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21死んでも、これだけは伝えたい

「旅もなぁ、盗賊とかいなきゃ面白いんだけどな」  俺とサシュはまた街を移る旅をしていた、目的地はミルヒの街で牛乳やバターなど乳製品が多く売られているらしい、これでアキュの街からかなり遠ざかった。大凶作の影響からは逃げられたと思うのだが、今度は別の脅威が俺たちの旅を待ち構えていた。 「なぁ、サシュ。あそこのボロを着た少年、生きてるように見えるか?」 「顔色が真っ青です、目も白く濁ってますし、死んでいるのでは……って死んでる!?」 「冷静な分析ありがと、やっぱり死んでるか。ゾンビかな?」 「そんな人たちが一、二、……六人います」 「あんまり俺の剣は腐肉で汚したくないんだけどな」 「でも、やらないとこっちが食われますよ」  サシュは最初の少年が死んでると気づいた瞬間、俺にしがみついてきたがよしよし頭を撫でてやると離れた。 「ちょっと行ってくる、サシュ」 「十分に気をつけてくださいね、カイト」  どのゾンビも商隊に向かってきたので、俺は仕方がなく黒のロングソードを抜いた。そして他の商隊の護衛と一緒にゾンビを片付けることにした、火の魔法が使える者はそれを使っていた、俺はいつも通りに剣に魔力をこめてゾンビにむけて振り下ろした。俺が始末したゾンビはサイコロ状になって道に転がった、こいつらがレヴナントでなくて良かった。レヴナントは生前の記憶を持って行動するから、下手に善人だったりすると始末しにくかった。こうしてアンデットになってしまったものは火葬にするか、もしくは動けないように体をバラバラにするしかなかった。 「カイト、大丈夫ですか!?」 「大丈夫だ、ゾンビ相手にへまはしない」 「それなら、良いですが一応調べます」 「サシュはいつもそうだな」  俺が戦った時にサシュはその後に俺の体に傷がないか調べることが多かった、サシュが心配性なのだろうと俺も好きにさせておいた。さてそれからも商隊は進んだが、こちらが驚くほど今回の旅はゾンビに遭遇することが多かった。一度だけレヴナントがいて皆で警戒したが、本当に幼い十二歳くらいの灰色の髪に灰色の目をした少女だった、そのまだ幼い少女が望んだことはこうだった。 ”私は殺された、私を殺した者を止めないと恐ろしい悲劇が起こるわ”  そうレヴナントの少女は唇で声なき声を紡ぐと、俺たちには構わず別の道を歩いていった。どうやら会う人間たち全てに、優しかった少女は警告してまわっているようだった。俺はそのレヴナントの少女の言葉が引っかかったが、だからといって今どうこうできるものでもなかった。そうして俺たちはようやく旅を終えてミルヒの街に着いた、ようやくゾンビやレヴナント以外の人間を見れて俺とサシュはホッとした。商隊から護衛賃を貰って次は宿屋さがしだ、いつものように浴室のある宿屋を見つけることができた。 「さて、宿屋はとったし、まだ早いから街の見物に行こう」 「はい、カイト。それでは行きましょう」 「しかし、ゾンビの連中には参ったよな」 「あまり腐敗している方がいなくて良かったですね」 「そういえばそうだったな、ゾンビになって間もないか薬品が使われてるか、のどっちかだな」 「腐敗を止める薬品ってあるんですか? それなら食べ物に使えばいいのに」 「腐敗を止めてくれるが毒なんだよ、残念ながら食い物には使えないな」 「へぇー、そうなんですか」  街の中には乳製品を売っている店が沢山あった、中にはアイスクリームを売っている店もあって、俺はサシュとバニラのアイスクリームを買って一緒に食べた。 「冷たい!! 甘い!! 凄いです!!」 「アイスクリームとは久しぶりだ、懐かしい味だな」 「カイトの故郷はアイスクリームがやっぱりあるのですか?」 「こういう素朴なアイス以外にも、山ほどいろんなアイスがあった」 「やっ、山ほどのアイスクリーム……、素敵です」 「俺も今になって思う、もっといろいろ食べておけば良かったってな」  他にもいつも食べているのと違う白パンなどもあって、俺たちは美味しい夕食をいただけた。温かくて野菜と肉の入ったシチューと一緒に食べたが美味しかった、俺はつかの間懐かしい日本の食卓を思い出していた。その後はサシュといちゃいちゃする時間だった、俺はサシュに抱きついてキスをした。 「カイト、キスだけじゃ足りないです」 「分かってるさ、こっちも可愛がってやるよ」 「はぁ、ああっ!! そうやって手でされると気持ち良い。ああっ!! やあぁ!! 出ちゃう!?」 「サシュはホントに先っぽが弱いよなー、まぁ男なら誰だってそうだが」 「僕ばっかりされるのは嫌です、カイトにもします」 「シックスナインに持ち込むとはサシュもえっちだな、でもそこが可愛い」  それから俺たちはお互いに相手のものを刺激し合った、サシュは可愛い口と手で何度も俺をいかせてくれた。俺はふと思いついてサシュに聞いてみた。 「サシュ、素股ってしていいか?」 「それはどういうものですか、カイト」 「こうしてサシュの柔らかい太ももにはさんで、お互いのものをこすりあわせるんだ」 「あっ、あっ、カイト。これカイトに抱いて貰ってるような気がします」 「実は俺もそう思う、性交の疑似体験だな」 「やぁ、僕のものがこすれて気持ち良いし、カイトの顔が見える。あっ、あっ、これ好き」  俺がサシュに素股の説明をしてやってみたら、お互いのものがこすれあってとても気持ち良かった。俺はサシュとセックスしているような気がして興奮した、そうしていちゃいちゃしたら風呂に入って俺たちは眠ることにした。 「おやすみ、サシュ。大好きだよ」 「おやすみなさい、カイト。大好きです」  そうして俺たちは眠って、俺はいつもどおり朝はサシュのキスで起こされた。とそこまでは良かったのだが、その後朝飯を食べに宿屋の一階にある食堂におりたが皆がざわざわしていた。とりあえず俺たちは朝飯を食べて、それから皆がざわざわしている原因を見に行った。すると俺たちが入ってきた街の外壁の門が閉められていた、街の外壁には防犯上の理由で街の役人か警備隊しか入れなかった。 「サシュ、しっかり捕まっていろよ」 「はいなのです」  俺は目立たないようになるべく街の外壁の端っこに行って、そこで風の魔力で空へと舞い上がった。すると街の外はゾンビかレヴナントがウロウロしていた、とても旅人に門を開けるような状態じゃなかった。俺たちはそっと空から舞い降りて、誰にも見つからないうちに宿屋に帰った。 「どう思う、サシュ」 「絶対に自然現象じゃないですね」 「あれだけのゾンビかレヴナントがいるんじゃなぁ。ああ、厄介事の予感」 「しかも、彼らは全て元奴隷です、首輪をつけています」 「それには気がつかなかったな、そういえばサシュを攫おうとした奴らがいたよな」 「はい、あそこはカイトが潰してくれましたが、実はもっと大掛かりなものだったのかもしれません」  俺はトレンデの街にはまだ誘拐組織が残っていたことを思い出した。一つ、一つ、潰していくのが面倒だったから街を移ったわけだが、本当ならあの時潰しておいたほうが良かったのかもしれなかった。 「奴隷を狙う誘拐組織か、訳ありそうで嫌だなぁ」

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