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海外ロケとスキャンダル(12)

 襞の一つ一つに舌を這わせるように、角度を変えて何度も、濡れた熱が窄まりを出入りする。そのたびに、(ふち)が収縮と弛緩を繰り返し、奥の粘膜が蠢くのがわかる。 「はは。物欲しそうに、ひくひくしてる」  見られていることにも、喜悦の混じる揶揄にも、恥ずかしいのに興奮させられる。  気持ちいいのにもどかしくて、頭がおかしくなりそうだった。   「三間さん……、はやく……、」 「(はる)な」  一度目のときのように、呼び捨てで呼んでほしいのだろうかと一瞬迷って。 「晴さんが…………、ほしい……」  「さん」付けにした。  今回は男の体をさらけ出してしまっていて、佑美さんと錯覚しようもないから。逆に彼女と同じ呼び方で呼ばれるのは嫌だろうと思って。鹿児島の旅行のときも、嫌がっていたし。  訂正されなかったから、やはりそれが正解だったようだ。  なぜ名前で呼ばれたがるのか。その理由まで考える余裕はなかった。 「膝、自分で持てるか?」  言われて、枕を胸に抱き込む形で、自身の両膝をかかえる。  オムツ交換をされる赤ん坊の体勢を自ら取るのは、平常時なら絶対に無理だろうけど。今は、「もっと」「はやく」という渇望が、羞恥心を鈍らせる。  愛液のぬめりを借りて、舌よりも細く硬いものが、するりと奥まで入って来る。  三間の指だった。  舌では届かなかった場所が埋められると、それだけで、歓喜したように中がうねり、愛液が溢れて指の付け根を濡らす。  無骨なそれはすぐに2本に増やされ、狙ったように内側の膨らみを擦り上げる。 「……んっ、……ふっ……」  ただ優しく弄ぶだけの刺激が、不思議なほどに気持ちいいという感覚に直結する。  そこを押されるたびに、深いところがずくん、ずくんと脈打ち、ふたたび性器を硬くしていく。 「なんか……前ほどキツくない気がするんだが……、今回は経験済みか?」  馴染ませるような動きでゆっくりと指を前後に動かしながら、三間がそんなことを訊ねてくる。 「ふぇっ?」  言われたことの意味が分からず、僕は首を持ち上げて、枕から目だけを覗かせた。  怒っているようにも見える顔と、視線がぶつかる。 「ここに、他の男を受け入れたことがあるのか?」  きっと一夜の相手でも、誰かのお古は嫌なのだろう。質問の理由を、そう解釈した。  指を3本に追加され、締め付けがかなりキツくなる。それでも、一度目のときのような痛みはなかった。  一度目のときより楽に受け入れられているのは、たまに道具を使っているからだ。  一度目の人生で三間に与えられた快楽が忘れられず、それ用の道具まで買って、発情期(ヒート)中の性欲処理にはそれを使うようになった。  そんな恥ずかしい事情を本人に知られるわけにいかないので。 「さっき、シャワーしたとき……、後ろも使ったから……」  そう誤魔化した。  納得したのかどうかはわからないけど。指の抜き差しが激しくなり、摩擦の濡れた音が立ち始める。

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