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第五章 風邪引きとバレンタインデー③ ♡
「……いや、なんで俺が喰われてるんだよ」
「ひもひいらお?」
「しゃぶりながら喋んのやめてくんない?」
小さな口をもぐもぐさせて、歩は俺のモノを頬張っていた。ケーキよりもチョコレートよりもおいしそうに、うっとりと頬を染めて舌を這わす。柔らかな粘膜に包み込まれ、溢れる汁を優しく吸われて、腰が勝手に動いてしまう。
「なぁ、もう、出したいんだけど……」
俺がお願いすると、歩は悪戯っぽく目を細めた。舌先で鈴口をほじくりながら、「だめ」と笑う。甘い果実のような舌が、俺のペニスに吸い付いている。唾液がてらてらと妖しい光を放つ。
「無駄撃ちすんなよ。出すならこっちにしろ」
歩は大胆に脚を開き、俺の上に跨った。反り立つペニスに手を添えて、秘部へと導く。ちゅぷ、ぷちゅ、と濡れた性器が戯れて、しかしなかなか入っていかない。歩が焦らすように腰を動かすから、爆発寸前の矛先は艶めく花びらを撫でることしか許されない。
「ちょ、マジで……限界なんですけどぉ」
「相変わらずの早漏だな」
「いや結構我慢した方だよね!? 利口なワンコにご褒美くれよ」
「は、しょうがねぇな」
歩は、ゆっくりと息を吐きながら腰を落とした。
「よく、見とけ。てめェのモン、おれが全部喰ってやる」
ぬぷ、ぬぷぷ、と濡れそぼった蜜壺に呑み込まれる。やがて、歩はぺたんと尻をついた。すっかり根元まで埋まったのだ。歩は恍惚とした笑みを零し、自身の腹を摩った。
「ふ、ふふ……ここまで入ってる」
今日の歩は、大胆というか積極的というか、奔放すぎて参ってしまう。俺は堪らず歩の腰を掴んだ。下から突き上げてしまおうとしたのに、歩に手を絡め取られる。指を絡めて手を握られる。
「おれがするって、約束だったろ」
「でもよぉ」
「いいから、てめェはただ善がってりゃいいんだよ」
「別に善がらねぇよ」
「んっ、なぁ……なかで今、ピクッて、お前のが……あっ、ビクビクして……」
「いちいち言わなくていいから!」
両手を繋いでバランスを取りながら、歩は前後に腰を動かす。あまり激しい動きではないが、敏感なところが擦れて気持ちいい。
「はぁ、あっ、気持ちいい、か?」
「ん……もっと顔見せて」
緩やかに腰をグラインドさせながら、歩は俺の顔を覗き込んだ。前髪がはらりと垂れ下がり、上気して汗ばんだ額が露わになる。玉のような汗が額から鼻筋を伝い落ち、俺の口の中にぽたりと滴った。
キスの雨が降ってきた。ケーキよりもチョコレートよりも、ずっとずっと甘い。ちゅう、ちゅっ、と何度か唇を啄まれ、やがて舌が交わった。
「んぅ、ん……んん……っ」
くぐもった声を漏らしながら、まるで砂糖菓子でも味わうかのように、歩は俺の舌を吸う。舌が絡む度に、大きく腰をくねらせる。ナカが敏感に反応する。
「じゅ、ん……おまえはぜんぶ、おれの……」
俺も夢中で歩の舌を吸った。吸えば吸うほど、甘い露が溢れてくる。キスの合間を縫って、歩は途切れ途切れに訴える。
「おまえは、おれの……だからな」
「ん」
「おまえのこころも、からだも……、ぜんぶおれの……」
「うん」
「心変わり、なんて……許さねぇから」
「しねぇよ。俺はお前だけが一番好きなの」
「…………おれも」
歩は、俺の太腿辺りに手をついて上体を反らした。あられもなく股を開いて、繋がった部分を見せつけるように腰を振る。
「ちゃんと、見てろよ。おまえのここは、おれだけのもんだって」
「お前のここも、俺だけのものだろ?」
「ふっ、そりゃあ、おまえ次第だな」
「素直じゃねぇなぁ」
歩の腰付きはだんだんと大胆さを増す。腰を浮かしては沈め、上下に弾ませて打ち付ける。深いところまで届くと、歩の薄い腹が俺の形に膨らんだ。奥へ擦り付けるように、ぐりぐりと腰を捻る。
怒張した俺のモノが、潤んだ果肉に包まれる様がよく見えた。捲れ上がった花びらが吸い付いて、先端から根元までねっとりとしゃぶり尽くす。
愛液や我慢汁やローションやらの混ざり合った露が結合部に滴る。歩の内腿を濡らし、俺の下腹部を濡らす。腰を打ち付ける度に雫が跳ね、いやらしい水音を響かせる。
「はぁっ、ああっ、気持ちい、か? じゅん……」
「っ、うん、すげぇエロい」
「おれの、なかで、……っ、ぜんぶぶちまけろよ」
歩が腰を弾ませるリズムに合わせて、屹立した中心が右へ左へと揺れていた。自身の零した蜜でしとどに濡れ、触ってほしそうに揺れている。
