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第26話 兄と弟12
2ー12 2人の令嬢
翌日、僕は、教室には行かなかった。
1人で図書館に行くと酪農関係の本やら農業関係の本を読み漁った。
やはり、この世界の農業やら畜産業は、前世に比べると遅れている。
僕は、牛(カーブ)の乳を加工して作ったパック詰めの牛乳やらチーズ、バター、それに生クリームなどを商人に売っていたが、それは、他の牧場とかでは考えられないことのようだった。
というか、そんな商品じたいがなかったし!
まあ、これは、僕のチート能力、『異世界錬金』があってのことだけどな。
僕は、1日1回誰かの願いを叶えるという対価を払っているわけだけど。
ふとアーキライトの顔が思い浮かんだ。
あの、美しい能面みたいな顔。
だが、僕に微笑みかける時は、すごく優しい目をしていて。
僕は、アーキライトがますますわからなくなる。
なんでアーキライトは、僕にあんな願いを?
まあ、世界が滅ぶような願いをされるよりかはましだが、毎夜毎夜、僕に添い寝して欲しいなんて。
物好きなとしかいいようがないし。
きっと、アーキライトは、僕を弟として可愛がってくれているんだろう。
僕は、ふぅっとため息をつく。
いつの間にか目の前に誰かが座っているのに気づいて僕は、悲鳴を飲み込んだ。
口許を押さえている僕を見てその男は、にやにやと笑っていた。
「俺は、クロード、クロード・ゼイファーだ。よろしくな、王太子様」
なんですと?
クロードを凝視して僕は、訊ねた。
「王太子?」
「そうだろ?」
クロードは、僕に答えた。
「この国の第1王子は、あんただろ?」
はい?
僕が?
この国の第1王子?
キョトンとしている僕にクロードは、呆れた様にため息をついた。
「いいか?」
クロードは、僕に説明してくれた。
「この国の王であるアキロス・ロドス・エウロキア様には、2人の王子がいる。だが、どちらも正妻の子ではない。アキロス王には、正妻がいない。なんでも、昔、正妻となる筈の令嬢に逃げられたんだとか」
クロードが言うには、王の正妻候補の令嬢は2人いたらしい。
1人は、アロイス・ロドス・エウロキアの母である側室アリエル。
もう1人は。
僕の母であるリリア・ガロイア・ガーラント。
「普通に考えれば公爵家令嬢のリリア様が正妻になる筈だったんだが、リリア様は、王との婚姻前に姿を消してしまった。そのため、アリエル様が王宮に入ることになったが、王は、アリエル様を妻にはしなかった」
クロードは、話した。
「それは、今でも王のお気持ちがリリア様にあるためだという噂だ」
マジですか?
というか、母さん、未婚だったんですね?
いや、もう、なにから突っ込めばいいのかわからない。
頭がパニックだ。
もう、ついていけない。
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