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苦手な男

太陽が眩しい。 結局昨夜は嬉しくて中々寝付けなかった。配信が終わった後も、結局過去のシチュエーションボイスを聞いたりして、気付いたら朝を迎えていた。 「ふあ、眠い」 流石に、寝不足はまずい。俺が欠伸を噛み殺しながら昇降口で靴を履き変えていると、後ろから声を掛けられた。 「環、おは……って、目の下にクマできてるぞ」 「あー、うん」 「もしかして、昨日寝れなかったのか?」 途中で合流して来たクラスメイトの篠田が目ざとくクマに気が付いて、心配そうな顔で俺の顔を覗き込んでくる。 「ちょっと、配信見てたら眠れなくなっちゃって」 「へぇ、眠れなくなるくらい面白い配信ってどんなの?」 「え? えぇっと」 まさかNaoに認知して貰って浮かれてたら朝になってたなんて、口が裂けても言えない。 「いやー、その……」 どうやって誤魔化したもんかと考えあぐねていると、突然後ろから影が差した。 「……ちょっと。邪魔」 「うおっ」 不機嫌そうな声につられて振り返ると、威圧感たっぷりに俺達を見下ろしている長身の男――露木が立っていた。 「あ……ご、ごめん」 彼のあまりの剣幕に思わず謝りの言葉が口をついて出たが、彼は「チッ」と舌打ちをするだけで謝罪に対しての返事をすることなく、冷たい眼鏡のフレームを押し上げながら俺の横を素通りして行った。 「俺、なんかした?」 「アイツはいつもあんな感じじゃん。不愛想だし、全然喋んないし。何考えてんだかさっぱりわかんねぇ」 「まぁ、それはそうだけど」 露木とは一年の時から一緒のクラスだ。でも、まともに話した事なんて殆どない。 俺は別に彼の事を嫌っているわけではないけれど、向こうは俺の事が嫌いらしく、いつもあんな感じだった。

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