1 / 1

妄想スキル

布団がふわふわしてて心地がいい。 ずっと寝ていたい。そう思って寝返りを打つ。腕を伸ばそうとして気づく。俺、こんな服着てたっけ? え、てか、この人誰? あとめっちゃ頭痛い… 「ん…」 その人がこっちを向いた時、カーテンの隙間から覗く朝日がまるで後頭部から後光が刺しているかのような。顔をまじまじと見ると嫌でも気づく。同じバイト先で同い年の大学生、中谷朝陽だった。 中谷は顔が良くて仕事が早いしお客にも従業員にも大人気だ。 だが俺は中谷が苦手である。同い年だが完璧すぎて近寄りがたくて同じ人間か疑うほどだ。それに常に笑っているから心の奥底では何を考えている分からなくて少し怖さがあった。だから仕事以外では関わらないようにしようと思ったのに。 そして、昨日はバイト先の飲み会があって普段あまり飲まないビールを飲んで案の定潰れてしまったことを思い出した。だがしかし、その後のことが思い出せなくて詰んでいる。 しかもここは自分の家じゃないし…まさか中谷の家か? 俺は中谷を起こさないようにそろりと布団を抜けようとしたが時すでに遅し。隣で中谷が目を覚ました。 「…おはよう、身体大丈夫?」 「おはよう。うん、大丈夫!あの、中谷が介抱してくれたのか?」 「うん…小池、吐いてたから服は洗濯したよ、あと小池の家分からなかったから俺の家連れてきたって感じだけどよかった?」 「マジか…ごめん!迷惑かけて…嫌な思いさせてごめん!」 俺はとにかく謝った。中谷のことが苦手とか言ってる場合じゃないし。 「大丈夫だよ、小池腹減ってない?朝ご飯作ろうと思うんだけど食べれる?」 嫌な顔をせずにいつもの笑顔でサラリと受け止めてくれてこれはモテるのも分かる。 「あー…その、頭が痛くてさ。ちょっと食べれそうにない」 「そっか、かなり飲んでたしな…治るまで寝てて良いよ」 「いや、それは悪いからすぐ帰るよ あのさ、俺酔ってた時変なこと言ってなかった?大丈夫だった?」 中谷の反応を見るとニコッと笑った。 「大丈夫だよ、何もなかったよ」 「ほ、ほんと?よかった〜…って良くはないよな昨日、醜態晒したし」 以前友人と飲んだ時に暴れていたと言われたことがあったからそれから酒を控えていたが結局昨日飲んでしまったのだからどうしようもなくて呆れる。 「酒で失敗ってあるあるだと思うよ?俺は路上で寝てたことあるし」 「え?そうなのか?!」 完璧な中谷もそんな一面があることに驚いた。いや、気を遣っての言葉なのかな。とにかく中谷の優しさが身に沁みた。 ◇◇◇ 「…ッ!」 手の中に己の熱い欲を出した。 俺には誰にも言えない秘密がある。もう何度目になるだろうか。苦手な中谷のことを思いながら抜いてしまうこと。そして、Mなことだ。妄想上の中谷はSで焦らしまくるし、挿れてもらえない、ソロプレイの視姦、首締めでイかされる…などありとあらゆる妄想をした。そもそも俺がこんなんになってしまったのは元彼が原因だった。元彼がドSで首を絞めながら達してしまいそこから目覚めてしまったのだ。結局、浮気されて別れてしまったのだが。 「はぁ…」 介抱をされたあの日以来、内容は濃くなるし中谷と仕事の話をする時はできるだけ明後日の方向に目を向けて話したり、極力仕事以外で関わらないようにしている。身近にいる人をオカズとして見るなんてしたくないけど中谷の顔がドストライク過ぎて辛い。でも妄想なら何したって良いとさえ思えてきた。事に起こさなければ大丈夫。妄想は妄想でしかないのだから。 机に置かれた大学の課題に目を向けるとベッドから起き上がり机に向かった。 ◇◇◇ 今はバイト中。店長に荷物を倉庫に運んで欲しいと頼まれてやってきたは良いが荷物が多すぎる。これは2、3回に分けて行くしかない。 「小池」 名前を呼ばれ振り返ると出来れば関わりたくない中谷がいた。 ていうか今日も顔がいいな。ほんと顔好み。 「これ運ぶの手伝うよ」 「え、マジ!ありがとう!」 一緒にいたくはないが仕事をスムーズに終わらせるために手伝ってもらった。 「ほんと助かるよ、あの量1人で運ぶ所だったよ」 「1人はキツイよな、でも店長も鬼だな」 「そうそう!」 荷物を乗せた台車を押しながら店長への愚痴を言いながら倉庫に着いた。 荷物を全て並べて帰ろうとした時中谷に手の甲が怪我をしていることを指摘された。 「手、怪我してない?」 「あ、ほんとだ。気づかなかった」 手の甲に斜め線の擦り傷が目に映る。少し血が滲んでいた。 「手出して?」 