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24 もう引き返せない *R-18

「う、ヴぅ……っ」  腹の中をぐちぐちといじられる気味の悪い感触に、咽喉からうめき声が溢れてくる。無意識にシーツを掻き毟って這い上がろうとすると、真上から左手首を押さえつけられた。 「逃げるな」  言い聞かせるような声に、シーツに押し付けていた顔を傾けて、薄く目を開く。涙でかすかにぼやけた光景の先に、こちらを見下ろすフィルバートが見えた。  フィルバートもニアと同じく一糸纏わぬ姿をしており、窓から射し込む月明かりがその白い皮膚を発光したように輝かせていた。フィルバートの左手はニアの左手首を掴んでおり、右手はニアの下肢に伸ばされている。その右手の指がどこに入っているのかを考えた瞬間、また燃えるように身体が熱くなるのを感じた。  あまりの羞恥にまたシーツに顔をキツく押し付けると、左肩を強く掴まれた。そのまま横臥(おうが)状態になっていた身体を、ぐるりと仰向けにひっくり返される。とっさに両腕で目元を覆うと、腹に突き刺さった指が更に奥までググッと潜り込んできて息が詰まった。 「うぅ、ぅッ」 「顔を隠すな」  真上から命じる声が聞こえてくる。だが、ニアは駄々っ子のように首を左右に振った。 「いや……いや、です……」  こんな情けない顔なんか絶対に見られたくなかった。主人とはいえども、三歳も年下の男に好き勝手にされて泣きべそをかいている顔なんか、無様すぎて見せられるわけがない。  すると目元を覆った腕の下の唇に、不意に柔らかいものが重なってきた。ぺちゃりと音を立てて下唇を舐められて、隙間から温かくぬめったものが潜り込んでくる。すぐさま舌を絡め取られて、ぺちゃぺちゃと舐めしゃぶられた。ぬるぬると擦れ合う舌の感触に、腹の底からむず痒いような感覚が込み上げてくる。 「ふ、ぁ、ぁ……」  自分の唇から、柔らかな快感に浸るような声が漏れてくるのが信じられなかった。唾液をこそげ取るようにザラつく舌の腹を舐められて、敏感な舌裏や上顎まで舌先で丁寧にくすぐられる。しつこいくらい長い口付けに、段々と意識がもやがかっていく。  ニアの身体から力が抜けたのが判ったのか、内腿に手をかけられた。そのまま右足を横に大きく押し開かれて、ニアはヒクリと咽喉を引き攣らせた。こういう格好をさせられると、自分が女性のような扱いをされていることをまざまざと感じさせられて居たたまれなくなる。  腹の中に刺さっていた指が、確かめるように前後に動かされる。まるで体内を虫が這っているような感覚に、背筋がぞわぞわと震えた。  よくそんなところに指を挿れられるものだと思う。先ほど湯浴みをして半泣きになりながら何度も洗浄したが、自分だって好んで触りたい場所ではない。女性のように自然に濡れるわけでもないし、わざわざ指でほぐして面倒臭いことこの上ないだろうに。  そんな風に他人事みたいに考えないと、羞恥で頭が焼き切れそうだった。いつもは書類を軽やかにめくり、剣を固く掴むフィルバートの指が自分の中に入っているなんて信じられない。  何度か指が抜き差しされた後、もう一本指が追加される。指からぬるついた感触がするということは、おそらく潤滑用の香油を足したのだろう。香油のもったりとした甘い匂いが、鼻先まで香ってくる。増えた圧迫感に、ニアは小さく息を詰めた。 「痛くないか?」  訊ねてくる声に、ニアは一瞬声をあげて泣きそうになった。今は気遣う言葉なんかかけて欲しくなかった。もっと恨みと憎しみしか覚えないくらい、ただのモノみたいに滅茶苦茶に扱って欲しかった。 「ぃ、いから……はやく、してください……」  掠れた声で懇願すると、真上から小さな苦笑いが聞こえた。 「今挿れると、痛い思いをするのはお前だ」 「痛くても、いいですから……」  痛くてもいい。痛みを我慢することには慣れている。それよりも、とにかくこの時間が一秒でも早く終わって欲しかった。  涙声で訴えかけるニアに対して、フィルバートは一瞬黙り込んだ後、ぽつりと呟いた。 「俺は、これ以上お前にひどいことをしたくない」  嘘吐きめ。今この瞬間に、これ以上ないくらいひどいことをしているくせに。  腕の隙間からニアが睨み付けると、フィルバートは口元に曖昧な笑みを浮かべた。悲哀と諦念と愛おしさをまぜこぜにしたような、フィルバートらしくない泣き笑いじみた表情だ。  フィルバートの唇がかすかに上下する。だが、結局何も言わずにフィルバートは顔を寄せてきた。また唇を重ねられて、ゆっくりと舌を絡められる。なだめるような柔らかな口付けに、ニアは深く息を吐き出した。キスだけは泣きたくなるぐらい優しいのが余計に苦しかった。  だが、次の瞬間、腹の中に刺さったままの二本の指が前後に動き始めた。ゆっくりと馴染ませるように抜き差しされて、もどかしいような感覚に内腿が震えて、シーツの上で踵がもぞつく。 「は、ぁ、ぁ……」  眉間に皺を寄せて異物感に耐えていると、不意にフィルバートの二本の指がグッと腹側を押し上げるように抉ってきた。途端、ビリッと電流が流れるような衝撃が走って、ニアは背筋を仰け反らせた。 「っ、アぁぁッ!?」  とっさに目元を覆っていた腕を外して、目を見開いてフィルバートを見つめる。