１ー１　転生者 　僕、ルルシア・ガーランドには、秘密がある。 　僕をたった1人で働いて育ててくれた母リリア・ガーランドが再婚したとき、僕は、まだ１２歳だった。 　この世界の１２歳といえば、もう、立派な大人だ。 　特に僕は。 　みんなには内緒にしているが、僕の精神年齢は、もう、けっこうな大人で、ヘタしたら母さんよりも年上だった。 　僕は、転生者だ。 　前世は、ただの日本人だった。 　別に社畜なわけでもなかったし、病気で苦しんできたわけでもなかった。 　僕は、普通の子供だったし、普通の家庭で育てられた普通の人だった。 　１５のとき、畜産系の高校に進んで毎日牛や鶏やらの世話をして過ごしていた。 　将来の夢は、獣医で、好みのタイプは、当時流行っていた女子グループのちょっと可愛い系のアイドルだった。 　僕が覚えているのは、それだけ。 　あとは、僕が最後に交通事故にあって死んだことかな。 　僕は、当時、可愛がっていた校舎に住み着いてた野良犬のジロをかばって車にひかれて死んだ。 　そして。 　気がついたらこの世界にいた。 　この世界の僕には、父親がいなかった。 　母さんは、1人で酒場で働いて僕を育ててくれた。 　毎日、くたくたになるまで働いてる母さんを助けるために僕は、自分にできることを探した。 　僕たちが住んでた町は、小さな辺境の町だったから、みんな、知り合いみたいなもんだった。 　僕は、たまに酒場に肉や野菜を売りにくる爺さんに働かせてもらえないか相談してみた。 　爺さんは、まだ５歳にもならない僕にそんなことを頼まれて驚いていたが、自分の農場で働かせてくれることになった。 　爺さんの農場は、町の外れにあった。 　まあ、農場とかいうのもおこがましいような小さな畑と、この世界の牛であるカーブが数匹いるだけで、僕は、そこで毎日、カーブの餌やりをすることになった。 　この世界では、牛(カーブ)には、干し草を食べさせていたが、僕は、少し工夫することにした。 　僕には、お決まりのチート能力があったんだ。 　それは、この世界に僕を連れてきた神、犬の外見をした犬神が僕にくれたものだった。 　『異世界錬金』 　それが僕に与えられた力だった。