言われるがままに手を出すと絆創膏を患部に貼ってくれた。 「ありがとう」 「いいえ」 絆創膏持ち歩いてるのか、女子力高いな。まあ怪我しやすいバイトだしな。 「…小池ってさ」 「ん?何?」 「あー、俺の気のせいかもしれないんだけど」 少し言いづらそうに手を首に当てて言い淀む。そして意を決したように俺の目を見て言う。 「俺と話す時あまり目合わないよねいや、見ないようにしてるっていうのが正解かな」 「そ、そんなわけないじゃん?」 「…もしかして飲み会のことが原因?」 「あ、いや、その…確かにその事もあって申し訳なさもあったからだと思う。でも、不快な思いをさせてたのならごめん!」 「いや、俺のほうこそごめんね。問い詰めるような言い方した。あの日、少し小池と仲良くなれたような気がしたから、勝手に俺が落ち込んだだけなんだ」 「そ、そうだったのか…」 あんなことがあったのに仲良くしたいと思ってくれていたのか。変わらず接してくれていたのに、俺は中谷が苦手だからと避けていた。 「小池、仲良くなりたいついでに言うけど今日終わったらご飯食べに行かない?」 「うん、大丈夫」 「よかった」 優しく微笑まれていつもの中谷に戻っていた。 バイトが終わって中谷とご飯を食べに行った。 食事をしている最中、互いの大学のこと地元の話いろんなことを話した。中谷のことが苦手だったのが嘘みたいだった。 「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」 「うん、俺ドリンク取ってこようと思うんだけどいる?」 「じゃあ、烏龍茶で」 「了解」 トイレに向かう途中、女性2人組とすれ違ったがテーブル席に座っているイケメンがめっちゃかっこいいと話していた。多分中谷だなと思った。見ず知らずの人でさえ虜にしてしまうなんてイケメンは得だな。 テーブルに向かっていると中谷が何やら女性に話しかけられてるみたいだ。やっぱりすごい奴だ。 「おかえり」 「ただいま、さっき女性に話しかけられてた?」 「見た?」 「偶然ね、さすが人気者は違うな」 「揶揄うなよ、そんなんじゃない」 「謙遜するなよー」 店を出てからしばらく歩いていると何故か急に睡魔に襲われて少し中谷にもたれかかってしまった。 「あ、ごめんっ…なんか急に眠くなって…」 「疲れてるんだよ、ここから俺の家近いから少し休んでいけば?」 「え、でも悪いよ…」 「いいから」 ◇◇◇ 目を覚ますとそこは一回来たことのある部屋だった。頭が覚醒しない。深く深く眠っていたせいか全然考えられない。 手を動かそうと思ったが動かない。 上を見ると縄で結ばれているし、足首には足枷が付いていた。 「なに、これ」 思わず声が漏れた。 何だこれ、こんなこと誰が。 まさか…? 突然ドアが開いてドアの先を見る。 「おはよう」 「中谷…」 中谷がベッドに座り俺に身を寄せる。 「薬少量にしたつもりだったんだけど、良く眠ってるから少し心配しちゃったよ」 「薬…?」 「そ、俺さー、小池に隠してることがあって」 「何を隠してるんだ?」 「人の思考が読めるんだよね」 「人の思考が?本当なのか?」 「うん、試しに君の考えてること当ててあげようか?…中谷のことが苦手だ、また中谷で抜いてしまったかな?」 「っ…!」 「ちょっとビックリしたんだよねー 小池そんなイメージ全然無くてあとMなことも」 全部バレていた。苦手なことも全部、全部。 恥ずかしくて死にそうなんだけど。 「真っ赤になって可愛いな…ねぇ気付いてた?」 「…何が?」 「この状況、妄想の中と一致してない?」 「!」 確かに、一度妄想したことがあった。手足を拘束され、身動きができない状態での行為。 「教えて?妄想の中の俺はどんなことしてた?」 人差し指で胸から腹にかけてツーとなぞる。 「そ、そんなこと言いたくないっ…!これ外してくれよ!」 抵抗すればするほど足枷がジャラジャラと鳴り、縄が手首に食い込んで痛む。 「あの日の朝、聞いたよね。変なこと言ってなかったかって」 あの日、介抱した次の日の朝か。 「抱いてくれって言ってたんだけど覚えてる?」 「覚えてない!いいからこれ外してくれっ…」 「素直じゃないな」 顎を手で持ち上げられ、性急に唇を塞がれた。 「っ!!…ふっ、んっっ!」 顔を背けようとしてもガッチリ掴まれているため動かせない。 予測不能な舌の動きに脳が犯される。それと同時に乳首を触られ指先で転がされた。ようやく解放されて唾液がプツリと切れる。 