フィルバートはかすかに口角を吊り上げると、ひとりごとのように呟いた。 「ここか」  何がここなのか意味が分からない。だが、ニアが目を白黒させていると、再びフィルバートがそこをグリッと二本の指で抉ってきた。瞬間、また下腹部から脳天まで貫くような強烈な快感が走って、ニアは身体を大きく跳ねさせた。 「ぃ、ア、ぁあッ!」  自分の身体に何が起こっているのか解らない。ただ、そこを触られると眼球の奥でチカチカと火花が散って、勝手に両足が跳ねる。 「い、ぁ、いや……そこっ、イヤ……です……ッ!」  途切れ途切れの声で訴えるのに、フィルバートが体内から指を引き抜く様子はない。むしろ指先で執拗にそこをいじくってくる。脳味噌がパチパチとスパークするような快感に、逃れようと両手でシーツを掴む。だが、すぐさま逃がさないというようにもう片方の手で腰骨をキツく掴まれた。身体を強引に引き摺り下げられて、長い指を根本まで体内に咥え込まされる。その衝撃に、下腹がビクビクと狂おしく痙攣した。 「ひっ、ヴぅぅ、っ」  子供のしゃっくりみたいな声が咽喉から溢れる。眼球に滲んできた涙のせいで、目の前の光景がぼやけた。 「後ろが強すぎて辛いなら、こっちに集中していろ」  絶え絶えな息を漏らしていると、ふとフィルバートの声が聞こえた。その意味を噛み砕けていない内に、半勃ちの陰茎をそっと掴まれる。そのまま陰茎を緩やかに扱(しご)かれ始めて、ニアは声を漏らした。 「あ、ぁあ、ぁっ」  前後から逃れようのない快感に襲われて、首を左右に打ち振る。いつの間にか自分の陰茎は完全に勃ち上がって、先端の鈴口からとろとろと先走りを溢れさせていた。クッキリと浮かび上がった裏筋を扱かれる度に、粘着質な音が上がるのが恥ずかしくて堪らない。 「痛くはなさそうだな」  観察するみたいなフィルバートの声が聞こえる。確かに痛くはないが、行き過ぎた快感のせいで全身の痙攣が止まらない。前を扱かれ、後ろを指で抉られる度に、自分の身体が自分のものではないかのように滅茶苦茶に跳ねる。  陰茎への快感のおかげで力が抜けたのか、体内で抜き差しされる指の動きが徐々に滑らかになってきたのが判る。指が奥まで差し込まれる度に、ぷちゅぷちゅと間抜けな音が鳴るのが何とも滑稽だった。二本の指に添うようにして三本目が中に入ってきても、もう圧迫感はさほど感じなかった。ただ痺れるような熱さだけを感じる。 「や、だ……もっ、で……ッ」  腹の底でぐるぐると熱が回って、今にも爆発しそうだった。射精の兆しを感じて、とっさに陰茎を掴むフィルバートの手に両手を伸ばす。だが、ニアが掴むよりも早く、フィルバートの指先がグリッと鈴口を抉ってきて、伸ばした手が空(くう)を切った。 「あァァッ!」  鋭い快感に、甲高い声が漏れる。そのままヒクつく鈴口をクリクリと指先でほじられて、ニアは後頭部をシーツに押しつけて悶えた。 「ぁ、やぁ、ぁぁッ」  濡れた鈴口を指先で擦られるともう堪らなかった。我慢していた熱が、尿道を這い上がってくるのを感じる。  そうして体内の奥深くまで三本の指をねじ込まれた瞬間、一気に熱が弾けた。 「アぁあぁぁッ!!」  咽喉から嬌声が溢れるのと同時に、陰茎の先端から精液が噴き出た。勢いよく吐き出された精液が、胸元まで飛び散る。未だかつて感じたことのないぐらい深い射精感に、開いた内腿がガクガクと震えて止まらなかった。  同時に、咥え込んだ三本の指を体内がキツく締め付けるのを感じた。射精にあわせて、後孔がそこだけ別の生き物みたいにキュウキュウと収縮を繰り返す。そのせいで余計にフィルバートの指の形を生々しく感じて、頬がカッと熱くなった。  戦慄きながら射精するニアを、フィルバートはじっと見下ろしていた。食い入るような熱の篭もった眼差しに、全身が真っ赤に染まるのが判った。 「ぅぁ、ぁ……」  粗相をした子供みたいな泣き声を漏らしながら、ニアは自身の陰茎に両手を伸ばした。 「み……みないで……ください……」  惨めに哀願しながら、とぷとぷと未練がましく白濁を漏らす陰茎を両手で隠す。  直後、フィルバートの指が体内から引き抜かれた。その衝撃に、ビクッと身体が跳ねる。フィルバートがニアの胸元に飛び散った精液を指ですくい取って、扱くようにして自身の陰茎に塗りつけていく。その自慰めいた行為を見て、ニアはかすかに唇を震わせた。  そもそも一度も触れていないはずなのに、なぜフィルバートの性器が完全に勃ち上がっているのかが理解できない。十分な長さと太さのあるソレは下腹につきそうなぐらい反り返っていて、先走りを滲ませた先端は充血したように赤黒く染まっていた。涎を垂らす獣の牙を見たような恐怖が込み上げて、掠れた声が漏れる。 「む……むり……むり、です……」  弱々しく首を左右に振るニアを、フィルバートは据わった目で見つめて言った。 「俺もお前も、もう引き返せない」  引き返すつもりもない。と言わんばかりの口調だった。その確固たる声音に、ニアはくしゃくしゃに顔を歪めた。  直後、再び奪うように口付けられた。咥内に乱暴に舌がねじ込まれて、同時に内腿を痛いくらい左右に押し広げられる。ほころんだ後孔に硬いものが押し付けられる感触に息を呑んだ瞬間、体内に熱が突き刺さってきた。

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