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第6作品「君のことをいつも見ている」
❁あらすじ
凪のことが大好き。俺のこの感情を本当にぶつけてしまってもいいのか俺は自制する。
ひょんなことから凪と温泉旅行に行くことになり凪を独り占めできると思うと俺はそれだけで嬉しかった。
なのに俺は凪の浴衣を少しずつ剥いでしまった……。
❁登場人物
・鬼灯 陽翔(ほおづきはると)
・片倉 凪(かたくらなぎ)
❁試し読み 10ページ
校舎の窓から見える景色はどんより雲が空一面覆っていた。
今日もまた雨かそう思うだけで憂鬱だった。
斜め前の席に座る俺の好きな人。
ずっと恋してる。
見てるだけなんて収まらない。
いつかは思いを伝えたいけど嫌われるのも嫌だ。
俺の感情がガタガタと揺れ出す。
鏡が割れたような感じだ。告白したい。
でも嫌われるのは嫌だ。
ああ好き。
めっちゃ好き。
好きすぎる。
「帰ろうぜ陽翔はると」
「ああ」
声をかけてきてくれたのは最近仲良くなった。
俺の大好きな相手片倉凪かたくらなぎ。
凪は俺のこと覚えていないらしいが俺は昔遊んだ子によく似ていたから覚えている。
それに一番の決め手は腕の傷だった。
「陽翔、今度家でバーベキューやるんだけどお前もくるか?」
「うん、行きたい」
こうやって誘われのも嬉しい。
だけどやはり付属がつく。
凪は他の生徒にも声をかけていたからだ。
俺と二人きりなんてことにはならない。
むしろ俺は転校生だから元々凪の友達はたくさんいる。
俺はそのうちの一人。
でもいいんだ。
凪のこと見ていられるだけで俺は幸せだから。
大好きだよ凪。
家に帰ってベッドに倒れ「凪……凪」と下半身に手をおき上下に扱う。
「はぁー好き」俺の願いなんて叶わないと分かっている。
その反動で俺は惨めにもこうしてしまう。
もし凪が女子ならどうなっていたのかな?
告白してたかもしれない。
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帰国子女の鬼灯陽翔ほおづきはるとはまじでイケメン……。
女子にも人気だし。
なにより英語上手すぎてずっと聞いてられる。
勉強できてスポーツできて天才かよって感じだけど……感じなんだけどよく視線がこちらを向いている気がする。
別に嫌とかではないけどやはり気になる。
だから最初に声をかけた時、陽翔は驚いていたが素直に受け入れてくれて友達になることができた。
人付き合いもよく人気者だ。
だけど俺にだけなぜかすごい笑顔なんだよな。
他のやつと喋ってる時は無表情に近い笑みなのに。
イケメンに好かれるのは悪い気がしなかった。
勉強も教えてもらえるしなにより帰り道隣にイケメンがいると女子の視線を感じた。
「ふふーん」
「今日はご機嫌だね」
「ああ、うん週末のバーベキューは晴れるって書いてあったからさちょっと楽しみなんだよな」
「そうだね、ずっと雨ばかりだから一日くらい晴れると嬉しいもんね」
「おう!」
高校の帰り道は陽翔と帰ることが多くなった。
それに意外と話が合う。
合わせてくれているのかは分からないが相槌と微笑みと、少しの質問と心地良いのかも知れない。
「あっここ……」
広告として電気屋のディスプレイに放送していたのは箱根の大涌谷おおわくだにだった。
「そういえば陽翔、温泉好きなの?」
「え?」
「いやなんか匂いがさ、温泉系の匂い付けてること多いなって思って」
「……あっ…よく気づいたね、そうだよ牛乳の香りなんだ、俺こういうの好きでさよく付けてるんだよね」
「へぇー……」
満面の笑顔だ。
そんなに気づいたのが嬉しかったのか……。
うきうきしていた。
ちょっと可愛いと思ってしまう。
「ねぇ、凪は温泉好き?」
「あーまぁ好きかな、極楽って感じになるし、父親と二人で行くこともあるしな~」
