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偏愛《ハルカside》2

―…あれから2年経っても、俺の想いは変わらなかった JEESは瞬く間に人気が出て、インディーズNo.1に君臨。   そこらへんのメジャーのアーティストなんかよりも実力も人気もある。 新曲も10万ダウンロード達成。 ということで、JEESのメンバー含めて俺の家でお祝いという名の宅飲みが開催された。 「ハルカさん、飲んでますか?」 ざわついた中、綺麗な声に呼ばれる。 振り返ると予想してた人物が俺を見ていた。 「あ、飲んでるよ。お前は飲まねぇの?」 「飲まない飲まない。明日学校だし」 そう言って笑いながら竜が俺に酒を注ぐ。 「学校じゃなかったら飲んでんのかよ未成年」 「うん。嫌なこと忘れたいし」 『嫌なこと』ってなんだよ。 たくさんの知り合いがいる中、俺は正直言ってこの隣にいる天使にしか興味がなかった。 竜がここに来るって分かった時の俺のテンションの上がりようときたら… 多分、誰にも見せらんねぇ。 ぜってぇファン減る。 携帯番号教えてもらった時は手が汗で滲んだのを覚えてる。 電話だって竜だけ着信音を変えてるくらいだ。 竜に注がれた酒が世界で一番旨い。 「ハルカ、独りぼっちになってる」 「え…?あれ、竜は?」 気付くと隣にいたはずの竜がいなくて、うちのギターの陽がいた。 「帝真なら、携帯持って部屋を出ていった」 「へぇ」 電話、か… 久々に竜に会えたってのに、あんまり会話が出来なかった自分が嫌だ。 よく考えれば、話した内容『飲んでるか飲んでないか』ってことだけじゃねぇか。 緊張なんてガラじゃねぇけど、竜に対しては臆病な自分がいる。 まぁいいや。 そんなんいつものことだ。 会えただけで満足。 …どんだけだ、俺。 「飲も…」 宅飲みが始まって3時間が過ぎ、時間はもう夜の1時になっていた。 酔い潰れた連中は、次々にソファーや床の上で眠りについた。 俺はトイレに行き、酒臭いリビングに戻ろうとした瞬間、竜がまだいないことに気付いた。 リビングにも廊下にもいないとしたら、バルコニーか? そう思って予測した場所へ行くと、携帯を持ったまま固まっている竜が見えた。 あ、電話してたんだっけ? 「竜、寒いだろ?もう1時…」 ドアを開けて竜に声をかけると、俺がいたことに驚いたのか、竜はびっくりしていた。 「ハルカさ…」 「お前っ…なに泣いてんだよ」 竜の目からは涙が零れていた。 竜は慌てて涙を拭う。 「…もう帰らないとっ」 俺はこの場から逃げようとする竜の腕を掴んで、目を合わせて言った。 「どうした?なんかあったのか?言えよ」 「…ただの『嫌なこと』ですよ」 「『嫌なこと』ってなんだよ?」 「ハルカさんには関係ないですから」 目をそらして、俺から逃げようとする竜の発言にムカついた。 竜にじゃない。 竜に頼られない自分に。 所詮は俺はただの知り合いでしかない。 「ほっとけねぇよ。お前のこと」 「放して…ハルカさんに言っても意味ないことだから。ハルカさんには関係ない」 竜は拭い切れていない涙をためた目で俺を見る。 放っておくほうが無理じゃねぇか。 竜の言葉に更に逆上した俺は、バルコニーを出て目の前にある俺の部屋へと強引に竜を連れ込んだ。 「俺には関係ない…か」 部屋に入るなり竜をベットの上に押し倒して、馬乗りになって無理矢理キスをして。 「んっ…や…」 竜はジタバタと抵抗するが、俺の力にかなうはずもない。 「なら竜、言わなくていい。そのかわりに今だけ『嫌なこと』忘れさせてやるよ」 「やっ…!ハルカさ…んっ」 酔っていたってのもある。 ただ、俺は正気だ。 竜が好きだ。 その想いだけで今ならがむしゃらになれる気がした。

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