例えば、猫が猫じゃらしに飛び付くように、魚が擬餌針に食い付くように、俺は目の前にぶら下げられた餌を放っておくことなどできなかった。物欲しげに震えるそれに、迷うことなく手を伸ばす。
「ひゃんっ」
歩は可愛い悲鳴を漏らし、一旦動きを止めた。少々不満げに俺を見つめる。
「おれがするって……」
「いいだろ、これくらい。俺もお前に触りてぇの」
「さわっ……てるだろ」
「手で触りてぇんだよ」
健気に勃ち上がった花芯を握り、上下に緩く扱いてやる。丸い先端をきつめに摘まむと、とろりと蜜を溢れさせた。歩は、やはりまだ不満そうな顔をしていたが、焦れたように緩々と腰をくねらせ始める。
「あっ、んまり……さわんな、っ」
「なんで。お前だって好きだろ、ここ。びしょびしょじゃねぇか」
「っ、きじゃ、ねぇ……」
「またまたぁ」
雄の快楽には慣れていないのか、歩は恥ずかしそうに目を伏せ、顔を背けた。それでも、雌の快楽を追うことはやめられないらしい。たん、たん、とリズムをつけて、一層激しく尻を打ち付ける。
雄の部分を刺激すると、雌の部分が敏感に反応する。歩が腰を振るのに合わせ、俺も下から突き上げながら、歩のそこを弄んだ。滴る蜜をたっぷり纏わせ、塗り込むように擦ってやる。
「やっ、んんっ、あっ、あぁっ」
口を開けば、媚びるような嬌声が漏れる。どうにか声を抑えたいらしく、歩は唇を引き締めた。その一方で、踊るように腰を弾ませ、自らの快楽を追い求める。肚の奥を捏ねるように腰を回し、ビクビクと感じ入っている。
「もうっ、いく、いくからっ」
「ん、俺も」
「手ぇ、はなせ……っ」
「なんでだよ。このままイけよ」
「やっ、いやだっ、じゅん……!」
口では嫌と言いながら、腰を振るのはやめられない。なんと卑しく、浅ましく、欲深いのだろう。いやらしくて、可愛くて、堪らない。
「もっ、やっ、いく、いっ……――ッ!!」
「っく……」
しなやかな肢体が、弓なりに大きく反り返った。熱水が勢いよく迸り、歩の綺麗な顔を汚す。凄まじい締め付けに、俺もようやく射精を迎えた。
「ひ、ぁ……んぅ……っ」
絶頂後、緊張していた体が一気に弛緩する。歩は恍惚として微笑み、ゆっくりと仰向けに倒れ込んだ。ぬるん、と入っていたモノがすっぽ抜け、奥に放った白濁の液がどろりと溢れる。
歩は大きく胸を喘がせ、だらしなく脚を開いたままぐったりと横たわる。疲れ果てて動けないといった様子だ。俺は体を起こし、歩を抱き寄せた。柔い太腿を掴んで引き寄せて、絶頂の余韻に痙攣しっぱなしのはしたない穴に、容赦なく自身をねじ込んだ。
「ひゃう!? やっ、まだ……っ!」
「イッてすぐって、気持ちいだろ?」
「やっ、だめっ、まだだめぇ……ッ!!」
呆気なく、歩は二度目の絶頂を迎える。しかも射精を伴わない絶頂だ。思いがけず深い快楽に堕ち、歩は涙を散らして身悶えた。けれど俺は止まってやらない。息つく間も与えずに、激しく腰を振りたてる。
「いっ、ああっ、いった、からぁっ」
「うん、三回目イッてもいいからな」
「きょっ、は、おれがっ、て……!」
「でも俺、気付いちゃったんだけど、責められるより責める方が好きっぽいんだよね。愛されるより愛したい的な? もちろん、一生懸命奉仕してくれる歩もかわいいんだけど、それより、お前をどろどろに愛して泣かせて、汁だくになるまでイかせまくりたいんだよね」
最奥に矛先を突き立ててガツガツ抉ると、精液だか我慢汁だか分からない露が飛び散った。指先に掬ってぺろりと舐めると、なぜかほんのり甘かった。
「焦らされた分、たっぷり愛してやるよ。一口残らず、全部丸ごと平らげてやる。お望み通り、無駄撃ちなんかしねぇで全部お前のナカにぶち撒けてやるからな」
歩は、快楽に浮かされた瞳で俺を見つめる。何か言いたげに口を開くが、零れ落ちるのは蕩けた喘ぎ声だけだ。俺に揺さぶられながら両手を伸ばし、俺の首筋に絡ませる。ゆっくりと唇が重なった。
「ぜんぶ、てめェに……くれてやる……!」
「っ……」
ケーキよりも、チョコレートよりも、どうしてこいつはこんなにも甘ったるいのだろう。どこもかしこも甘ったるい。どこを舐めても齧っても甘ったるい。もしかしたら砂糖でできているのかもしれない。舌が蕩けてしまいそう。
チョコもケーキも、俺にとっては前菜に過ぎない。歩の全てを喰らって初めて、俺の空腹は満たされる。
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