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第1話
『なんであの子の髪は黒いの?』
『なんであの子の羽は銀色なの?』
『なんであの子は羽があるのに飛べないの?』
『なんであの子は仮面を着けているの?』
天使たちは自分を見ながらコソコソと呟いている。
クスクスクス……おかしいの!
いつもの事だと、気にしない振りをしてノエルは天使たちの前を通り過ぎる。
そんな事、自分だって知りたい。
なぜ、皆のように美しいブロンドの髪じゃないのか。
なぜ、皆のように羽は白くないのか。
なぜ、羽があるのに飛べないのか。
なぜ、皆にはない仮面を着けられているのか。
皆と違う自分は天界でいつも孤独だった。
唯一、大天使であるミカエルだけが気にかけてくれた。『ノエル』という名前もミカエルが付けてくれたもので、ノエルはこの名前を気に入っていた。だがそれもまた、天使たちが自分を疎ましく思う一つなのだろう。幼い頃に一度、ミカエルがそんなノエルを気にかけ天使たちに、『ノエルも仲間に入れてあげて』そう声をかけたことがあった。その時だけは流石に天使たちは自分を受け入れてくれた。だが、話す事は皆と違う容姿の事ばかりだった。
なぜ髪は黒いの?
なぜ羽の色は銀色なの?
なぜ飛べないの?
なぜ仮面を着けているの?
羽を持ちながら飛べない事を言うと、たくさんの天使たちに『変なの!』『おかしいの!』そう笑われた。挙げ句仮面を外してみて、と無理矢理仮面を外されそうになった。幼いながらに惨めな気持ちになり、以来一人で過ごすようになった。仮面は大天使ミカエルの命令で絶対に外す事は許されない。
一度ミカエルに、なぜ自分は皆と違うのか、なぜ仮面を着けているのか尋ねた事もあった。
『ノエルは少しだけ他の天使と違うだけですよ。天使である事には違いないのだから、気にせず堂々としていなさい』
そんな答えになっていない言葉だった。
おそらく、他の天使たちの様に美しい容姿とは違い、仮面を外した顔はさぞひどく醜いのだろう。だから髪も黒くて羽も白くないのだと、ノエルは思った。
ひょっとしたら自分は天使ではないのではないか?
そんな思いも時折過ぎる。
父も母もわからない。なぜ皆と違う容姿の自分が天界にいるのか、何も分からないのだ。
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