「…は、ぁ…」 「ふ…キスだけでこんなになるんだ」 乳首をガリッと噛まれ舌先で弄られ吸われる。 「あッッ!!…い、ゃ、やめ…ろ!!」 噛まれるたび電流が走ったかのように興奮して襲いかかる快感に歯を食いしばる。 次第に下半身が熱くなるのを察するが足を閉じられず、中谷の太ももに触れそうになる。 パッと口が離れ頭上の手の拘束を解いた。やっと手が自由になったかと思いきや中谷が口を開いた。 「1人でしてるとこ見せてよ」 「な、はぁ?何言ってんの?!」 「じゃないとドMなことバラす」 「脅しのつもりかよ…!」 「首絞めながらイっちゃう変態ってことも言っちゃおっかなー」 「…っ何で」 悔しい悔しい悔しい。なんでこんな奴に思考が分かる能力がある? 秘密を知られなきゃならない? 「ここ辛くない?」 「ぅ…んっ!」 中谷の足が触れて思わず声が漏れるとグイッとそこを押された。 「や、やめ、やめろよっ!」 「じゃあ自分でしてよ」 耳に吐息混じりの声が聞こえてゾクゾクして自分の性癖を呪った。 「んっ…」 緊張と興奮が混じって上手く手が動かない。チラリと中谷を見るとつまらなそうに冷めた目をしていた。 「どうした?手止まってるよ」 「…」 ええい!もうヤケだ!どうにでもなれ!という気持ちになっていた。 早くこの状況が終わってくれと願いながら、右手で上下に擦るとペニスが勃ってきた。カウパー液が出てきて滑りが良くなりイくまで擦る。 「視姦されて勃つなんてマジでMなんだね」 「ぅ、うるさいな…んっ」 イくまでもう少し。なんとかいけそう。 「うわぁ!」 その時、中谷が俺のを掴み根元をグッと抑えて紐で縛る。 「なっ、何だよ、これ」 「普通にイくだけじゃつまんなくない?」 俺はまたベッドに転がされた。指が後孔に当てられ指を挿れられる。 「ぁ、い、ゃあぁ」 予測不能な指の動き、自分が知らない自分を暴かれているかのような。 下半身が動きたく無くてもビクビクと痙攣して腰が浮遊する。 長い指先が快感を突き抜けた。 「アッッ!!」 そこを何度もいじられ自身も勃ち上がる。 「んっ…ぅ、あぁ!も、だめ…!!」 イクことしか考えられなくて頭がおかしくなっていた。上がる心拍数や呼吸が浅くなって絶頂が近くなっていく。 しかし中谷は手を止めることなく虐め抜いた。 何やら空いている手にはバイブらしき物が見える。何かの間違いだと思いたかった。 「じゃ、これ入れてみよっか?♡」 「…ちょ、ちょっと待っ…!!」 後ろに挿れられて中が艶かしく動きイイ所を突いた。 「あぁぁぁぁっっ!!」 電流が走ったかのような激しい刺激が襲いかかる。 「イ、イく…!もぅ、イく、ムリ!! 抜いてくれ!」 「まだ挿れたばっかだよ?我慢できるよね?」 「ゃらぁあぁ…!!ぅぅ、あぁっっ!!」 目から涙が溢れはしたなく泣き喚いた。 「あぁ、泣かないで?聖月可愛いから虐めたくなって悪気はないんだよ?」 頭をよしよしと撫でられてバイブのスイッチに手をかけるとさらに強くした。 「あぁあぁぁ…もぅ、だめぇぇぇっ!!!」 俺は絶頂してしまい、放心状態で下半身がビクビクと痙攣して何も考えられない。 「聖月かわいい…俺ので気持ちよくなろ?」 うっとりとした表情で言われてバイブを抜かれ、中谷のが入ってきた。 「アッッ、今イったばっかりっ…!!」 「ナカめっちゃ気持ちーね」 「あっあっあっ!!きもちぃぃ…♡」 熱くて熱くて溶けそうでもっと気持ちいいのが欲しくなり腰が動いてしまう。 「腰動いてる…ほんと淫乱だねぇ」 「ひ、ぁあ、ん…きもちいいの好き…」 中谷が何か笑ったような気がしたけど今はそんなことよりもっと欲しくて。 「もっと、ほしい…激しくしてっ」 「っ…この変態が」 まるで落雷が落ちたような衝撃で打ち付けられた。 「ァッッ…!〜〜〜!」 大袈裟かもしれないが息ができなくて呼吸の仕方を忘れてしまいそうな快感が体を巡る。 「は、ぁぁ…♡あぁ、!!」 奥までずっぽり入ったペニスがナカを犯して掻き乱す。何度も何度も突かれるたびに興奮する。 「あぁ…!これ、しゅきぃっっ…!あっあっ、ぃくぅいきそぅ…!!!」 「…っん!は、俺もイく…こうしてほしいんだろ」 イく直前に軽く首を絞められて息ができなくて堪らない。 「…〜〜〜〜ッッッッ♡♡♡!!!」 「〜ッッ!!」 お互い呼吸を整えて、目がバチっと合うと額に優しいキスが一つ落とされた。こんなに優しいキスは久しぶりだった。 「ねぇ、聖月の首を絞めるのは俺だけにさせて?」 「…俺も朝陽がいい」

ともだちにシェアしよう!