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7.
安野達が行ったことに気づかず、姫宮は鬱々としていると、「お邪魔します」という声が聞こえた。
この声は。
と、振り返ると、松下と御月堂、それに男の子を連れだって入ってきた。
『突然お邪魔してしまって、申し訳ありません。うちの息子が大河様に会いたいと言うもので⋯⋯』
「ほら、挨拶」と松下の隣にいた男の子は一歩前に出た。
『とつぜんしつれいします。まつしたれいすけです。よろしくおねがいします』
愛想良く笑い、はきはきと言った『れいすけ』と名乗った男の子は、お辞儀をした。
そういえば、息子がいるとかなんとか言っていたような気がする。
『まぁ! きちんとあいさつができてえらいですね〜』
『でしょう! 私が何か教えたわけでもなくきちんと言うんですよ! 自分の子どもとは思えないできた息子で──』
永遠と語りそうな勢いで嬉々として言う松下に、「ぱぱ、いまはやめて」と息子に咎められたことにより、松下はハッとして居住まいを正した。
『大河様と同じ歳なのですよ。大河様、よろしければうちの伶介と仲良くしてやってください』
大河と同じ歳というと五歳だ。
五歳ということは幼稚園生ということなのだろう。そう、本来ならば大河も幼稚園に入れてあげたいのだが、今の大河を入れては酷だ。しかし、いつまでもほぼ家の中で主に小口としか接しないわけにはいかない。
今も、同年代の子に初めて会ったからか、遠い所にいながらも物珍しそうに、しかし、緊張しているのか小口の後ろに隠れては様子を伺っていた。
『いつもより機嫌が悪そうですねー。伶介さまがきちんとあいさつができて、皆に褒められたからですかー?』
煽るように小口がそう言うと、眉を一層寄せて、まるで威嚇するような目つきとなった。
大河もそうするように促したかもしれないが──いや、彼女の性格的に煽る方が大きいかもしれない──、逆効果だ。
伶介は何も悪くないのに。
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