと、唾液と、官能の涙を、枕に吸い込ませた。
性器を極限まで張りつめさせていた熱が、堰を切ったように先端の小さな出口に向かって一気に遡っていく。
後ろを弄られないもどかしさが、いつも以上に性器を過敏にしている気がする。
相手が三間だから、かもしれない。
追い詰められた性器が、彼の口内でぶるりと大きく震える。
僕は慌てて、枕から口を離した。
「三間さ……、も……出る、から……」
――離して!
皆まで言うことはできず、三間も口を離さなかった。
口腔全体で、亀頭を強く吸われて――……。
僕は生まれて初めて、人の口内に、精を放った。
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