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災い転じて ③
やばい、どうしよう。めっちゃ嬉しい。まさか推しが俺の事を見付けてくれるなんて! さっきまでのどん底まで落ちていた気持ちは、何処へやら。気が付くと俺は一ファンとしてこの幸せを嚙みしめていた。
「やばいやばい! ちょっと待って、え、どうしよ」
これは、夢? 憧れのNaoが俺の相談に乗ってくれるって!?
「ど、ど、どうしよ。ローズ! Naoが悩み聞いてくれるって!」
隣の椅子に座らせたクマが喋るはずが無い。けど、誰かに聞いて貰わないと心臓の音が五月蠅くて持ちそうにない。
『あれ? blueroseちゃん? 居ないのかな?』
動揺しすぎて反応する指が止まってしまっていた。このチャンスをモノにしない手は無いと慌ててチャットのコメント欄に打ち込み、送信する。
「あぶね。せっかくNaoが声を掛けてくれたのに他の子に譲る所だった」
Naoとこうやってやり取りできるのは、ローズを抽選で引き当てた時以来だ。
と言うか、あの時は配信の後のメールでのやり取りだけだったし、本人とやり取りできているかどうかはわからなかった。
でも今回は、配信内での直接的なやり取り。既に手汗が半端ない。
『よかった。居ないのかと思っちゃった』
Naoは俺が見ていた事に気が付くと、小さく口元を緩めた。その笑顔がまた堪らない程カッコよくて、俺の心臓はドキッと跳ねる。
あー、Naoの顔を大きな画面で見たい一心でパソコン買ったけど、買って正解だったと本気で思った。その決断をした過去の俺GJ。
それから、俺は今日あった事を包み隠さずチャットに打ち込んでいった(勿論、俺が男だと言う事は伏せているけれど)。
3カ月ほど付き合っていた恋人にフラれてしまった事。金持ちだから付き合ったと言われた事、ブランド品やプレゼントを強請られた事、その全てが俺の心に大きな傷を作った事。
これから彼女とどう接していけばいいか。思いつくままに打ち込んでいく。
途中で相槌を挟みながら、Naoは俺の拙い話を親身になって聞いてくれていた。
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