「そうなんだ、お父さんと仲がいいの?」
「え、まぁ普通……」
「普通ってことないよ、俺はもう父さんとはあまり出かけないし、出かけてもなにを話せばいいのかなって思っちゃうし」
「ふーん、そういうもんか」
歩き出し駅まで向かう。
少し気分が落ちてしまったのか陽翔は無言だった。
「ならさ、俺たちで温泉旅行いかね?」
「え?」陽翔は驚いた顔をしていた。
高校生の男子二人で旅行ってちょっとおかしいかな。でも友達とは普通だよな。
「行きたい」そう返ってきた。
「んじゃぁ決まりだな」にひっと笑顔を向けると陽翔の手が近かった。
そしてそれをゆっくりと戻していた。
「な、なんだよ……」
「なんでもない」嬉しそうな顔…しやがって。
「まぁ、その前にバーベキューだけどな」
そう言って週末になった。しかし晴れ予報は雨予報に変ってしまい急遽屋内で楽しんだ。
「肉うめぇー、牛に感謝」
「うん、美味しい」
イケメンが肉を頬張っている。
クラスの女子に見せてあげたら一瞬できゃーきゃーと悲鳴をあげるだろうな、なんて考えた。
「おーい、凪あっちで屋内スポーツやろうぜ!!」
「おう」友人に誘われついて行くも陽翔を忘れたことに気がつき振り返ろうとしたが友人に止められる。
「あーダメダメ鬼灯がいたらつまらんから」天才肌のあいつがいるとダメなんだと友人から教わる。
そしたら陽翔一人になるじゃん。
だけど陽翔と目が合ってしまった。
やべ、気まず……。
陽翔は手を振って口を動かしていた。
「いって…らっしゃい…」いいやつすぎて泣く。
俺は手をあげた。
母と妹と姉に捕まった陽翔は苦笑いで対応していた。
いったいなんの話をしているのか気になるが諦めよう。
屋内スポーツはサッカーとバスケとソフトボールといろいろありひとまずバスケをすることになった。
今回呼んだのは四人と俺だから五人で陽翔はいないからペアーで遊んでいた。
しかしサッカーまではよかったがソフトボールとなると辛い。
「ぜぇーぜぇーまっ無理……疲れる」
「俺も……ペアーは無理だろ、忙しすぎる……」
「なぁ鬼灯呼ぼうぜ、あいついればどうにかなるじゃん」
「んーだな」
急遽、陽翔を呼びに行った友人はなにやら説明しながら帰ってきた。
「んじゃぁ鬼灯はキャッチャー担当してくれるから俺らは打って打って打ちまくろうぜ!!」となんとも……。
でも陽翔がOKを出したのならいいのだろう。
しかし陽翔参戦後、試合の傾きはだいぶ変った。
「やっぱ、鬼灯強すぎ、なにあの足の速さ」
「俺、逃げ切れなかった、はぁ……はぁ……」
やはり陽翔はすごいようだ。
「えっと……片付け手伝ってくるね」とスマートに行ってしまった。
陽翔って楽しめているのかな。
人付き合いはよく見えるけどいつも後ろにいるんだよな、声かけられたら話しにのって、笑って。
なんかなんでも言うこと聞くやつみたいに見える。
俺は立ち上がり陽翔をおった。
水道にいた陽翔は姉さんと話をしていた。
「陽翔、俺も手伝う」
「ありがとう」
「ちょっと凪、あんた他の友達いいの?」
「いいの、てか陽翔も友達だし」
「陽翔くんは私と話してるからあんたはあっち行ってなさい」
「はぁーなにそれ、姉さん彼氏いるじゃん」
「いいのよ、イケメンとゴリラとは大差あるんだから」
「えー康司兄ちゃんかっけぇじゃん」
姉さんと康司兄ちゃんは高校生から付き合って大学も同じ場所に通っている、なんかそういうのいいなって思う。
俺もいつかは好きな子に告白して同じ大学に行きたいななんていうのが俺の野望だ。
陽翔を間に入れて俺は姉弟喧嘩をしていた。
「俺、お父さんの手伝ってくるね」
「ああ、俺も行く!!」
姉さんに任せ俺は陽翔に付いていった。
「なぁ陽翔、ごめんな、なんか雑用ばかりさせて」
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