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第1話
「あ、これ懐かしい」
段ボールが各部屋に積み重なっている中、自分の部屋となる場所で、何個かめの段ボールを開封してみると、中学の時のアルバムが出てきた。
「何?」
隣の部屋で同じく段ボールの開封の儀をしていた大和 が顔を覗かせる。
「あ、邪魔してごめん。これ、中学の時のアルバム出て来て懐かしいな〜って……」
手にしたアルバムを見せてみる。
「あー、俺、アルバムは持って来なかったわ。中学の時のか〜懐かしいな」
そう言いながら、俺の隣に座る。
「時間大丈夫なの?16時に買い物行くよ?」
今は14時だ。
「俺のは荷物少なくしたからもう大体終わったよ。次キッチン行こうと思ってたとこ。ちょっと休憩して行くわ」
え、早っ!アルバム見てる場合じゃないの、俺の方だった!!
焦るが、大和は俺の横にしっかり腰を下ろし休憩モードに入っているので、納める訳にもいかなくなり、アルバムのページを捲る事にした。
「皆、元気にしてるかな〜。あ、これ遠足の時のだ。葵 とは小学校から一緒だったけど、この春の遠足で班が一緒になってから話す様になったよな」
「そうそう、大和ってあまり喋らないから、ちょっと怖い雰囲気あって、絡む機会無かったし、全然話してなくて、同じ班になって話すと、何この人面白っ!!てなって、そこから凄い話す様になったよな」
「俺も、葵だけじゃなく、他の奴らにも避けられてるの気付いてたから、全然愛想良く出来なかったけど、同じ班になって一生懸命会話を繋げようとしてるの分かったから、葵には普通に接して良いのかなって……」
「会話繋げようと頑張ってる俺の努力を分かってくれたなら嬉しいよ。毎度何か外してて家に帰って反省会してたんだからな」
「そうだったのか。おかげで今の俺たちが居るんだもんな。感謝だよ」
大和はそう言って、俺の隣から俺の真後ろに周り背中からギュッと抱きしめて来た。
一回り大きい大和にそうされると、スッポリ包み込まれ安心する。
「これは修学旅行か。班は違ったけど、どこかで落ち合えないか色々考えたなぁ」
「そうそう、同じクラスだからバスは一緒だし、班が違うだけなのに、どうしても一緒に回りたいとか考えてたな……って、大和も思ってたんだ」
「思ってたよ。先に回ってた葵たちがアイス買って楽しそうに食べてるのとか見てイラッとしてた」
「気付かなかった!声掛けて合流してくれば良かったのに!俺なんか、大和に女の子が告白してる現場を目撃したりしたんだぞ!!ショックで寝る前のアイス食べれなかったんだからな!」
「あったなぁ。あれ見られてたんだ。なんかさ、初めての告白に付き合うって何かなって一瞬考えて、そしたら葵の顔が浮かんだんだよな」
「え……。じゃあ、俺たちって修学旅行から意識し始めた感じ?」
「今思うとそうなのかな」
嬉しい……。大和に女の子が告白する場面は今でも忘れられない程ショックだったけど、断った理由が俺だったなんて……。ジワっと胸が熱くなる。
次の言葉が浮かばなくて、照れ隠しにパパッとアルバムを早回しに捲ってしまう。
最後のページの卒業式の写真。
大和と俺とよく一緒に遊んだ廉 と奏多 の4人で肩を組んで笑ってた。
俺と大和は一緒の高校に。康と奏多は違う高校に行った。
受験勉強頑張ったなぁ。よく俺があの高校に受かったものだ。
「高校のアルバムは無いの?」
「あるけど、時間無くなるから、片付け終わってからにしよう」
高校に一緒に通えるのは嬉しかったけど、どうも意識してしまって、ぎこちない時が多かった。
一緒の写真がどれ位あるかな……。中学ほど一緒の写真は無い気がする。
「じゃあ、買い出しの時、新しいアルバムも買おう」
「え?」
「だって、今までの写真は友達の思い出だろ?これからは恋人の思い出作ろう。一緒に住むんだしさ」
言われて顔が熱くなった。
4月3日、同棲記念日。
高校卒業の時に、俺たちはほぼ同時に告白をした。
そして一人暮らしの予定を変更し、春休みの間で部屋探しをし、一緒に住む事にした。
親は俺たちが仲が良いの知ってたし、大和の日頃の行いかすぐに許可してくれた。(大和の方はどうだったのか今になって気になる。今度聞いてみよう)
仲良くなったのは中学校からで、6年間の友達の思い出がある。
だけどきっと、これからの思い出の方が多くなるだろう。
俺は中学のアルバムを床に置き、
「大和早速思い出写真だ」
そう言ってスマホを自撮りモードにし、大和とのツーショットを撮った。
「もう一枚」
「いいよ」
同じポーズでと撮影ボタンをすぐ押そうとすると、顎を持ち上げられキスされた。
「パシャッ!」
ぶれて良いのに、しっかり綺麗に写った画像が画面に残る。
「良い記念写真撮れた。早くアルバム買いに行こう」
大和は俺に怒られる前にサッと部屋を出ていってしまった。
ドキドキする胸を抱え、あぁ、もう好きだと写真には残せないけど、こういう思い出をこれから沢山作って行くのかなと思うと、更に顔が熱くなった。
いやいや、何考えてる。片付けをしろと自分を叱咤し、なんとか通常に戻す事が出来た。
なんとか片付けをキリの良い所まで終え、予定通り16時に俺たちは買い出しに出掛けた。
大和が分厚いアルバムを買おうとするので、止めるのが大変だったーー。
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