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「あららー、真ったらー」
目の前の一輝は、にやけた顔で俺のことをじっと見つめていた。しょうがないな、と笑いながら、俺の手を握りながらエレベーターから降りた。
「そんなにがっついて珍しいね」
「足りないから」
「俺が?」
「う、ん……」
誰もいない廊下で、導かれるように歩きながら小さく答えた。そして俺は握られた手にそっと力を込める。
「他に、何があるのさ……」
近くで感じた熱がまだ残っている。俺の中にやけに深く刻み込まれたせいか、いつまで経っても消える気配がない。
部屋に戻ってきた途端、一輝は手を離さないまま俺ににやけた顔を向けてきた。
「じゃあ、する?」
「それは無理。絶対に死ぬ」
「ははは! 今なんて言ってないよ」
「っ……」
でもさ、と、一輝は俺を抱き寄せて耳元に顔を寄せてきた。
「俺も今すぐしたいくらいには興奮してるから」
顔に熱がどっと集まってきた俺は、笑いながら離れていく一輝を呆然と見つめることしかできなかった。
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