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手を伸ばす【4】
利用価値を失った錦。
なら、損得勘定抜きで彼と付き合ってみるのも良いかもしれない。
もともと相性は良かったんだ。きっと良い退屈しのぎにはなる。
手を差し伸べたら彼は拒めないだろう。
あの夏の日、迎えた結末に満足がいかなかったんだろう?
だから、その続きを知りたくてこうして僕の前に立ったんだろう?
海輝は笑う。
なんてことだ。
あの時、終わったと思っていたのに。
こうして続くことをどこかで望んでいたのだろうか。
錦は見るべきでない真実を知り、彼の人生を捻じ曲げた。
それなのにそこで終わるべき物語の結末の次を彼は望んだ。
何故奪われなくてはならなかったのか。
彼自身に落ち度など何一つなかったのに。
何故踏みつけられなくてはならなかったのか。
どんな罪があったと言うのか。
彼自身分からないまま、信じていた男の手で平穏な日常が壊されたのだ。
だから僕の秘密を暴きたくて仕方が無いんだろう。
ねぇ。お前には僕に対する復讐心があっても可笑しくはないのだから。
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