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戻せない時間【8】
「錦君。何してるんだい」
何時までもガサガサ音を立てながら、菓子パンのビニールを破ろうと奮闘している彼を見て呆れた。
不器用にビニールを開こうとしているがフィルムは伸びきり、くしゃくしゃになっているだけだ。
「見て分からないのか」
「遊んでるようにしか見えないよ」
真剣な表情のまま海輝の目を真っ直ぐ見返してくる。
「何故開かないんだ。低密度ポリエチレンを使用しているのか?」
思わず噴出したら、彼の眉間にしわが寄る。
分かりやすい奴だ。
柔らかなスフレを潰さないように、そっと開こうとしているようだがビニールが伸びるばかりだ。
海輝が食したベーグルと違い梱包の使用素材が意外にも強度に優れているようだ。
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