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第11話
飯田橋の中華料理店で、ランチタイムも過ぎた13時。店内は落ち着いた雰囲気だ。
俺は黒酢の酢豚定食、宇井は上海焼きそばを注文した。
「肉、ひと口ちょうだい」
「どうぞ。ご飯は?」
「いる」
宇井は酢豚とご飯を頬張る。
「うまっ。俺も酢豚にすればよかった」
「交換する?」
「マジで? いいの?」
「いいよ」
宇井の笑顔が可愛い。
その時、宇井のスマホが鳴った。
「姉ちゃんがまたセクハラしてくる」
そう言いながら、宇井はスマホの画面を俺に見せた。
そこには複数枚のランジェリーの写真が映っている。
女性モデルがそれを身につけているやつだ。
「宇井には白が似合うかな」
「ゴホッゴホッ。俺じゃないだろ! これ、どう見ても女もんじゃん! 姉ちゃんのだよ! 何ニヤニヤしてんだ!」
「想像しちゃった」
「変態! ドスケベ!」
宇井は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「冗談だよ」
「……姉ちゃん、どっちが男心を掴めるかって聞いてくるんだよ。俺が知るわけないだろ」
スマホを見ている宇井は、頰を膨らませ不機嫌そうにも、不機嫌を装い照れ隠しをしているようにもみえる。
「スパダリ落とすんだってさ」
「すぱだり? 何それ?」
「あ~、つまり……芳賀みたいなやつ」
「俺?」
「そう、お前だよ。で、どれがいい?」
「俺?」
「そうだよ。スパダリの好みは?」
「白かな。白が嫌いな奴なんていないと思うけど。宇井は?」
「……ピンク」
「へえ、ピンクか~」
「ニヤニヤすんな! 変態!」
宇井が好きなアイドルを思い出す。
「カノンちゃんに着せたいの? それとも、宇井が着たいの?」
「ど、どっちも違うっ!」
「え? 違うの? 好きな子を想像するだろ、普通」
「……する」
「カノンちゃんにピンクのランジェリー着せて何するの~ 宇井くんのエッチ」
「バカ!」
宇井は『バカ』を連呼する。
その時の表情が、また可愛い。
チャットの『バカ』もこんな可愛い顔で送ってきてるのか。
可愛い。
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